ベテラン交渉人の失敗 1
「漫画喫茶で立て篭もり事件が発生。直ちに急行せよ」
空が黄昏に染まる頃の事だった。
無線を聞いて駆けつけた警察車両が、ある雑居ビルに集まる。
雑居ビルの前を警察官が包囲した。
ここは国道から横に入った雑居ビルが建ち並ぶ道。
都会でも特に人通りの特に多い。
幾つものパトランプで雑居ビルが赤く染まる。
野次馬がごった返して騒めきが雑居ビルに反響する。
野次馬を警備する警察官。
報道陣を管理する警察官。
その中を通って、私の乗る警察車両が止まった。
私は警察車両の後部座席から降りると、一人の警察官が駆け寄ってきた。
「お疲れ様です。橘(たちばな)さん」
「お疲れ様。どんな状況か説明してくれ」
「はい! こちらの雑居ビルです」
警察官は一つの雑居ビルに顔を向ける。
「こちらの七階の漫画喫茶で立て篭もり、依然こう着状態です。犯人は一人。女性店員を人質にして立て篭もっています」
「素性はわかるか?」
「はい。こちらが顔写真とプロファイルです」
警察官は橘に資料を渡す。
橘は目を通していく。
「白髪混じりの四十代か。妻子持ちで何度も漫画喫茶を利用しているところから見ると、あんまり家族が上手くいっていないかもしれないな」
「そうなんですか?」
「いや、あくまでも想像だ。二十代の女性店員を呼び出して、一室に立て篭もったのか」
「はい」
「立て篭もって何時間経つ?」
「通報が入ってから約三時間です」
「そろそろお腹も空いた頃だろう。菓子パンと水を用意してくれ」
「わかりました!」
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