子供

「ごめんね、魔王様。でも君はクールなお方だから、理想の父親には向かないの」

『…………何の、話だ……』


 理不尽である。

 封印を解いて、下僕になる代わりに邪魔な存在を消してほしいと願った張本人が、主人の手を、喉を、ボロクソに噛み千切ったなんて。

 だが魔女はそんなことは知らない。

 昔の事よりも、今楽しいか否かが大事。

 故に可愛い英雄と連れ添って、愛しい魔王を打ち倒した。


 魔王の心臓が動かなくなったのを確認すると、魔女は新しい男の方に振り返る。

「さぁ、それじゃあ英雄さん。貴男の肉片を少々もらうよ」


 ✳✳✳


 魔女は子供を作るにあたって、生物本来の機能ではなく魔法でもって妊娠出産をしようと考えた。そうすれば産まれるまでの時間がグッと縮まる。

 その為に必要なのは精子ではなく、血や肉片。そっちの方がお手軽だ。


「さてさて、どんな子供が産まれてくるかな……」

 腹を膨らましつつ、魔女は笑みを浮かべる。


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