第12話 「イチロ覚醒!!」
危険な男、
トラブルで五黒一家と夜勝刃家の因縁が発覚。
本気でレイを殺そうとしたユアサに
完全にビビるユウタ達。
一家のリーダー、
襲わせない事を約束して一難去る。
イチロがおもむろにトイレに立つと
廊下の奥からセイヤとレイの声が聞こえ覗いてしまう。
セイヤとレイが付き合っている事を知ってしまった
イチロは、感情の暴走により鬼化してしまった。
◆
「ハッハッハ!どうしたイチロ急に
鬼化なんかしち待ってよぉ~
ここでそんな鬼化する様な事起きるかぁ~?」
「はぁ~い、酔っ払いオヤジはもう寝ましょ~ね~」
「おい!離せ結埜!!俺はまだ飲み足りねぇ~!!」
空気の読めないバジオは結埜に引きずられて行く。
「何があったイチロ?」
マサはこの隠れ家内で何が起きたか
把握するべくイチロに質問する。
「何でもないお……ちょっと嫌な事を
思い出しただけだお……」
「そうか……思い出しただけで鬼化か……
それは災難だったな……」
「というか……鬼化ってなんだお……」
「あぁ、鬼化って言うのは簡単に言えば
人がどうしようも無い程の感情の暴走で鬼という
人間とは異なる力を持った種族に
変わってしまう事を鬼化という……らしい」
「異なる力……?力ってなんだお!?!?」
急にテンションを上げて目を輝かせるイチロ。
「詳しくは知らない、政府の人間が知っている様だが
隠し持っていてな、だが大陸防衛軍の中に鬼が
いたのは確かだ……やつは高みの見物ばかりで
戦闘からの情報も得られていない」
「なんだお~……ムッ!フレイム!!」
イチロは魔法が出ないかと手をかざす。
「試すなら異形でだ、ここを壊されたら
一溜りもない……」
「分かったお!早速行ってくるお!」
「今日はゆっくり休め、明日は大仕事なんだ」
「大仕事って?」
イチカは首を傾げる。
「お前達にご馳走を振舞っちまったからな!
ここの備蓄はスッカラカンさ!ワッハッハッハ!!」
腕を振るいに振るったタカオミは満足気に高笑い。
「と言うわけだ、明日に備えて
ゆっくりと休息を取ってくれ」
ユウタ達はマサの言葉に甘え、これまでの
体力を回復取り戻すかのように爆睡した。
――翌朝――
大規模な食料調達の為に全員で異形が
静止している間を狙って動き出す。
「よし、異形は静止しているな」
「マサさん、昨日の感じから見て猶予は三時間……
まだ、行動が読めない異形です、念の為に俺達は
一時間で切り上げてもいいですか」
「そうしてくれ、いざとなれば俺達が
全力で守ってやるさ」
五黒一家の面々が笑顔で武器を構える。ユアサ以外。
隠れ家から遠くないコンビニやスーパーで
食料確保を進めた。
「イチカ……」
「なに?」
「ここぞとばかりにカムフルバーを集めるのは良いが、ちゃんと栄養になる物も探してくれ……」
「えぇ~?ユウタ知らないの~?カムフルバーは栄養満点なんだよ!フルーツも取れるしチョコの糖分補給もできるし!それに見てよこれ!最近あんまり売ってなかったカムフルジュエルバーもあるよ!透明な固めのゼリーで歯ごたえ最高!中のキレイなフルーツゼリーも甘酸っぱくて最高!アクセントに散りばめられたラムネも最高!季節によって模様も変わるんだよ!」
「分かった!分かった!お前のカムフルバーへの
愛情はよく分かった!カムフルバー担当でいいから
どんどん集めて!」
「はーい!」
イチカはルンルンでカムフルバーを回収する!
「そうだ!ユウタこれ持ってて!」
「あのなぁ~俺は真面目に食料集めてて手一杯なの、
自分で確保した物は自分で持て」
「じゃあ、ここ置いとくから見張ってて!」
イチカは走って何処かに行く。
「誰も取るやつなんかいねーよ」
ゴソゴソ……。
「ん?イチカ!!」
――
「ヘアスプレー♪ヘアスプレー♪あったあった!」
ドス……ドス……
「えっ……?」
ガシャァァン!!!
「ユウタ!!」
「大丈夫か!!逃げるぞ!!」
槍爪の異形の突きを間一髪で
ユウタがイチカを突き飛ばして助かった。
「おいっ!全員隠れ家に退避だ!!
異形が動き出した!!」
「タカオミさん!」
「キタキタキターーー!!僕の出番だおーーー!!」
スーパー内にイチロの叫びが響き渡る。
「イチロ君今はマサの言う通り隠れ家に戻りましょ!
あなたは力持ちだからしっかり隠れ家まで食料を運んで!」
「結埜氏……お任せあれなんだお!!」
ウズウズする気持ちを抑えて運搬係に徹するイチロ。
五黒一家が異形を退け、ユウタ達は食料を運ぶ
無事に隠れ家にたどり着くが……。
「やったわね……」
ものすごくお怒りのご様子の結埜。
「悪い……滅多に隠れ家来ないもんだから――」
「ったく、しょ~がね~なぁ~うちのリーダーは~」
隠れ家の扉を閉め忘れ、
中には異形が入り込んでしまっていた。
我が物顔でうじゃうじゃしているヒル型の異形。
「とりあえずこいつらはここに閉じ込めとくか……」
マサは異形の住処となってしまった隠れ家の扉を閉じる。
「で、どうすんだ……」
マサにナイフを突き立てるユアサ。
「お前は一々ナイフを突き立てるな、そうだなぁ……
少し遠いが隣の
行けば別チームの隠れ家はあるが……」
「あるが?」
「俺は行かねー……」
ユアサがかいや、五黒一家が紫九雷町に行きたくない
理由は単純で夜勝刃家の屋敷があるからだった。
「今はそんな事を言っている場合では無いわ、
神黒鳥と夜勝刃家の因縁は分かってます……でも、
こんな時なら共闘できる筈です!」
レイの言う通りこの状況下でわざわざ
夜勝刃家と衝突する理由は無いと判断し
食料を最低限持って紫九雷町に向かう準備をする。
「なんかいつも食料調達すると、こうなるよな……」
「ホントだよぉ~頑張ってカムフルバーこんなに
集めたのにぃ~あまりにも酷だよぉぉぉお!!」
「お菓子位でそんな泣くなよ……俺も持ってるだけ
持ってやるから……」
「うわぁーーーん!ユウタァァア!!」
「――羨ましい限りだお……」
ユウタとイチカのイチャつきに虚しくなるイチロ。
「よっと!あそれ!ほいほいほい!当たらないね~
残念だね~――おや?生存者はっけ~ん」
「なんだ……あいつ……異形共の攻撃を余裕で
交わしてるぞ……」
突如現れた青年は『陽山カズイチ』という名前で
近くの大きな病院の地下で他の生存者と立て篭もって
いるらしく、ユウタ達と同じく食料調達をした帰り道
だったらしい。異形の攻撃を余裕で躱しているのは
神からの授かり物の目のおかげで任意のタイミングで
数秒先の起きる事を見る事ができるのだとか。
ユウタ達は紫九雷町に行く前に
病院に立て篭もる生存者達と合流する為に
カズイチの案内で八珠枷町の火花衣病院に向かう。
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