第三章 闇神官を救う
悪魔
「おいおい、また生命の実を人にあげちゃってるじゃないか」
ここは私の夢の中。オズワルドに実をあげた日の夜、私はまたまた悪魔と話していた。話していたというよりは絡まれていたというのが正確だが。
「うるさいなあ、放っておいてよ。だってまさか毒殺されるとは思わないじゃん」
「そりゃあ君の剣の腕は知っているからね。裏をかいていかないと。それに、殺す方法なんてどうでもいい。重要なのは君が手に入れたはずの実をオズワルドとかいう守銭奴に渡したことだ」
「……」
そう言われてしまうとやはり何も言い返すことが出来ない。仕方ないので代わりに悪魔を罵倒する。
「ろくでなし! 鬼! 悪魔!」
罵倒はあまり得意ではないので小学生レベルの罵倒になってしまう。そんな罵声を受けて悪魔は嬉しそうに相好を崩す。
「そりゃあ悪魔だからね。じゃあずっと放っておくがいいのか?」
「やめて! 次の実の手がかりだけは教えて!」
今夜も私は悪魔としょうもないやりとりをかわしていた。悪魔は心底楽しそうに私と会話している。
そんなに楽しいか。
そこで私はふと疑問に思ったことを尋ねる。
「そう言えば、何で私だけ毒を盛られてもぴんぴんしてたの?」
すると悪魔は急に真顔になる。
「さあ、そこは私の差し金とかではないからよく分からないな」
「悪魔にも分からないことあるんだ」
「そりゃあねえ。だが推測はつくな。人間の体は今まで食べてきたもので免疫やら耐性やらがつく。この世界の住人と食生活が全然違う以上、効く毒も違うってことだろう」
「なるほど」
ちょっと興味深い話だった。ということは逆に普通の食べ物を食べてどうでもいいところでやられる可能性もあるってことだよね。気をつけないと。気をつけようがないけど。
「まあいい、次の実のありかを教えてやろう。この前の村から西に続く街道に入り、マイルという村があり、そこから北に折れて進んでいくと洞窟がある。そこに暮らしている神官が持っている」
「え、何で神官がそんなところに暮らしているの?」
今回の情報は具体的な代わりに少し突拍子がなかった。
「さあな。悪魔の言葉になんて惑わされずに自分の目で見た情報で判断したまえよ」
「悪魔に言われたくない」
何で神官は洞窟で暮らしているのか。そもそもこの世界の宗教はどういう体系になっているのか。日本でも神社の神官かキリスト教の神官かでかなり印象が変わる。しかも実を持っているということは何か曰くはありそうだけど。
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