第5話 異変
トムはチャーリーの根城へ向かっていたが、周辺の様子がおかしいことに気が付いた。
もちろん今朝も死体がそこかしこに転がっている。誰だかよく分からない者同士の成れの果てだ。そんな状況に関わり合いになりたい者はおらず、いつも街は静まり返っていた。
しかし、今日は違う。
「やあ、トム! 昨日は散々だったな! 今日はいい天気だから、後で一杯やらないか?」
通りがけの宿の窓からチャーム無しの荒くれ者が、上裸で明るく声を掛けて来る。それも1人や2人ではない。
この街の朝はひっそりとしているか、どこかで喧嘩をしているかに相場が決まっている。そこかしこから笑い声が聴こえるなんて、気味が悪いことこの上なかった。
「よーう、トム。俺、臨時収入があったんだ。朝飯まだなら食えよ」
陽気な口調で良く焼けたサンドイッチを差し出して来る輩までいる。絶対におかしいと驚くあまり、死体の1つにつまづいた。しかし心無しか、自分の胸にも清々しい気持ちが芽生えていることに違和感を感じているのだ。
「おう。でもカーサスのとこで食って来たんだ」
トムは近寄って来た男を適当にやり過ごす。そのうち、先に行った部下たちに追いついたが、部下たちはトムを見つけるやいなや困り顔で呼んで来た。
「トムさん、早く来てください!」
先ほど捕らえた暴漢の様子がおかしいことに気付き、慌てて駆け寄る。
「どうしたってんだ?」
縛られたままの暴漢は3人とも泣いており、あまりのことにトムは絶句した。さっきカーサスの首を絞めていた大男は身を
「お、俺、飯を出してくれた女将さんに、なんてことしちゃったんだ〜。今から戻って、女将さんたちに謝りたい! 謝らせてくれ〜!」
今度はトムが困り顔になった。
「はあ?どうなってんだ、これ?」
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