2-⑹
10月になって、平日は図書館で、土曜日は絢がうちに来て勉強するというパターンが続いた。ある日、図書館から二人で出てくると
「いとはーん」と大きな声で手を振って男の人が近づいて来た。
「こんにちわ、この人がいとはんの彼氏なんだ」と言った瞬間、
絢は「こんなとこでいとはんとか叫ばないでよっ」と言って手をグーにしてその人のお腹に突き出していた。
その人は笑いながら「ごめん」と言いながら去って行った。
「ごめんなさい。会社の人で配達の途中だと思う」と絢は頭を下げていた。
最近の絢は、授業にとにかく集中しているようだった。一生懸命、先生の言葉を聞いているし、ノートも都度書いていた。
この前、先生が「もう、成績順に席を決めるのは止めにします。だけど上から10番まで前に貼り出します。」と発表していた。
誰かの父兄から、成績順に席を決めることについて、なんか言われたみたい。
まもなく中間テストが始まった。二日間の強行スケジュールだった。
絢は今回は算数も「まぁまぁかな」って言っていた。
金曜日に結果が先生の机の横に貼り出される。いつものように石川進のトップは不動だった。二番早瀬いづみ、三番杉沢健一、四番水島基、五番本町絢と続いていた。
その時、僕と絢と早瀬いづみが エッ っと同時に声を出していた。
早瀬いづみの「えっ」はどういう意味があるのかはわからなかった。
絢は下を向いて、左の胸に流している束ねた髪の毛をしきりに撫でていた。
絢に後で聞くと、僕とは合計点で2点しか差がなかった。でも本当によく頑張っている。不思議なことに、徐々にクラスの中で絢は人気が出てきているようだった。でも、それから、しきりに早瀬いづみは僕に話しかけてくるような気がしていた。だけど絢が前の席にいるので、僕にはそれが気になっていた。
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