地球が揺れてる

門前払 勝無

第1話

「地球が揺れてる」1


 七時ー仕事が終わり電車に乗ってコンビニでご飯を買ってアパートに帰ってコートを脱いでケトルに水を入れてスイッチ押して…。


「つまんないな」


 渚は携帯を握り部屋にポツリと佇むー。


 携帯の画面にはダイレクトメールが三通あり読む。


 マーシャル

 こんばんわ!おつかれさま!まだお仕事かな?

 あ!もしよかったらしい今週末に食事でも行きませんか?

 六本木に美味しいイタリアンを見つけました!


 ムラキヒロフミ

 おっつ!今度仲間同士でキャンプ行くんですがどうですか?アウトドア好きと言っていたので長瀞のキャンプ場です!行くなら迎えに行きますよ!


 ゴミタロウ

 昨日の質問の答えですが

 女の人を口説いた所でその人を傷付けるのは明確なので口説かないですよ



 渚はインターネットでなんとなく会話を始めた三人と連絡を続けている。

 マーシャルはIT関係の仕事を港区でして居るらしい。

 ムラキヒロフミは埼玉で地域おこし協力隊として過疎化した地域の為の仕事をしているらしい。

 ゴミタロウは自分を風転と言っている。インターネットを覚えたばかりで興味本位でやっているらしい。


 渚は都内でOLをしている。仕事と家の往復の毎日、週末に自然公園等に一人でハイキングに行ったりするのが楽しみでアウトドアが好きと言うよりも山の中を散歩するのが好きなだけである。

 ただインターネットで会話をしているだけだと思っていたがマーシャルとムラキヒロフミから誘いが来て少し動揺しているが嬉しい気持ちもある。

「私も意外とモテるじゃん」

たまには週末に人に会うのも良いかも知れないなと思い一番近場のマーシャルにオッケーのメールをした。ムラキヒロフミには今週末は無理で来週なら空いていると返事をした。

 ゴミタロウは掴み所の無い所があって“そかそか!”と素っ気ない返事をした。だが、ゴミタロウの会話の中で多々気になる時があって少しだけ興味がある。


 週末ー。

 仕事が終わりいつもとは逆のホームから六本木へ向かった。地下鉄構内の生温い風を浴びながら表へ出るとあちこちにイルミネーションがあり華やかな街並みに動向が開いたが直ぐに警戒態勢になった。なんとなく危険な感じがする。

「やっぱ止めとけば良かった」

「渚さん?」

上品な細めのスーツを着た清潔感のある男が立っていた。渚は頷いて近付いた。

「ほらな!来ただろ?」

マーシャルがそう言いながら少し離れた場所に居るラフな格好をした二人組に手招きした。

 渚は足を止めて何事かと思った。

 男達は首元までタトゥーが入っていてラッパーみたいな格好をしている。

「意外に可愛いじゃん」

「だな」

「渚さん今日は酒飲めるでしょ?コイツらも一緒に来たいって言うから連れてきちゃったよ。イタリアンは無しで一緒に酒飲みでいいでしょ?」

「え?いや、私帰ります」

ラッパーAは渚の腕を掴んで笑いながら引っ張った。

「大丈夫だよ!僕等恐い人じゃないからさ!」

「何言ってんだよ!刑務所上がりのくせによ」

男達からの威圧感に恐怖を覚えたが周りの通行人は誰ひとり見向きもしない。渚は泣きそうになった。今の自分がどういう状況なのかも解らない。ラッパーAは渚の腕を掴んだまま歩き始めて華やかな街並みから逸れて路地裏へと引き込んだ。マーシャルもニヤニヤと電子タバコを咥えながら後を着いてきている。ラッパーBも渚の脇に手を回してきて逃げられないようにされた。渚は“たぶんオワタ”となんだか恐くて情けなくて力が抜けてしまった。


 何かが崩れるのって一瞬なんだー。


 暗いタイムスの一番奥の黒いアルファードに連れ込まれた。悲鳴すら出ない。服が破れるのが嫌だから抵抗するのを止めた。


 もういいや


 タトゥーだらけの男達は渚の躰を乱暴に扱った。渚は泣くことも抵抗する事も無く無表情に事が終わるのを耐えた。頭の中で木漏れ日の中の散歩コースを歩いていて疲れて息が上がってるだけだと…キャンプに来て車中泊してるだけだと…そんな事を想像して現実を考えたくなかった。


つづく

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