第10話 フリップのお菓子、食べる飴?

 フリップが手を開いたら、そこには紙の包が。フリップ今お菓子って言ったよね。タマ先生が包を見て大丈夫かしらって。変な物が入ってたら大変よって言ったんだ。

 そうだよ。優也お兄ちゃんは、知らない人に付いて行っちゃダメって言ってたけど。知らない人に物を貰っちゃダメって事も言ってました。フリップはもう名前は知ってるけど、でも知らない人。そんな人からお菓子何か貰っちゃダメだよね。僕はお菓子に向って唸ります。


 優也お兄ちゃんもフリップの手をじっと見たまま動きません。ほらやっぱり貰っちゃダメなんだ。

 僕が唸ってたら、さっきからブツブツと、フリップの側でずっと文句言ってた人、確かノウルっていう人が、またフリップにお話してきました。


「フリップ様、いきなりそういう事をしても、警戒されているのですから。私でしたら知らない場所に来て、いきなり食べ物を出されても、警戒して口にしませんよ」


「ん? そうか? 私はただこの小さなお客に、少しでも安心してもらおうと思ったのだが。そうだ、私が先に食べよう。それならば安心だろう」


 フリップはそう言って、包をガサガサ。中から出て来たのは平べったい丸で、黄色い透明のお菓子でした。フリップが説明してくれたんだけど、食べられる飴だって。食べられる飴? 僕飴なら知ってるよ。聖也が時々食べてるもん。でも飴って普通食べる物でしょう? 食べない飴なんかないよ。変な事言うね。


「フリップ様、その説明は違いますよ。食べられる飴ではなく、噛んで食べる飴と説明しなければ。食べられる飴では、普通の飴が食べられないようではないですか」


「同じようなものだろう」


「全然違います」


「お前は少し細かすぎるぞ」


「そういう問題ではございません。説明は正確にしなければ…」


「ああ、分かった分かった。それでこの飴はな…」


 また説明を始めるフリップ。その後ろでノウルがため息ついてます。この平べったい黄色で透明な飴は、普通の飴みたいに舐めるんじゃなくて、噛んで食べるんだって。舐めても良いけど、噛むときの感覚が良いとかなんとか。良く説明が分かりませんでした。

 それで分からないうちに説明が終わっちゃって、フリップが飴をヒョイって口に入れて。それからすぐに口の中からガリボリ音が。飴を噛んでる音が聞こえてきました。舐めるはずの飴は噛んでるからね、すぐになくなっちゃって。


「どうだ? 平気だろう?」


 そう言ってフリップがまた、ポケットから包を出してきました。今度は手の中に包が4つ。聖也がぬいぐるみのお耳から口を離して、じっと飴を見た後、優也お兄ちゃんを見ました。優也お兄ちゃんは聖也を見て飴を見て、それからフリップを見て。その後また聖也を見て。


「にぃに、アメしゃん…」


 なんか聖也の声、久しぶりに聞いた感じがするよ。ここへ来る前聞いてたけど、それでも久しぶりって感じ。聖也、飴食べたら元気になるかな?

 

 うんって優也お兄ちゃんが頷いたら、聖也がそっと手を伸ばしました。そっと伸ばした聖也の手の上に、フリップがやっぱりそっと、包を乗っけます。それで飴を貰った聖也はすぐに手を引っ込めて、お兄ちゃんの顔に自分の顔を近づけたら。僕達にも聞こえないくらい小さな声で、お兄ちゃんに何か言いました。お兄ちゃんは優しく笑って良いぞって。たぶん食べても良いか聞いたんだね。


 すぐに包を開ける聖也。それで口の中に飴を入れて、パリポリ。食べたとたん聖也とってもニッコリになりました。それで食べてる途中だったけど、すぐに他の包も開けて、最初に優也お兄ちゃんにあげます。飴を食べた優也お兄ちゃんが美味しいって。それを聞いた聖也は、次に僕とタマ先生に飴をくれようとしたんだけど。


「こら、ポチ達に飴はダメだぞ」


 そう言ったら、聖也の顔がニコニコからしょんぼりに。せっかくニコニコになったのに。でも…。

 そう、僕やタマ先生と、聖也達人間が食べる物って違います。僕は食べても良いと思うんだけどね。タマ先生に教えてもらったんだけど、人間の食べ物で食べて良い物もあるんだけど、食べちゃいけない物もあるんだって。それを食べちゃうと、お腹をこわしたり、気持ち悪くなったり。もしかしたら死んじゃうかもしれないんだって。

 だからお家でみんなでご飯を食べてる時も、僕とタマ先生と、聖也達のご飯とは違う物だったんだ。


 この飴もきっと食べちゃいけない物だよね。ごめんね聖也、せっかく僕にくれようとしたのに。ああっ、聖也泣いちゃう! 聖也の顔がみるみる泣き顔に。


「ま、待ってくれ! この飴は魔獣でも食べられる物だ。食べさせても大丈夫だぞ」


「魔獣?」


 魔獣って聞いて優也お兄ちゃんが反応しました。


「フリップ様、この生き物が魔獣と決まったわけでは。私は見たことがありません。もしかしたら向こうの世界に存在しているという動物という物では? 体の作りが異なる物ならば、安易に食べさせては」


「む、そ、そうか。ではこの生き物に似ている…」


 フリップとノウルが僕達の事、物とか、生き物とか言ってたら、聖也が泣きそうな顔しながら言いました。


「ポチ、にゃんにゃん」


「え?」


「ポチ、にゃんにゃん」


「あっ、その。この犬の名前はポチって言います。それからこの猫には名前を付けていなくて。鳴き声でにゃんにゃんと」


「ああ、ああそうなのか! 呼び方があるんだね。そうかポチににゃんにゃんか。では後でポチとにゃんにゃんが食べられそうな物を用意するから、その飴は君が食べると良い。そうだな。そう、まだ名前を聞いていなかった」


 そう言いながらフリップがピシッと立ちます。それに続いてノウルもピシッと立って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る