10日目 星空指数十

「芹沢の娘?」


 夜空は暗雲が垂れ込め、街頭は切れかかり、県庁近くの公園は不気味な雰囲気を醸し出していた。骨身にこたえる風が吹くなか、周囲の目も届きにくいこの場所で大和田と野上はベンチに腰掛け密談を交わしていた。


「はい。彼の娘、芹沢ナオは今から十七年前に母親、芹沢氏の妻が亡くなる直前に生まれたことになっていますが、実はそうではありません」

「どういうことだ?」

「芹沢氏は妻が亡くなってからしばらく休暇をとっていましたが、復帰後からは依然と同じ勤務体制で働いています。当時は開発部の主任研究員で職場への泊まることも多かったそうです。問題はその間、生後間もない娘の世話は誰がやっていたかということです。芹沢氏は大学卒業後現在の会社に入社後ほどなくして両親と縁を切っています。妻のほうの家族とも関係は乏しく、身近に世話をする人がいなかったのです」

「ベビーシッターを雇っていいたんじゃないのか?」

「当時の芹沢氏宅への他者の出入り、夜間芹沢氏が帰宅する前の時間に明かりがついていなかったとの情報を得ています。では、芹沢ナオは誰に育てられたのか?」

「誰なんだ?」

「それはですね――」


 野上は自身が集めた情報とそれらから導かれる答えを説明する。


「――ということが言えます。芹沢氏自身は堅固な城塞のような男ですが、娘のほうから探っていけば面白いことがわかるかと思います」

「……ほう。面白そうな話だな。いいだろう。その線から奴を崩すとしよう」


 大和田は顔を歪め含み笑いする。

 かくして大和田の暗躍は方向性が定まった。星一つ見えない空の下で、一つの結末へと向けた暗澹あんたんたる道のりが出来上がりつつあった。


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