クリスマス

幼い頃、クリスマスは特別だった。


空をトナカイに乗ってやってきて、セコムを通り抜けてプレゼントを届けてくれるおじいさん。


クリスマスケーキとコーヒーが好きなおじいさん。


父の前に現れては

「部屋を片付けないとプレゼントは渡せないなあ」と呟くおじいさん。


それが私にとってのサンタさん。


何度会いたいと願ったか。絶対寝ないぞ!と思うのに、会えず。深夜目が覚めた時には枕元にプレゼントが置かれている。


そのプレゼントが入った靴下を抱きしめて寝るのが1番の幸せだった。


そんなのも遠い昔。

サンタさんの来ないクリスマスは物足りない。聖なる夜だったクリスマスは、ちょっとなんか特別な日に成り下がった。


でも、なんやかんや言いながら、クリスマスは好き。


クリスマスソングを口ずさみながら家のイルミネーションをする。鼻歌を歌いながらイルミネーションを観に行く。


まだホットワインは飲めそうにないけど。まだまだホテルのディナーは遠いけど。


大好きな人たちにプレゼントを渡し、大好きな人たちからプレゼントがもらえる。そんな特別な2日間。


ハロウィンが終わった瞬間から、クリスマスソングを口ずさみ、そろそろ弟にうざがられるようになってきた。


今日はクリスマスイブ。

空はどこまでも青くて、頬を撫でる風はいつもより暖かい。


今日と明日、誰かのサンタになってくる。


辻真菜実

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浮かれたためいき 辻真菜実 @Manamikan

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