遅すぎます
アエーシュマ
戯れ合うの時間
うん…アレ?レンさま…?
申し訳ありません、私ったら寝てしまって…
はい、平気ですよ。つわりも大分落ち着いてましたし。ですが、この気怠さだけは、本当に申し訳ありません。
ふふふ・・・レンさまは本当にお優しいですね。
ですが、私の家は小さいながら、牧場をやっていました。多少ですが、結構丈夫ですよ?
あ、はい。おじい様の時代から領地はまるで持ってませんでしたが、牧場、そしてジャガイモの畑をもっていましたから 。
ええ。ですから、ここでの暮らすは苦どころか、とても居心地の良いです。あっ…!
いいえ、大丈夫です・・・今ですね、赤ちゃんがおなかを蹴っていました・・・あ!また・・・
ふふふ・・・レンさまのような元気な子ですわね、きっと。
それとも、少し暗くなったダメな母を叱ったのかな?
・・・ええ。恥ずかしながら、さっき、少し昔の夢を見ていました。
レンさまは、私の家の事、ご存じですよね?
え?家族との連絡を取り合ったのですか!?もう、なんで言わないのですか?
心配かけたくい、ですか?
・・・レンさま、ずるいです。そんな事言われたら怒れないじゃないですか。じゃあ、正直に答えて下さい。
私の家族、無事でしょうか?
そうですか・・・良かった。
はい・・・うすうすですが、ダーマット家はこのまま黙っていられるでしょうか、と、ずっと気になっていました。ですから、さっき「実家と連絡」を聞いたら、真っ先に思い浮かぶのは「男爵家に知られたらどうしよう」、って・・・
いいえ、実家の事は、心配ですが、私が心配なさったのは、男爵家がここへ攻めてくる事です。
あの家はそれなりの武力持ちでした。なんでも、祖父はかの英雄様の補佐、らしい。
・・・はい。私も、そう思います。
元々、私のような子爵家出身のオメガが男爵家の相手なんて無謀でした。ですが、あの頃、彼は 本当に優しかった。身分や性を理由で差別ような事は決してしてませんでした・・・
あ、申し訳ございません、レン様の前なのに、つい昔の事を・・・
え?もっと聞きたい?
えっと・・・
出会ったのは、彼の八歳の誕生会でした。私の家は男爵家の領地内なので、一応招待をお受けました。そこで、親しくなりました。10歳に、丁度婚約者のいない者同士と仲が良かったので、彼の両親は婚約話を持ち出しました。両親は不安がってましたけど、結局、彼の熱心な説得で折りました。
それから・・・数年前までは、本当に平和でした。
ですが、ある時期から、そう、王都へ通うようになってから、彼は変わりました。私を見る目は、その、まるで汚らわしい物を見ているようで・・・それでも、愚かな私はただ『習い事に疲れる』と自分に言い聞かせるだけで・・・今思えば、あの時私は恋に酔ってしまいました。ただただ彼を失いたくなかった。気付いたら、もう何もかも遅すぎました。
大丈夫です。確かに婚約破棄された時は辛かった。それに、まさか命を奪おうとするとは思わなかった。それでも、こうしてレン様と一緒にいられますから、そこは感謝しました。
ん?んふ・・・ふふふ・・・もう、レン様ったら・・・すぐそうやって唇を舐めるんですから。先祖様と関係なく、本当にキスがお好きですね。んん・・・ダメです・・・赤ちゃんの前ですから。うん・・・ふぅ・・・
ねえ、レン様、何かあったのですか?
ううん・・・ただ、少々苛立つに見えます・・・それに、さっき自分の事「オレ」って。レン様がそう仰っているのは興奮なさった時や、苛立った時だけですから・・・
嫌なお知らせ、ですか?
え?近々、物騒な事が起きる可能性ですか?そうですか・・・それではレン様も、王都へ出かけるのですか?違う?ですが、国王陛下が・・・もう、ダメですよ、陛下を「化け物」呼ばわりは。例えそうだとしても、他人に聞かれてはいけません!おわかりいただけたけますか?特に王都の人に聞かれたら、絶対面倒な事になっておりますから。
え?それは・・・その、王都の方は何故かこの領土を田舎とか、野蛮人が住む辺境とか、心無い事を・・・実際はそうではないとしても、あんな方達がレン様の言葉を聞いたら、きっとレン様に暴力を振るいます。それに・・・私の中ではは王都の人は悪い影響を与える印象になってしまいました。
未練、ですか?
ないですよ、全然。私にはレンさまだけですよ。この首の傷がその証じゃないですか。
例え時間を巻き戻す力があっても、私はやり直しを選ばない。
王都も、彼の事も、微塵も未練はありません。
レン様も仰ったじゃないですか、あの番の契りを結ぶ日に・・・
ふふふ・・・
ええ、その通りです。
あの日、レン・アルテミシアと出会った瞬間から、私の全てがあなたのモノです。
誰がなんと言おうとも、何をしようとも、あなたは私を手放せませんし、私も離れません。
もう、遅すぎますよ。
遅すぎます アエーシュマ @Asmodai
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