2-⑸

 期末テストが始まった。答えがスラスラ書けた。各教科終わる度に、モト君の方を向いて、ニコッと、出来たサインを送った。うしろの方からモト君が応援してくれているかと、心強かった。でも、算数は苦手で、あんまりできなかった。前は0点に近かったけど、今回は半分以上は出来たと思う。


 テストが全部終わった時も、モト君の家までに付いて行った。夏休みは図書館で一緒に勉強しようと、言ってくれた。もちろん、良いよ、もつと近くに居られるんだから。お弁当も作って持って行ってあげよ、とワクワクしていた。


 1学期が終わって、通信簿を見せた時、お母さんは少しの間、声が出なかったみたいだった。


「絢チヤン、すごいネ、頑張ったんだネ、こんなの初めて」


 先生の言葉もめっちゃ褒めて書いてくれていた。


 この地域の夏のお祭りも、一緒に行こうと思ったんだけど、お互いのお母さんが反対したんで行けなかったんだ。でも、お祭りの日、夕方になると、お母さんが浴衣を着せてくれて、髪の毛も上げて飾りで止めてくれた


「時間が出来たら、一緒にいこう」


 でも、暗くなってきても、手を離せそうになかったので、私は


「ちょこっとだけ、独りで行ってくるネ。すぐに帰るから」


「ごめんなさいネ、すぐに終わるつもりだったのに・・・」


 わたし独りで出掛けて行った。近所だし


 盆踊りも始まっていて、行き交う人も露店の前も色んな人が居る。私は、この光景が好きだ。絵に描こうと思って、目に焼き付けるように眺めていた。


 後ろの方から、呼ぶ声がした。あの声は雅恵チャンだ。


「絢チャン、独りなの、ウチ等と一緒に行こうよ」

 小野雅恵おの まさえ。同じクラスで一番仲のいい女の子でグループも一緒。よく見ると、雅恵チャンのお姉チヤン、数人の男の人が一緒だった。みんなお姉チャンと一緒の中学生みたい。雅恵チャンの家は、駅前の喫茶店で、お母さんがひとりでやっていて、お父さんとは離婚していて居ないらしい。だから、お姉チャンと雅恵チヤンはお店を手伝うこともあるみたい。そのせいか、良くない男の子なんかのたまり場になっている。その連中らしかった。とんでもない、こんな人達とだなんて


 寄ってきて「かわいいネ、お嬢さん」「一緒に行こうよー」とか


「雅恵チャン、ごめんなさいネ、ウチはお客さんが来ているから、直ぐに帰らなきゃ」


 ぁー、怖かった。急いで家に帰って、直ぐに、忘れないうちに、あの光景を描き始めた。夏休みの宿題。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る