2-⑹

 2学期が始まり、成績順の発表と席替えがあった。モト君は三番目。私は九番目に呼ばれた。皆からのおどろきの声を聞きながら、席を移動した。やったー、モト君の前の席だ。皆はもう、一緒に勉強していることは、知っているし、私はモト君とハイタッチしたい気分だったんだけど、いきなり、八番目だった、一栄チャンが゛


「すごいネ、絢チャン、すごく勉強したんでしょ」と寄ってきた。


 

宮川一栄みやがわ かずえ。同じ町内で古くからの帯屋さんの三姉妹の長女だ。やっぱり、「いとさん、なかんちゃん、こいさん」と呼ばれている。成績も悪いし、暗い感じの私だったけど、彼女だけは近所のせいかも知れないが、前からよく何かと声を掛けてくれていた。


 だけど、早瀬いづみは


「絢チヤン、水島君は教え方うまいんだね。好きな人といつも一緒で良いわね」


 と、何だか、私には半分、嫌味に聞こえた。あなたは四番でモト君の隣だし、女子の中では一番、勉強できるし、顔も可愛いし、男の子からも女の子からも人気あるんだから、私なんか気にしないでょー。みてろ、もう、射程距離なんだよ。


 でも、隣になったモト君に何かと話し掛ける。私は、面白くなかった。いづみチヤンはもてるんだから、他の子を誰でも選べるじゃあない。モト君にそんなに近づくのはやめて。モト君も、私をかまってよ、もっと・・。


 決めた、つぎの目標は[早瀬いづみ]。きっと、負かす・・。 もっと、モト君を追いかけなきゃ


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