過去のつぶやき
エリー.ファー
過去のつぶやき
ほどなくして雨が降った。
母が亡くなった。
火葬だった。
土葬でもいいと思った。どこかに母が残っているように思えるだろうから。
でも。
火葬になった。
燃えて、消えた。
どこかにはいるのだ。母の成分を吸い込んでいるかもしれない。
でも、燃やすのは駄目だろう。
それは、冷たい。余りにも心がない。
火をつけて、誰もいなくなって。
それで。
なんなのか。
ああいうのはやめてほしい。
そういう文化が嫌いだ。
いいじゃないか。
なんで、人間は死ぬんだ。
死ななくていいじゃないか。
死ななかったら、ずっと幸せじゃないか。
不老不死だと、命の大切さが分からなくなるとか、そういうのはいらない。
そういうバカの言葉はいらない。
そんな話じゃないんだよ。
違うんだ。
命は死に至る病だけれど。
別に死に至らない病があってもいいじゃないか。
違うか。
おかしいだろ。
なんで、そんなにそこに制限をつけたがる。
別にそこまで人間はバカじゃない。百歩譲って人間がバカだとしても。
僕はバカじゃない。
僕は命の大切さなんて、喪失しなくたって理解できる。
だったら、僕の周りの人間が死ぬ必要はないし、僕が死ぬ必要もない。
死なんてものは不必要なのだ。
そんなものはなくていいのだ。
だって、悲しいではないか。
あの人もいないのか、あの人も消えるのか、あの人もいなくなるのか。そんなことを思いながら人と付き合わなければならない。
それはなんだ。
なんの苦行だ。
人と仲良くなるのが。
人と分かりあうのが。
人と仲直りをするのが。
怖くなっちゃうじゃないか。
いつか生まれる寂しさのための伏線なんだと、頭の片隅で思ってしまうじゃないか。
悟りたいよ。
悟れば死ぬの怖くないんだろうし。
でも、悟れないよ。
悟れるほど、大人じゃないよ。
それに。
死が怖くなくなるんでしょう。喪失を恐れなくなるんでしょう。
じゃあ。
悟りたくないよ。
大切なものを大切なものだと思う感情が目減りするんでしょう。
だったら、悟りとかいらないよ。
したい人が勝手にすればいいんだよ、あんなもの。悟って凄いとか、凄くないとかわかんないよ。
悟ってみたいとか、やっぱり悟りたくないとか、決められないよ。
いつか。
僕は死ぬんだなあ。
なんで、僕は死んじゃうんだろうなあ。
死から逃げることってできないんだろうし、受け入れるしかないんだろうけど。でも、絶対に死にたくない。死なないことで、やりたいことがすべてできるようになるとか、そんな崇高な考えは一切ないけど。
死ぬの怖いもん。
そこらへんの感覚がバグってくれてたら生きるのが楽だったかもしれないのになあ。なんで、バグってないんだろうなあ。
むしろ、それこそバグな気がするんだけど。
僕は。
私は。
俺は。
あたしは。
明日も生きている予定だし、明後日も生きている予定だ。
いつ死ぬかも分からないまま、死ぬまで生き続ける。
死ぬのが怖いのは、寂しいからだろう。
寂しくなかったら、死んでも大丈夫な気がする。
寂しくない死ってどんなものだろう。
皆に囲まれて死ぬことか、何もかもやり尽くして迎える死か、逆に何も求めないまま自分を滅して受け入れる死か。
試さなければならない。
いつか、自分が死ぬときに。
何が一番良い死に方なのか。
記録しなければならない。
そして。
保存して共有しなければならない。
あぁ、きっとこれが、これこそが。
死から逃れるための娯楽。
過去のつぶやき エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます