初デリヘルは爆乳清楚系美少女

深谷花びら大回転

初めてのデリヘル

 高校を卒業し、社会人になってから1年と少々。今日、僕は〝女の子を呼ぶ〟。


 会社の遊び人――じゃなくて先輩からイロハは学んできた。そしてまず第一目標――〝ラブホテル〟の一室に入室はクリア。先輩の言っていた通り、誰とも鉢会わずにここまでこれた。


 できればもうちょっと部屋選びに時間を使いたかった。けど、モニターの前で悩んでいたら誰かと会ってしまうかもという不安が僕を焦らせた。結果、一番最初に目についた部屋を選んでしまった…………多分、ここより安いの残ってたと思う。


 けど良い! 今日だけはケチくさいのなし! それよりも――次のステップに移行しなくては!


 ベッドに腰を下ろし、スマホを取り出す。検索するのはもちろん、先輩からオススメされたお店だ。


 あわわ…………どの子みんな可愛い…………。


 本日出勤中リストにいる女の子は計8名。その内4人はもう時間切れ。さらにもう二人は2時間待ち…………となると、待ち時間なしの〝さき〟さんか〝ルカ〟さんか、となる。


『爆乳好き必見の清楚系美少女』…………よし、ルカさんに決めた!


 コースは60分でいいとして…………オプションはどうしようか。先輩は聖水が良いよって言ってたけど、聖水の意味がわからないし、ちょっと怖いから、とりあえずナシでいっか。初めてだし。


 そうとなれば後は電話するだけなのだが……これがまた緊張する。


 怖いイメージを持たれがちだけど、風俗って全然怖くないよって先輩は笑ってたけど、やはり怖い。電話対応の人がめちゃくちゃ態度わるかったらどうしよう……。


 ――ええい! やると決めたからにはやる! 臆するな! 僕!


 そう自分を鼓舞し、僕はお店に電話をかける。


『――お電話ありがとうございます。『夜の蝶出張所』です』


 2コールもしないうちに繋がった。通話口から聞こえてきたのが優しそうなお兄さんの声で、内心ホッとする。


「あ、あの! デリ〇ルタ〇ンを見て電話をしたんですけども! 今日はその――女の子を呼びたいんですけども!」


『ありがとうございます。誰か、気になる子はいらっしゃいますか?』


「ルカさんがッ! ルカさんが気になります! というか指名します!」


『ルカさんですね、少々お待ちください………………大丈夫ですね。今からすぐに迎えます。コースの方はどうします?』


「60分! オプションはナシでお願いします!』


『60分でオプションはナシですね。場所はどちらで?』


「○○の△△ホテルです!」


『○○の△△ホテルですね。となりますと別途、交通費として1000円かかりますが、よろしいでしょうか?』


「だ、大丈夫です!」


『かしこまりました。ホテルいつ頃着く予定でしょうか?』


「あ、もうホテルに待機してます!」


『そうでしたか。でしたらお部屋の番号を教えてもらってもよろしいですか?』


「207号室です!」


『ありがとうございます。となりますと、コース料金に指名料と交通費を合わせて24000円になりますね』


「はい! ちゃんとあります!」


『すみません、最後にお名前の方をお伺いしても?』


 きた! ここは先輩に教わった通り〝偽名〟を答えよう!


「山田です!」


『山田様ですね、本日は当店の女の子をご指名頂きありがとうございます。ホテルに到着するのがだいたい20分後になると思いますので、もう少々お待ちください』


「あ、はい! よろしくお願いします!」


『では――失礼します』


「はい! お疲れ様です!」


 お店の人との通話を終え、俺はふぅと息を吐いた。


 ……20分後……20分後に爆乳清楚系美少女がくる! 来てしまう! ああああああもう――すっごい緊張してきたああああああああッ!!!!


 先輩は嬢を待ってる間も楽しいとか言ってたけど、これのどこが楽しいっていうんだ! 緊張しかないじゃないか!


 待っている間の僕は、それはもう意味もなく動き回り続けていた。止まれない、止まったら緊張で押しつぶされてしまいそうだから。


 時折、鏡の前に立っては髪型を整えたりして、鼻毛を確認して、そしてまた意味もなく動き回る。


 ―――プルルルルルルルッ!


 そんなことを繰り返していると、突然、ベッドの近くに置いてあった電話が鳴りだした。


 ――そう、ついにきたのだ。時が。


 俺は震える手で受話器を取り、耳元にあてる。


『――フロントです。お連れ様がお見えになりましたが、部屋の鍵を開けてもよろしいでしょうか?』


「は、はい! お願いします!」


 間もなくして、ロックの開錠音が。


 先輩は言っていた。ロックが開錠されたらすぐに扉をノックする音がきこえてくるはずだ。そこでようやく女の子とご対面ってわけだが……なんだかんだ一番楽しいのはそこかもな。まぁお前にはまだわかんねーだろーけど……と。


 確かに、今の僕には楽しめる余裕なんてない。心臓が異常なまでにドクドクいってる。多分、このまま死んじゃうんじゃないかな? 僕。


 ――コンッ、コンッ。


 来た来た来た来た来た来た来たあああああああああああああああああああッ! はッはッはッはッはッはッはッはッ!


 心臓がドクドクいいすぎて逆に止まっちゃって死んじゃうんじゃないかな? 僕。


 そんなんで死ぬはずもなく、僕は強張った足を無理矢理動かして、扉の前まで行き――そして。


「――初めまして。ルカです」


 僕の目の前に黒髪ロングの爆乳清楚系美少女が姿を現した。


 か――――可愛いいいいいいいイイイイイイイイいいイイイイイイイイいいイイイイイイイイいいイイイイイイイイいいイイイイイイイイいいイイイイイイイイ!


 可愛い、いや可愛すぎる。こんな子と今からキャッキャウフフ♡する……想像するだけで……もうイキそうだ。


「あと、えと……どどどどどどどどうぞ、上がってください」


「お邪魔します」


 ほわぁん……ちゅごいいい匂いするよ~。


 これが爆乳清楚系美少女の匂いかと、内心興奮しながら、僕はルカさんをソファーに案内する。


「えっと、コースは60分ですよね?」


「は、はい!」


「じゃあ先にお金を頂いてもいいですか?」


「あ、はい!」


 僕は財布から福沢二枚と野口4枚をを取り出し、ルカさんに手渡した。


「丁度、頂きますね」


 先輩は言っていた。世の中には女の子にお金を渡す行為で萎えてしまう人間もいる……お前は違うと信じているよ、と。


 先輩、どうやら僕は大丈夫そうです。僕のアレは萎えることを知らないみたいです。


「……もしかして、こういうお店、初めてですか?」


「ひゃう」


 ルカさんはこれでもかと僕に体を密着させ、指を絡めてきた。


 爆乳が僕の右腕を飲みこもうせん勢いで主張してくる。


「は、初めてです! こういうお店も! エッチなことも!」


「ひょっとして、童貞さんですか?」


「はい! 童貞さんです!」


「そうなんですね……お兄さん、おいくつなんですか?」


「今年で20歳になりました!」


「ふぅん……じゃあ私がお姉さんなんだね」


 年下と知り、ルカさんの口調が変わる。


「それじゃあ……今日はお姉さんが教えてあげる。エッチなことを、手取り足取り……ね?」


 ルカさんに耳元でそうささやかれ、僕は興奮で死んでしまいそうになってしまう。


 が、死ぬわけもなく。


 上擦らせた声で「お――お願いします!」とルカさんに頭を下げた。


 ――――――――――――。


 そこからはもう……なにもかもが未知なる体験だった。


 濃密……その一言に尽きる。


 そして……疲れた。60分で3回もイったんだ、そりゃ疲れる。


 ルカさんは送迎の車に乗ってお店へと戻っていった。


 ラブホテルの駐車場、おんぼろマイカーの中で僕は一人、煙草を吸いながらボーっと前を見つめている。


 …………………………………………………………。


 灰皿にタバコ灰を落とし、電話をかける為にスマホを取り出す。相手は先輩だ。


『――おう、どした?』


 ガヤガヤ、いやジャラジャラ騒がしい。雀荘だろうか?


「先輩……今日、呼んでみましたよ。デリ〇ル」


『おおう! そういや今日だったっけか! んで、どうだったよ? 気持ちよかったべ?』


「ええ。それはもう……言葉に形容できないほど気持ちよかったです」


『そいつは良かった! ……にしては元気なさそうだなぁ、おい。なんかあったのか?』


「ええ。実は先輩にお聞きしたいことがあって、電話をかけたんですが……」


『なんだよ。その聞きたいことって』


 僕はハンドルに額を当て、先輩に問う。


「……この、どうしようもない〝虚しさ〟はなんですか?」





――――――――――――。

どうも、深谷花びら大回転と申します。


人生初の短編を書いてみたんですが……まぁんなこたぁどうでもいいですわ。


俺が言いたいのはたった一つ――男に二言は許されないんだから、絶対〝チェンジ〟なんかしちゃダメだぜ?


たとえ想像してた子と全然違う子がきたとしてもだ。


男の妄想力でカバーするんだ。この子は超絶美人! この子は超絶美人! そうやって現実から目を逸らし、妄想に浸れ。


気持ちよさは……かわらねんだからよ。

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