KAMITUKU
木南 鷹
第一章 異形襲来編
第1話 「地球に降り立つ黒い影」
今、人間達がもっとも栄えている一つの大陸〈ホムラ大陸〉
今日も平穏な時を過ごすホムラ大陸の人々。
大陸の中心に七つの地域が集まり、
外側に行くほど田舎になっていく。
東西南北の四方は広い範囲で、
人が簡単には立ち寄れない環境になっている。
その大陸中心の町にある学校
〈
♦
校舎では真剣に授業を受ける者もいれば、
よだれを垂らしながらだらしなく寝ている学生達。
そんな、だらしなく寝ている少年は
『八蘇木(やそぎ)ミカド』
黒いヘアバンドがトレードマークの高校一年生。
ミカドに隣の席で呆れた表情を浮かべている
女の子は、『野乃木葉(ののきば)イチカ』
どんな強風が吹いても動じない
ヘアスプレーで固めた前髪がトレードマークだ。
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ミカドとイチカは付き合っていて、
訳合ってミカドの祖父の家に一緒に住んでいる。
四限目が終わりお昼の時間、
ミカドの元にイチカがやってくる。
「今日はどこで食べよっか♪」
「めんどくさいからここでいいだろ~」
「えぇ~たまには外で食べようよー!」
「ちょッ!は~な~せ~!」
無理やりミカドの腕を引いて屋上に
連れていくイチカ。
「外って屋上かよ……カップルだらけじゃねーか、
俺には眩し過ぎる光景だぜ……」
「失礼ね!私、一応あなたの彼女なんですけど
婚約もしてるんですけど???」
ミカドの視線に映るのは青春があふれる、
初々しいカップルばかりだった。
「はぁ~、いいなぁ……俺もあんな風に
ラブラブしてみたいなぁ~」
「そりゃ、私だってあんな風に
イチャイチャしてみたいわよ!イケメンと!」
「はいはいすいませんね~イケメンじゃなくて」
「冗談よ!もう!せっかくのいい天気だし、
四の五の言ってないでお弁当食べよ!」
周りのカップルは、お互い飾らない
ミカドとイチカを羨ましそうに見る。
平穏な時をいっそう引き立てる様な
晴れやかな空、暖かい空気。
しかし、異変はすぐそこに……。
遠くに二つの漆黒の影が
空から降りてくるのが見えた。
「なんだあれ?空に黒い何かが浮いてるぞ?」
「浮いてるというか降って来てる様に見えるけど、
何だろね?」
「まぁ、鳥かなんかだろ、隕石には見えないし」
学校中の皆も別に気にしていない位の
小さな漆黒の二つの影。
「嫌な予感がするぜ……」
「無理に厨二病演じなくていいわよ」
「なんか言っておこうと思った」
ミカドの渾身のドヤ顔と厨二病発言を
引きながら受け流した。
途端に遠くの空が暗雲に変わり、みるみる広がる。
「見ろよ、向こうの空、雨雲にしては異様に黒いし、
流れが早いな……嵐の予感――」
「今日は天気予報では一日晴れだったのにね、
降ってくる前に教室に戻ろっか」
「最初から教室で良かったじゃんかぁ~」
あっという間に暗雲は広がる。
♦
暗雲に包まれるも、雨も降らず、
強風も吹くことはなく、
人々の平穏は不穏に変わり始める。
お昼休みが終わる間もなく、校内放送が流れる。
生徒達には安全の為に校舎に残るようにと
伝える放送だった。
皆帰れるんじゃないかと期待していたが、
期待外れの校内放送にげんなりする。
五時限目が始まろうとした時、
遠くから地鳴りが響きだす。
「なんだ?地震か!?みんな机の下に隠れろー!
デカいかもしれんぞ!!」
生徒は教師の指示ですぐに机の下に隠れる。
底知れぬ不安と恐怖で教室が静まり返る。
地鳴りが長く響き渡り少しづつ近づいてくる。
やけに長い地鳴りにみんな気が狂いそうだった。
急に学校中、町中が停電する。
「なんだ!?なんだ!?
何が起きてるんだ!?!?!?」
教師が不安に耐え切れず叫び出し、
生徒達も我慢できなくなり、パニックに陥る。
「ただ事じゃねーな、空は真っ黒、長い地鳴り、
急な停電、机の下に隠れてどうこうの
話じゃないと思うんだが……」
普段から落ち着きのあるミカド、
こういう時も冷静さを欠かさない。
イチカは恐怖心で目をギュッと閉じて、
耳を両手で塞ぎ震えている。
ミカドは周囲に気遣い、静かにイチカの元へ行き、
肩に手を回す。
少し安堵したイチカは顔を上げる。
「ありがとう……ミカドはすごいね……
こんな時も冷静で」
「慌てたってしょうがないからな」
イチカはミカドのおかげで少し落ち着きを取り戻す。
その矢先に、地鳴りは激しさを増す。
堪らず、みんな立ち上がると教室の窓から
一人の生徒はずっと外を眺めていた。
他の生徒も釣られて窓の外の光景を見る。
その光景はとてもこの世の光景とは思えない
景色に変わっていた。
「なんだよ……あれ……」
外の光景を目の当たりにした生徒たちは
一斉に教室を飛び出す。
教室に残るミカドとイチカ、それと外をずっと
眺めていた生徒。
その生徒はミカド、イチカと仲がいい生徒で名は
『
「シツキ……」
「ミカド……イチカ……ごめん」
「なんだよ……ごめんって……」
シツキは外を鋭い眼差しで眺めている。
「こわいよ……ミカド……」
「俺もこえーよ……」
繋いでいる手はお互いに震えている。
「私、まだ生きたいよ、ミカドと一緒に
まだまだ生きたいよ……」
いっぱいいっぱいの涙を少し零し、
必死に恐怖を堪える。
「こんな光景だ……助かるかどうかはわからない……
生き残った所で――」
ミカドの言葉を遮るイチカ。
「嘘でも生き残ろうって言ってよ……」
「悪い、でも約束するよ、最後まで守る……絶対に」
「ありがとう、私もミカドを守る……最後まで……」
ミカドとイチカも外の光景を力強く見つめる。
見つめた光景の先には、黒く染まった空と、
街並みを黒く染める、見た事もない生物がぞろぞろと
迫って来ていた。
シツキが窓からベランダに出る。
「ついに来たな……異形共……」
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