50.全ての黒幕

「……ばれてしまっては仕方ありませんね」

「やはり、あなたが全ての事件の黒幕だったのですね?」

「ええ、そうですよ。このファルーシャ・ラルキネスこそが、この事件を裏で操っていた黒幕。あなた達が、探していた人物です」


 ファルーシャは、私達に対して堂々とそう宣言した。自分が、犯人である。それを惜しげもなく私達に伝えてきたのだ。

 それは、少しわざとらしくも思えた。まるで、ファルーシャを犯人と仕立て上げたいかのような、そんな印象を受ける。


「あなたが、レフェイラ様を操り、私を陥れようとしていたのですね?」

「ええ、あなたのような平民に大きな顔をされるのは、気に入らなかったので、レフェイラになんとかしてもらおうと思ったのです。彼女は、私と同じような思想をしていましたから、あなたのことをもてはやしたら、簡単に動いてくれましたよ」


 ファルーシャは、先程までとは豹変していた。あの穏やかで優しかったはずの彼女が、こんな風になるとは驚きである。

 それは、まるで人が変わったかのような変化だ。それが、言葉通りなのではないか。私は、改めてメルティナの推測を思い出す。

 彼女の中に、二つの魂がある。それが本当なら、今出てきているのは、もう一人の方なのかもしれない。


「しかし、どうやら、ここが年貢の納め時ということのようですね。あなた達にばれてしまった以上、私はもう終わり……」


 そこで、ファルーシャは自らの体にその手の平を向けた。言葉から考えると、それは諦めた自分に魔法をかけようとしているように見える。

 もしかしたら、自分に魂奪取魔法をかけようというのだろうか。今までのことから考えるとその可能性が高いはずだ。


「うっ……!?」


 だが、彼女が自らに魔法を行使することはなかった。なぜなら、その手の平が突如床に向けられたからだ。

 それは、明らかに本人の意思ではない。何者かが、彼女の手を無理やり下に向けた。そんな動きだったのだ。


「まだ話は終わっていませんよ」

「なっ……」


 それを実行したのは、メルティナだった。彼女はその多大な魔力を使い、ファルーシャの体を操ったのだ。


「ば、馬鹿な……この私が……」

「申し訳ありませんが、動きを止めさせてもらいました。勝手なことをされると困りますからね」

「う、動けない……」


 ファルーシャは必死に体を動かそうとしたようだが、その体は一切動かない。それ程に、メルティナの拘束力が高いのだ。

 ここまで色々なことをしてきたはずのファルーシャでさえ、メルティナには及ばない。そんな光景を見て、私は改めて彼女の魔力が強大であるということを実感する。

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