第12話 「イチロ覚醒!!」

神黒鳥からすの隠れ家に辿り着きゆっくり休息を取るが

危険な男、氷洞ひょうどうユアサと雪ヶ原ゆきがはらレイの

トラブルで五黒一家と夜勝刃家の因縁が発覚。


本気でレイを殺そうとしたユアサに

完全にビビるユウタ達。

一家のリーダー、五黒いぐろマサがユアサに

襲わせない事を約束して一難去る。


イチロがおもむろにトイレに立つと

廊下の奥からセイヤとレイの声が聞こえ覗いてしまう。

セイヤとレイが付き合っている事を知ってしまった

イチロは、感情の暴走により鬼化してしまった。



「ハッハッハ!どうしたイチロ急に

鬼化なんかしち待ってよぉ~

ここでそんな鬼化する様な事起きるかぁ~?」

「はぁ~い、酔っ払いオヤジはもう寝ましょ~ね~」

「おい!離せ結埜!!俺はまだ飲み足りねぇ~!!」


空気の読めないバジオは結埜に引きずられて行く。


「何があったイチロ?」

マサはこの隠れ家内で何が起きたか

把握するべくイチロに質問する。


「何でもないお……ちょっと嫌な事を

思い出しただけだお……」

「そうか……思い出しただけで鬼化か……

それは災難だったな……」

「というか……鬼化ってなんだお……」


「あぁ、鬼化って言うのは簡単に言えば

人がどうしようも無い程の感情の暴走で鬼という

人間とは異なる力を持った種族に

変わってしまう事を鬼化という……らしい」


「異なる力……?力ってなんだお!?!?」

急にテンションを上げて目を輝かせるイチロ。


「詳しくは知らない、政府の人間が知っている様だが

隠し持っていてな、だが大陸防衛軍の中に鬼が

いたのは確かだ……やつは高みの見物ばかりで

戦闘からの情報も得られていない」


「なんだお~……ムッ!フレイム!!」

イチロは魔法が出ないかと手をかざす。


「試すなら異形でだ、ここを壊されたら

一溜りもない……」

「分かったお!早速行ってくるお!」

「今日はゆっくり休め、明日は大仕事なんだ」


「大仕事って?」

イチカは首を傾げる。


「お前達にご馳走を振舞っちまったからな!

ここの備蓄はスッカラカンさ!ワッハッハッハ!!」

腕を振るいに振るったタカオミは満足気に高笑い。


「と言うわけだ、明日に備えて

ゆっくりと休息を取ってくれ」


ユウタ達はマサの言葉に甘え、これまでの

体力を回復取り戻すかのように爆睡した。


――翌朝――


大規模な食料調達の為に全員で異形が

静止している間を狙って動き出す。


「よし、異形は静止しているな」

「マサさん、昨日の感じから見て猶予は三時間……

まだ、行動が読めない異形です、念の為に俺達は

一時間で切り上げてもいいですか」

「そうしてくれ、いざとなれば俺達が

全力で守ってやるさ」

五黒一家の面々が笑顔で武器を構える。ユアサ以外。


隠れ家から遠くないコンビニやスーパーで

食料確保を進めた。


「イチカ……」

「なに?」

「ここぞとばかりにカムフルバーを集めるのは良いが、ちゃんと栄養になる物も探してくれ……」


「えぇ~?ユウタ知らないの~?カムフルバーは栄養満点なんだよ!フルーツも取れるしチョコの糖分補給もできるし!それに見てよこれ!最近あんまり売ってなかったカムフルジュエルバーもあるよ!透明な固めのゼリーで歯ごたえ最高!中のキレイなフルーツゼリーも甘酸っぱくて最高!アクセントに散りばめられたラムネも最高!季節によって模様も変わるんだよ!」


「分かった!分かった!お前のカムフルバーへの

愛情はよく分かった!カムフルバー担当でいいから

どんどん集めて!」

「はーい!」


イチカはルンルンでカムフルバーを回収する!


「そうだ!ユウタこれ持ってて!」

「あのなぁ~俺は真面目に食料集めてて手一杯なの、

自分で確保した物は自分で持て」

「じゃあ、ここ置いとくから見張ってて!」

イチカは走って何処かに行く。


「誰も取るやつなんかいねーよ」

ゴソゴソ……。

「ん?イチカ!!」


――


「ヘアスプレー♪ヘアスプレー♪あったあった!」


ドス……ドス……


「えっ……?」


ガシャァァン!!!


「ユウタ!!」

「大丈夫か!!逃げるぞ!!」

槍爪の異形の突きを間一髪で

ユウタがイチカを突き飛ばして助かった。


「おいっ!全員隠れ家に退避だ!!

異形が動き出した!!」

「タカオミさん!」


「キタキタキターーー!!僕の出番だおーーー!!」

スーパー内にイチロの叫びが響き渡る。


「イチロ君今はマサの言う通り隠れ家に戻りましょ!

あなたは力持ちだからしっかり隠れ家まで食料を運んで!」

「結埜氏……お任せあれなんだお!!」


ウズウズする気持ちを抑えて運搬係に徹するイチロ。

五黒一家が異形を退け、ユウタ達は食料を運ぶ

無事に隠れ家にたどり着くが……。


「やったわね……」

ものすごくお怒りのご様子の結埜。


「悪い……滅多に隠れ家来ないもんだから――」

「ったく、しょ~がね~なぁ~うちのリーダーは~」


隠れ家の扉を閉め忘れ、

中には異形が入り込んでしまっていた。

我が物顔でうじゃうじゃしているヒル型の異形。


「とりあえずこいつらはここに閉じ込めとくか……」

マサは異形の住処となってしまった隠れ家の扉を閉じる。


「で、どうすんだ……」

マサにナイフを突き立てるユアサ。


「お前は一々ナイフを突き立てるな、そうだなぁ……

少し遠いが隣の八蘇木町やそぎまちを抜けて、紫九雷町しくらちょうまで

行けば別チームの隠れ家はあるが……」

「あるが?」


「俺は行かねー……」

ユアサがかいや、五黒一家が紫九雷町に行きたくない

理由は単純で夜勝刃家の屋敷があるからだった。


「今はそんな事を言っている場合では無いわ、

神黒鳥と夜勝刃家の因縁は分かってます……でも、

こんな時なら共闘できる筈です!」


レイの言う通りこの状況下でわざわざ

夜勝刃家と衝突する理由は無いと判断し

食料を最低限持って紫九雷町に向かう準備をする。


「なんかいつも食料調達すると、こうなるよな……」

「ホントだよぉ~頑張ってカムフルバーこんなに

集めたのにぃ~あまりにも酷だよぉぉぉお!!」

「お菓子位でそんな泣くなよ……俺も持ってるだけ

持ってやるから……」

「うわぁーーーん!ユウタァァア!!」


「――羨ましい限りだお……」

ユウタとイチカのイチャつきに虚しくなるイチロ。


「よっと!あそれ!ほいほいほい!当たらないね~

残念だね~――おや?生存者はっけ~ん」


「なんだ……あいつ……異形共の攻撃を余裕で

交わしてるぞ……」


突如現れた青年は『陽山カズイチ』という名前で

近くの大きな病院の地下で他の生存者と立て篭もって

いるらしく、ユウタ達と同じく食料調達をした帰り道

だったらしい。異形の攻撃を余裕で躱しているのは

神からの授かり物の目のおかげで任意のタイミングで

数秒先の起きる事を見る事ができるのだとか。


ユウタ達は紫九雷町に行く前に

病院に立て篭もる生存者達と合流する為に

カズイチの案内で八珠枷町の火花衣病院に向かう。

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