00:05.52
夢を見た。
悪夢を見た。
地獄を見た。
車の窓から外を見る。なぜか体を起こさなくとも見ることができた。いつもは座席に縛られていて、体をよじることでやっとの思いで見られるのに。
一面の炎。一面の瓦礫。一面の死体。
前部座席はない。本来、そこには何かがあった。
外から轟音が鳴り響くのが聞こえる。
人の叫ぶ声も聞こえる。怒鳴り声か。悲鳴か。
赤い。赤い。赤い。
遠くで“何か”が動いている。埃が舞い、日光も遮られていて、姿がよく見えない。
鈍い光を反射している。そこから辛うじて見えるのは節くれだった大きな背中。
それは動きを止めて、こちらを見た。
こちらを見て、こちらを見て、こちらを見て、こちらを見て、こちらを見て、
こちらを見た。
巡は目を覚ました。
ここに来てから2か月が経った。いつの間に寝てしまっていたみたいだ。
恐ろしい夢を見ていた気がする。いや、あれはきっと記憶なのだろう。
だが、もう朧気となってしまっている。
今まであの日の時の記憶を掘り起こされることはそこまでなかったのだが、ここに来てからは頻繁に起こるようになった。異形についての学習を進めているからだろうか。かの異形は「始まりの異形」や「異形の王」など呼び方は様々だが、初めてこの世に出現した異形であるため特別視されている。画像や映像などの記録も嫌というほど見てきた。その影響か、自分の記憶の中でも異形の存在が幅を利かせるようになった。あそこまではっきりと見たかどうかは覚えていない。本当に見たのかすらも分からない。それでもあの異形が異常であったということは確かだ。
嫌な記憶を振り払いたく、寝返りをうつ。ここでの監禁に等しい生活も相まって、とっくに精神も身体も疲労している。そして、また目を瞑り、2か月前のことを思い出す。後悔はしていない。これは仕方のないことだ。ただ2か月とはいえ、それは自分の過徒に対する認識を改めるには余りにも十分な時間だった。それだけのことだ。
次回→12/22 23時頃
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます