第55話 「不機嫌のララ」

いつの間にかミカド達の背後に現れ

仲間に入りたいと申し出る女の子。


「――黒神くろかみアンユ!?!?」


突然の事に動揺するミカド達。

なんとか呼吸を整えて戦闘態勢に入る。


「大丈夫……敵意はない……」

「こっちには敵意しかねーんだよ!!」

「ジン落ち着け、彼女の話を聞こう」


攻撃を仕掛けようとするジンをなだめるユキマサ。


「私は……ほんとはあんな事したくない……

一緒に戦って神世界壊す……」


「とか言って俺達を殺すつもりだろ……」


「それはない……あなた達は異形から生き残った

選ばれた人類……殺すなら掟を破る事になる……

破れば私が消される……それだけは嫌……」


「掟ねぇ~、確かに君は掟を守る子だし、あの時も

掟を守って一対一で戦ったし、その掟がある以上は

この子も下手げに僕達に手出しが出来ないって

わけだねぇ~いいんじゃないかな?仲間になれば

強力な戦力になる事は間違いないし、

もし裏切られた時はこの子を倒せばいいだけだよ~

身近に脅威の存在がいるだけで、なんとしても

やられないように強くならなきゃいけないしねぇ~」


ミカド達はカズイチの言葉に同意して

アンユを仲間として迎え入れる事にした。

決して今までの事を許して受け入れる訳ではなく

あくまでも妥当神々という同じ目標を達成する為に。


「それじゃ、気を取り直して風桐先輩!

お願いします!!」


風桐かざきりリョウヘイ』Vs『草鬼裏くさきりルル』


リョウヘイはルルを眺めている。

ルルはじっと眺めてくるリョウヘイに困惑して

目が泳いでいる。


「おい、この鬼は戦えるのか……?」


戦う意思が全く感じられないルルに

リョウヘイもどうしていいか分からずにいる。

ウタカタがルルの事を簡単に説明した。


「なるほどな……なら遠慮なく行かせてもらう……」

『|神格覚醒しんかくかくせい』『風ノ御体かぜのごたい疾風はやて


リョウヘイの身体は風に包まれ

目にも止まらない速さでルルに殴り掛かる。


「ギャァァァア!!!!」

「お、おい……」


リョウヘイはギリギリで寸止めしたが

風がルルを吹き飛ばしてしまう。


ルルの人格はリリに変わらなかった様だ。


「リョウヘイさん最初から寸止めするつもり

でしたね、大丈夫です!本気で拳を打って下さい!」


「って言ったって……ガキを殴れねぇよ……」


「しょ~がないなぁ~」

斬波風刃ざんぱふうじん


スズナが倒れて目を回しているルルに

風の斬撃を放つ。


風の斬撃はルルに当たる瞬間に弾けて消えた。


「ララを無理やり呼び出そうだなんて

あなた達命知らずね」


スズナの一撃でリリを呼び出せた様だ。


「はいじゃあ、リョウヘイよろしく~」

「よろしくって、ガキに変わりはねーじゃねーか……

だが、スズナの技を消し飛ばす程のガキなら

話は変わってくるがな……」


リリは一歩一歩リョウヘイに近づきながら刀を抜く。


「ララには交代させない」

「そうか……だが、怪我したくなきゃ

交代した方がいいと思うがな……」


リョウヘイは一瞬でリリの後ろに周り

肩に手を添える。


「わかったろ……お前は俺の速度に反応出来ない……

大人しくララとか言う奴と代われ……」

「……」


リリはリョウヘイとの力の差を感じて

何も言わずに一筋の汗が頬を伝う。


草ノ陣くさのじん寂吸螺薇さすらび


リリは刀を地面に刺すと太いが伸びて

リョウヘイを捕らえようと追い掛ける。


「そんなんじゃ俺は捕らんねーぞ……」


風ノ陣かぜのじん嵐凱疼拳らんがいとうげん


風を纏ったリョウヘイの拳が追ってくる太いツルを

バラバラにしてリリにあたる瞬間に拳が止まり

纏っていた風が消える。


「ダル……ララは眠いの、

無理に起こされるとキレるよ」


小さな掌で止めていたリョウヘイの拳の上に手を添え

地面に叩きつけて、手の骨を粉砕してしまう、

無理矢理呼び出されて不機嫌なララのお出ましだ。


「ッグ……痛てぇじゃねーか……」

「お前が悪い」


ララはジャンプして小さな手でリョウヘイの

前髪を掴み地面に叩きつける。


「ガハッ!!」


リョウヘイの額が割れて酷く出血して

意識が段々と薄れていく。


「弱……」


倒れるリョウヘイの頭に手を添えるララ。


「おいおいおい!!待て!!」


リョウヘイにトドメを刺そうとする

ララを止めに走るミカド達。


「よっと!!次は僕が相手するよぉ~」


スズナがララを蹴り飛ばしてセイヤがリョウヘイを

救出して直ぐにサヤが治療を始める。


「痛い……」


「僕は強いよ~」


と言いつつもその場にあぐらをかくスズナ。

ララは警戒する様子もなく容赦なく攻撃を仕掛ける。


風天ノ陣ふうてんのじん里風喚喰りっぷうかんぐい


ララがスズナとの距離がまだ空いた状態だが

上空から風が急落し地面に圧迫させる

スズナの遠距離攻撃にララは苦しそうな声を漏れる。


「ほらほら~抜け出さないと潰されちゃうよ~」


ララは負けじと風の中から何とか這い出でる。


「ハァハァ……ムカつく……」

「遠慮なくその怒りを僕にぶつけていいよぉ~

届けばの話だけどねぇ~」


ララをは駆け足でスズナに接近しようとするが。


風天ノ陣ふうてんのじん風憐篭楽ふうれんごらく


スズナの周囲を周回する風にララは呑まれ

身動きが取れずグルグル周り、風に呑まれた

石などが徐々にララにダメージを与えていく。


ララは抵抗すること無くひたすらじっとして

ダメージを受け続ける。


さすがに可哀想になったスズナは

技を解いてララを解放する。


「大丈夫~?」


スズナは駆け寄りララの体を起こす。


「待ってたよ」

「――えっ?」


ララはあえて抵抗せずにスズナから

近寄ってくるのを待っていた。


ララはスズナの腕を掴み顔面を思いっきり殴り

お返しするかの様にひたすら殴り続ける。


「やめなさい!!」

泡沫泡結うたかたあわむすび


ウタカタが止めに入るが拘束しようと

出した頑丈な泡は簡単にララに割られてしまう。


「やめたよ、あんたも死にたいの?」

「私は……貴方とは戦いません……」


力の差を把握しているウタカタは

わざわざ死にに行くような判断はしなかった。


「君の相手は僕だろ~?」

ボロボロの顔でも笑顔は崩さずララを後ろから

脇に手をかけ持ち上げる。


「やめろー離せー(棒)」

持ち上げられたララは足をバタバタさせている。


「ハッハッハー、高い高いが嬉しくて

なにも出来ないのかなぁ~」


「赤ん坊じゃないよ」

「ッガ――」


スポンッとスズナの手から脱出して

蹴り飛ばすララ。


「イライラ……イライラ……

お前ら全員ぶっ殺そ」


かなり不機嫌そうなララは気の済むまで

この場にいる人達全員痛ぶる気になった。


「そう……ならやってみて……」

「アンユお前!ララを殺す気か!」

「ミカド……安心して……殺さない……」

「そ、そうか……お前より強そうだが止められるか?

あの人の娘でさえ倒せない奴だぞ……」

「問題ない……今まで本気出して戦ってないの……

知ってるでしょ……」


確かにと頷くミカド。

一体どれほどの力を彼女は秘めているのか……。

それはララとの戦闘で見えるだろう。

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