最終章 ⑴

 改札口に向かうと、


「絢、絢」


 と、手を振っている澄香さんが居た。お姉ちゃんだ。駅まで迎えに来てくれていた。あの後、入学式まで日があったけど


「私も、小学校の入学式とか初めてのことなので、忙しくなるから早い目においでよ」と、声を掛けてくれていたのだ。お姉ちゃんは前とちがって、髪の毛を思いっきり短くして、どっちかというと、ザンギリ頭をきれいに分けていた。

 家に着いて、私がおばさんに


「おじゃましまーす、お世話になります」と、言うと


「ただいま でいいのよ、あなたのおうちなんだから」と言ってくれた。


 おじさんも帰ってきて、その夜は、コースが良いと言って、みんなで近くのフレンチのお店に連れて行ってくれた。


 次の日から、お姉ちゃんは市内の色々な所に連れて行ってくれたり、お洋服なんかも買ってくれた。数日後、


「あったわよ、水島基。仲の良い大学の事務員している子に調べてもらったの。確かに、海洋学部、手続きしているって。寮に入るみたい。良かったわね」


 私、美術の先生になりたいこととか、モト君とのこととか、今までのこととか全部話していたから、調べていてくれたんだ。


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