同居することになった美少女は俺が告白して撃沈された初恋の女の子でした~まずは家族からってどういう意味だよ~
滝藤秀一
第1章
第1話 顔を突き合わせれば言い争う
思春期というのはまったくもって厄介だ。
どういうわけか素直にモノを言えないらしい。
1人の女の子のことを毎日のように考えるなんて、病気か何かだ。
苦しいのに、なのに嫌ってわけじゃなくて、本当、自分でもどうにかしたい。
週明けの月曜日、俺の宿敵でもある
彼女が教室に入った途端に話し声が木霊していた教室はしーんと静まり返る。
女子が髪を切る、それはどこか特別なことという認識が大半のクラスメイトにあったからかもしれない。
だがそれも一瞬のことで、すぐに女子たちが美涼の周りを取り囲む。
「うわっ、美涼ずいぶんさっぱりしたじゃん」
「ショートも似合うね。それレイヤーボブ?」
「あれ、ちょっと小顔になった?」
「……あはは、変じゃない?」
そう言って美涼は恥ずかしそうに髪を耳までかきあげた。
(っ?!)
今まで見られなかった首筋が露になり、思わずドキリとしてしまう。
長い髪型が似合ってなかったわけじゃないが、前よりも垢抜けたためか大人っぽく見える。
そう思ったのは俺だけじゃないようで、男子からも次々に声が上がった。
「美浜、なんか色っぽくなった? なんか綺麗になった、て感じだよな」
「でも一体どうして……失恋、か?」
「はは、まさか! ……イメチェンだろ」
今日は女子の盛り上がりに当てられたのか、その言葉は熱を帯びている。
俺はといえば、そんな話が聞こえるたびに、男子の視線が美涼に向けられるたびに、胸がざわつき、体に力が入り、何とも言えない気持ちが渦巻く。
「いや、あいつはすぐ説教始めるし足も出るからな、フラれても全然おかしくねーよ。昨日なんてちょっとウトウトしてただけなのに、長々と注意されたし。付き合うとなればただじゃすまないぞ。あの髪型はただ色気づいてるだけだな」
だからついついそんなことを吐き出してしまう。
「お、お前そんな堂々とでっかい声で」
「また怒られるぞ、ある意味すげえよな……」
「樹は子供だからねえ」
自分でも釈然としない気持ちが口から出れば、本人にも聞こえたようで美涼がゆっくりと近づいてきた。
見る限りに不機嫌そうで、勝気で大きな瞳に間近で見据えられる。
スラリとした均整の取れたプロポーション、それは可愛いというよりかは綺麗といった容姿だ。
「何か言ったかしら?」
「なにも」
「……色気づいてなんていないわよ」
「ばっちりと聞こえてるじゃないか。まあ、俺に言わせればただのおかっぱ頭だけどな……」
美涼は引きったような作り笑いを浮かべた。
「ふっ、あなたのはマッシュルームじゃない。前髪が目にかかってるわよ、校則違反」
「ほんのちょっとじゃねーかよ」
「……そんな言い訳が社会で通用すると思うの? 身だしなみくらいちゃんとしなさい」
「よくもまあがみがみと毎回見つけるもんだ」
「それと、今日は歴史の課題が出されていたわね、やってきたの?」
「わ、忘れた……」
「ほんとだらしないんだから」
「……」
彼女は注意するとき、腕組みをして目を真っ直ぐにみてくる。
その透き通った瞳を目の当たりにすると……ああ、くそっ。まともにみられねえ!
美涼の中でルールを破ること、学校内でいえば校則を守らない人には色々と容赦がない。
特に沸点に達した時には、相手を見てとかそういう判断も鈍くなるので要注意なんだ。
そんな場に居合わせたこともあるので俺としては気が気ではないし、トラブルだけは避けてほしいと願っている。
「ちょっと聞いてるの!」
「耳に
ちょっと視線を逸らすと、美涼は耳を引っ張られる。
「俺もあんなふうにお説教されたい」
「な、なんで樹だけ……」
「そういうことだろ。ああなったら立ち入れん。諦めろ」
男子からのそんな声と妬みにも似た視線が突き刺さる。
いや、これそんないいものじゃないぞ、マジでいてぇ!
「そのわりには大した改善してないのはどういうこと! だいたいあなたは時間にルーズなのよ。遅刻も多いし注意したらしたでこれ見よがしにギリギリに来るし……って、なに欠伸してるの」
「……朝は眠いんだから仕方ないだろ、説教女」
それを聞いた美涼はさらに険しい表情を浮かべたかと思ったら足を踏んでくる。
ここまで怒れるということは、失恋が原因で髪を切った可能性はなさそうだ。
なぜかそのことにほっとしてした。
「な、なんですって! 朝以外だって寝てるのによくもまあぬけぬけと……なんて口の減らない
「そのガキの言葉に反応する方も十分ガキだと思うけどな」
「あなたがいつもつっかかってくるからでしょうが!」
「お前がその突っ掛かりにいつも見事に反応するからだ!」
俺たちは互いに睨みあい、そっぽを向く。
いつもだ。いつも素直になれずなぜかこうなってしまう。
たしかに俺は、ガキかもしれない。
こと美涼に対しては思ったことを素直に吐き出せたためしがなかったりする。
合唱コンクールの時も喉を傷めていたのに最後まで歌い切ったことを褒めようとしていたのに
そんな口を開けば言い合ってしまう関係は変わらず、気がつけば卒業式の日を迎えてしまった。
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