【なんてことでしょう】
【なんてことでしょう】
ここ【タツミーホーム】では、様々な職種についている入居者の為に24時間いつでも作り立てのご飯が食べられる。普通の老人施設のように決められた時間に決められたメニュー、それも美味しさよりも栄養バランス重視という名目でコストを極限まで抑えたものではなく、新鮮な魚介類を使った寿司から、島の名産【巽牛(たつみぎゅう)】のステーキまで何でも好きなものが好きなだけ食べられる。もちろん作っているのもほとんどが入居者で、一流の料亭やホテル、個人レストランなどで何十年と腕を磨いてきた料理人ばかりなので、味は保証付きなのだ。これもこの施設が大人気の秘訣だ。
ハマとトワは朝10時からの情報番組で、一見ライオンのぬいぐるみを抱えているが、普通の人間には見ることの出来ない、ライオンのような【龍】を頭にのせて「この子のご飯がわかる人はいませんか?」とカメラに向かって訴えかけているポーラの姿を目にして驚き、同時にこう口にした。
「なんてことでしょう!?」
「なんてことでしょう!?」
テレビの中では、ポーラの、笑ってぬいぐるみをプラプラしながら目は頭の上を見ているという、奇妙奇天烈なぶっ飛んだ行為に、アシスタントの女性アナウンサーがポーラ本人に任せるのは危ないと持ったのか、自らフリップを持ち、ライオンを振り回し続けるポーラの横で告知を始めた。
「え~、嬉しいのでしょうか、恥ずかしいのでしょうか、ちょっと解りかねますが、とにかく、ご機嫌なポーラさんに変わりまして、私が。本日発売の「Pola.s kitchen」!!」今大人気のポーラさん初の料理本です。私も先ほどちらっと中身を拝見しましたが、料理はもちろん、さすがはモデルさんだけあって、ご本人の料理とは全く無関係な写真も満載で、料理とポーラと同時に楽しめる内容となってます。この後、13時より銀座の『有翼堂書店』で発売記念イベント、があるそうです」
ここでADがマネージャーに伝えられていたスケジュールをカンペにしてカメラの横で出した。
「繰り返します。銀座の『有翼堂書店』で13時から…」
「あのねー、料理作るの!」
突然割り込むポーラ
「時間がないからサラダだけなんだって、フフフ♡あっこれ言っちゃダメなヤツだった、ごめーん」
マネージャーに睨まれて思わず口にしてしまう
「じゃあ、これからはちゃんと言うね。えーと、『13時から14時までがキッチントークショー、これは特設キッチンセットで実際に13ページの『Pora’s salade』を作ってもらいます。その後、14時から15時までサイン会となりますので、本購入の方に直接書いてもらいますが、いちいち書いていると時間がかかりすぎますので、10時の本番までの空き時間と書店までの移動中の車内で100冊の本にサインしてもらいます。』です」
こうみえて記憶力抜群なポーラは朝のマネージャーの説明を一言一句違わずにスラスラと繰り返して見せた。
「それから、お昼も車内です!」
そう付け足して、得意げににっこり笑うポーラに、マネージャーは頷いて見せた。よくやった方だ。これくらいで怒っていてはこのタレントのマネージャーは務まらないのだ。
「みんな~来てね~!」
とまたライオンちゃんを振りはじめたので、すかさずMCが
「はい、いったんCMです。CMのあとは気になるあの話題と芸能ニュースです・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます