第53話 「一年間の猶予」

この人類と神々の戦いは前哨戦の様なもので

神との圧倒的な実力差を見せつける為だけの

戦いだとか……。


この戦いで敗北しても人類側にデメリットは無い

強いて言えば力の差に絶望する程度。


本来は神宮の中庭ではなく、

神が住む各々の空間で戦いが行われる。

神々が一人でも残った時点で人類は敗北し

現神々の時代が引き続く、というのが本来の

人類と神々の戦い通称『ラグナロク』だ。


そしてこの前哨戦で敗北したミカド達は

一年間の猶予を与えられて地上に戻される。


「それじゃ!みんな頑張ってね!」

マナと共に神世界への扉は消えて行く。


ミカド達が帰還した地上改めて目にすると

絶望を加速させる。

異形に荒らされた地上では一年間生き残ることすら

不自由なく暮らして来た人類には中々の修行である。


神々は地上に異形はもう現れないから

安心しろと言っていたが今後の生活に不安しかない。


「落ち込んでいたって仕方ない!!

まずは生活の基盤を整え、しっかり鍛錬し!

しっかり休息して!一年間の猶予を一秒足りとも

無駄にしないようなはしなければ!!」


「そ、そうだお!輝氏てるしの言う通りだお!

僕達は落ち込んでる場合じゃない!強くならないと

強くなって神々を倒すんだお!!」


「輝氏……?」


セイヤとイチロの声でミカド達は立ち上がり

気を持ち直し、それぞれせっせと生活の基盤を

整えて行く。


何とか無事に残っていた火花衣病院を拠点に

荒れた庭を整え自給自足出来る環境を整えた。

缶詰等の保存食もあるがやはり普通に美味しい

ご飯が力の源になると種から植物を育てたり

田舎の方に遠出して動物を狩って肉を手に入れた。


鍛錬にやっと集中できる環境になるまでに

二ヶ月程が経ってしまったが、いよいよ鍛錬を

本格的に開始する。


異形が居なくなった今、戦って鍛えるとなると

仲間達と戦うしかなく、ミカド達は日替わりで

二人一組になりお互い全力でぶつかり合う。


クニトモだけは一人、火花衣病院の屋上で

座禅を組んで闇のエネルギーを放出し続けている。


ペアを組んで鍛錬している者達は

拠点に被害が出ないようにそれぞれ

散り散りになって鍛錬している。


――ジンとバクマルペア


「オラァ!!ブッ飛べ!!」


ジンがバクマルを投げ飛ばし、

バクマルは建物を倒壊させながら吹き飛ぶ。


「いってぇぇぇえ!!!!妖気活性!!!!

上がれ上がれ俺の妖力!!!!」


バクマルは鍛えられた肉体と爆発という

派手な力を持ちながらも、妖力が貧弱で

見掛け倒しな自分自身に腹立てている。


斬雷斬ざんらいざん』!!


ジンの雷刀がバクマルの首元に迫りバクマルは咄嗟に

腕でガードして雷刀が浅く刃が入った所でジンは

刀を止めて腕から刀を離す。


しかし、残雷斬の効果でバクマルの腕には

一定の間は雷が残って麻痺させる。


「このまま斬ってたらお前の首ごといってたぞ」

「イテテテ……まさかお前とこんなに差が

開いちまうとは……参ったぜ……」

「諦めんなって、お前は晩成型ならだけだろ」

「だといいが……」


――ミカドとレイペア


雪ノ舞ゆきのまい裂荒傷雪れっこうしょうせつ』!!


「うおぉぉぉお!!!!くらってたまるかッ!!」

「速いわね!」


レイの技の範囲から何とか逃げ切るミカド。

ドーム状に吹雪く技の範囲に入れば

全身ズタボロになってしまう恐ろしい技を

平気で味方に放つレイ。


「その技どこまで持ちますかねー!!??」

「教えないわ、技を解く瞬間に攻撃してくるのは

目に見えているもの」


レイの裂荒傷雪は威力も中々のもので

範囲内に入ってくる技も大体は無効化でき、

その中心にいる自身は安全。

しかし、中からの視界も悪く敵の動きが

確認出来ない故に技を解くタイミングが難しい。


「えっ――、ズルわ……」

「でも神々はもっと強いですよ」


ミカドは魔人化して強化された状態で

裂荒傷雪の中に突っ込み殆どダメージなく

レイ元にたどり着き動きを封じた。


魔人化でも正気を保てる様にはなったが

完全に力を掌握した訳では無いので

長時間の魔人化は出来ないがここぞと言う時に

有効活用する事を覚えたミカド。


「もう一戦お願い」

「もちろんです!」


――ユキマサとルルペア


「ルルじゃ無理だよぉ……相手にならないよ……」

「安心しなさい、本気で斬りかかったりしないよ、

私も今日はルルの力が開花するように手を貸す

つもりで来たからね」

「ほんと……?ルル強くなれる……?」

「ルルが強くなりたいと思えば強くなれるさ!」

「うん!頑張る!」


ユキマサはまずはお手本をと思い

燃え盛る炎刀を抜く。


「ひやぁぁぁ!!」

「す、すまん!!いきなりでびっくりしたな!?」

「…………」

「ん?ルル……?大丈夫か?」


ルルは俯き明らかに雰囲気が変わり始める。


「ルルを虐めるな」

ルルはリリに人格交代していた。


「虐めてない!!虐めてないぞ!!」


リリは容赦なくユキマサに刀を振るう

ユキマサは何とか躱し続けて取り押さえる

タイミングを狙うがすばしっこく中々捕えられない。


草ノ陣くさのじん草乱護衝そうらんごしょう


ユキマサは至近距離で刀から舞い出る

無数の葉の斬撃を受けてしまう。


「これがルルの中に眠る人格の力……

少しばかり本気で挑んだ方が良さそうだ」


炎斬えんきり』!!


膝を着いた状態から目の前にいるリリを

炎刀で斬り上げる。


「遅いッ!」

草ノ陣くさのじん果穣草擦かじょうそうさつ


ユキマサの一撃をヒラリと躱して技を仕掛ける。

果穣草擦は刀を地面に突き刺し対象の身体を

地面から伸びるツルや草が縛り付け力を吸収し、

そのエネルギーで実って最後に身体を擦る様に

一気に地面に戻る。


力を吸い取られ最後には鋭利葉に身体を

ズタボロにさせる凶悪な技だ。


果穣草擦を受けたユキマサは何とか

動ける位の力が残ったが、これ以上はマズいと

やむを得ずに狂鬼化してしまう。


流石のリリも苦戦し段々と狂鬼化した

ユキマサに圧倒されてしまう。


「血だァ……血をよこせぇぇぇえ!!!!」

「クッ……ごめんねルル……」


トドメを刺そうとするユキマサは何故か仰向けに

倒れて、胸の上に見知らぬ子が乗っていた。


「ウ……ウガァァァア!!!!」

「ハイハイよしよし」


女の子の手はユキマサの頭に伸びて

頭を撫でるのかと思いきや恐ろしいパワーで

地面の中に沈み込むユキマサ。


「くたばれ雑魚」


ユキマサを雑魚呼ばわりする程の力を持った

女の子はユキマサを引きずり出して

ひたすら殴打し続ける。


――火花衣病院――


日は暮れ全員鍛錬を終えて夕食の時間に

しようと準備を進めているが一向に

ユキマサとルルが帰ってこずに皆心配していた。


そんな時遠くからヨレヨレの声が

微かに聞こえて来る。


「み~んな~逃げ~ろ~」

「待てー待てー(棒)」


ユキマサがボロボロの濡れ雑巾の様になりながら

おぼつかない走りで戻って来た。

後ろにはユキマサをボコボコにした女の子が

ちょこちょこユキマサを足蹴にしながら

のんびり追い掛けている。


そして仲間の元にたどり着く寸前に

二人はコテッと倒れる。


ミカド達が近づくとユキマサとルルが倒れていた。

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