第六章 私を救う
悪魔
「いやあ今回は惜しかったねえ」
悪魔は今夜も勝手に私の夢に現れ、愉快そうに笑う。
「あんなことされるなんて聞いてないんだけど」
「今回は誰かに譲ったりしなかったのに、普通に失敗することもあるんだねえ。本当はレーリアの身体の異常を治して更生させるために使わせるという意図でセッティングしたんだけど、普通に倒しちゃうとは」
生命の実を使えばそんなことが出来るのか。確かにレーリアは自分が生きるために戦う、と言っていた以上もし生命の実を使って普通の人間と同じ存在になれば戦う必要はなくなるのかもしれない。私がそういう選択をしていれば彼女はどういう反応をしていただろうか、と少しだけ考えてしまう。
言われてみれば、禁忌に手を出した神官の命は一度助けたのに、レーリアを助けなかったのは私の都合ではないかと思えてくる。程度は違えど、二人がやむをえない事情で悪事を働いたということに変わりはない。だとすると神官の時のように、レーリアを助けることを目標にすべきであったのではないか、という思いが首をもたげてくる。
「でも、まさか闇の十字架のアジトに単身乗り込んでいくなんて思わなかったよ」
「私あんまり作戦とか考えるの得意じゃないから」
とはいえ、レーリアを討った以上シルアとカイラに追手が来ることはないだろう。そう思えば目的は果たしたと言える。私は首を振って自分のしたことを振り払う。
「しかしまさかここまで実を手に入れられないとは思わなかった。実の入手シチュエーションを考えるのも楽じゃないからそろそろネタ切れだよ」
悪魔は困ったようにやれやれ、と首を振る。私の知ったことではない。
「そもそもそっちが意地の悪いシチュエーションばかり考えるからでしょ? そこまで言うならただでちょうだい」
「それだけはない。とりあえず、レーリアが召喚した魔物の心臓に実と同じ効能を持たせたからそれで」
「なんだ、今回は敵を倒すだけ?」
良かった、正直また情に訴える感じの状況になったらどうしようかと思っていた。
が、悪魔は嫌な感じの笑顔を浮かべる。相変わらず悪魔だ。
「大丈夫、今回は心臓関係とは別に面白イベントを用意してあるから、そっちがメインディッシュね」
「そんな無理しなくても……ん?」
悪魔と話していると私は妙な気配を感じる。もしや寝ている私の身に何か起こっているのだろうか。
「ち、もうちょっと寝ててくれた方がおもしろかったのに」
私が異変に気付いたのを見て悪魔が嫌そうな顔をする。
私の体に絶対何かあった。反射的に飛び起きる。
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