退屈な魔女の一団
双六トウジ
封印の匣、大公開
「いっけね、やべー奴の封印解いちゃった」
見習い魔法使いの千代子は親且つ師匠の部屋から、開けることを禁じられた箱を持ち出して開いた。
結果、それに封じられし魔王を現世に蘇らせてしまった。
『汝が我を封印の匣から出したのか。破滅を世にもたらす魔王を』
魔王の姿かたちは、165cmの千代子より3倍も高い背で、影のように薄黒く、鋭い爪と牙を持っていた。千代子の肌がなんだかピリピリする。おお、これが偉大なる力を前にしたときの恐怖か。
彼女はどうにかしないとな、と考えた。
「あ、はい。まぁ出す気はなかったっていうか、お母ちゃんがこの箱開けるなよっていうんで開けたくなっちゃって。ええと、このままだとアタシお母ちゃんに怒られちゃうんで、箱の中に戻っていただくとかできます?」
『無理だな』即座に否定された。
「あ~そすか〜、この後どうしよかな」
彼女は一見呑気なようで、内心わりかし焦っていた。お母ちゃんの説教はしつこくて嫌なんだけどなぁ、と。
その様子を見て魔王はこう提案する。
『……だが、貴様の母を消滅させることはできるぞ?』
「え、マジすか! じゃよろしくおねがいします!」即座に肯定した。
『ほほう、自分の親を殺すことも厭わぬか』
彼女はとびきり倫理観のない魔法使いであった。思い切りもいい。故に魔王はすぐ気に入った。
『代わりに、貴様は我が下僕となれ』
「んー、いいよ」
✳✳✳
「千代子! あんた何やったの!?」
母親が慌てて帰ってきた。異常な魔力を感じ取ったのだろう。
だけれどもう遅い。契約は交わされ、運命は決まった。
そういうわけで、魔王は一瞬にして母を塵に変えてしまった。
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