本町絢 外伝 絢と僕の留メ具の掛け違い・・そして

すんのはじめ

第1章 1-⑴


前書き

 初めてモト君と待ち合わせした時と同じように、柱の陰で来るのを待っていた。大学の学生会館の前、必ずこの前を通るはず。


 その時、私はあの人を意識し始めた時のことを思い返していた。


 彼はまだ私との留メ具を持っていてくれるのだろうか


- - - - - - - -

 私が 、水島基みずしまもとし君を意識しだしたのは、小学校4年生の2学期。彼とは3年生のときから同級で、なんか、席がよく隣同士になった。今も、隣の席だ。中間テストの最中だけど、1科目目に私は消しゴムが筆箱に入っていないと気づいた。きっと、昨日の夜、絵を描いていてそのまま戻さなかった。


 どうしよう・・・。間違った。消せない。指でこすってなんとかなるかな。あー、汚い、仕方ないか。指まで真っ黒になっちゃった。まぁ、いいか、どうせ点数良くないんだから・・・。


 1科目目が終わった時、


「本町、これ使えよ」


 水島君がそばに来て、消しゴムをポンと机の上に置いてくれた。それを見て私は少し戸惑っていて、なんか言おうとしていると


「早く、手を洗って来いよ」と続けて言った。


 私はなんだか、言われたままにすぐに手を洗いに行っちゃったんだ。帰ってきて、その消しゴムをよく見ると、ナイフで切った痕があった。切れ端が半分よりも大きかった。あっ、と思って水島君に


「ありがとう、でも これって」


「いいんだょ、僕はあんまり消しゴム使わないから」って言って、小さな消しゴムの片割れを持って、笑ってくれた。


 すごく、爽やかな笑顔。窓を背にしているから、よけい眩しい。この時に、私の中に、水島基がインプットされちゃったみたい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る