第8話 知らない場所に知らない人達と知らない動物
金色の光りは、さっき僕達が丸い絵の中に入っちゃった時よりも眩しくて。僕は目を瞑る前に、聖也がどっかに行っちゃわないように、聖也の洋服の袖の所を咥えました。
目を瞑ってても眩しいくらいの金色の光。いつまでたっても眩しいままです。それから周りは何の音も聞こえなくて。聖也の声も優也お兄ちゃんの声も、何にも聞こえません。本当は思いきり吠えて確認したかったけど、それだと洋服の袖を放しちゃうから。大丈夫だよね? 僕ちゃんと咥えてるよね? みんな側に居るよね?
どれくらいたったのかな? だんだんと眩しいのが収まってきました。まだ目は開けられないけど。でも光りが収まって来たら、後はどんどん光りが消えて行くのが分かって。少ししてホッとして目を開けようとした僕。そしたらいきなりまた眩しく光ったんだ。もう! 何なの!?
でも今度の眩しいのは一瞬でした。一瞬眩しく光ってその後はもう全然平気。ふぅ、今度こそ大丈夫? あっ、光りは収まったけど、さっきまでと違う事もありました。なんか僕達の周りが煩いんだ。『子供!!』とか、『魔獣!?』とか。『さっきっも知らない生き物だったぞ』とか。
魔獣? 知らない生き物? 生き物って僕達の事だよね? もしかしてタマ先生かな?
タマ先生の事が気になった僕。でもその前に聖也と優也お兄ちゃんを確認しなくちゃ。僕はそっと目を開けます。やっと目が開けられたけど目がしょぼしょぼ。僕は前足で目をこしこし擦って、それからパチパチ。
僕ちゃんと聖也の洋服咥えてたよ。それで聖也も優也お兄ちゃんも居なくなってなくて。優也お兄ちゃんは聖也と僕をしっかり抱きしめたまんま。良かったぁ。みんな一緒。見えないうちにみんな何処かに行っちゃってたら、どうしようかと思ったよ。
『聖也! 大丈夫? お怪我とかしてない?』
僕は聖也に声をかけます。聖也はまだお目々を瞑ってたから。そっとお目々を開ける聖也。僕みたいにお目々を擦ってパチパチ。それから僕のこと見て、ホッとしたお顔しました。
次は優也お兄ちゃん。僕は優也お兄ちゃんに声をかけようとします。でも優也お兄ちゃんはもう目を開けてて、それでね、僕達を見ないで、真っ直ぐ前を見ていました。それにとってもビックリ、それから困ってる顔してたんだ。
どうしたのかな? 僕の言葉分からないだろうけど、一応聞いてみようかな? そう思って吠えようとしたとき、僕の後ろから声が。
『ポチ!!』
僕は急いで後ろを振り向きました。そこには僕達の方に走って来る、タマ先生の姿が。
『タマ先生!!』
『良かった。みんな同じ場所に来られて。怪我はしていないわね』
『僕は大丈夫です!!』
『そう。聖也達はどうかしら?』
聖也泣いてないから大丈夫なはず。優也お兄ちゃんは分かんなにけど。僕は2人を見た後、またすぐにタマ先生の方を見ます。
『それにしても、一体ここは何処かしら。全然見たことがない場所だわ』
タマ先生にそう言われて、僕は始めて周りを見てみました。あっちを見てそっちを見て。それから優也お兄ちゃんが見てた方を見て。
僕達はどこかの建物の中に居て、それで周りは人だらけでした。う~ん、人? たぶん? だって姿は殆ど同じだけど、聖也や優也お兄ちゃん達と同じ人ばっかりじゃなくて、耳が違ってたり、しっぽが生えてる人達も居たの。
それから居るのは人ばっかりじゃありませんでした。見た事のない動物もいっぱいだったんだ。絵本で見たことがない動物ばっかりで、あっちの動物はブタさんみたいなんだけど、背中に小さな羽が付いてたり。お馬さんに角が生えてたり。うさぎさんのしっぽが大きかったり。
僕が確認してたら、タマ先生がピョンって飛んで、優也お兄ちゃんの肩に乗ってきました。優也お兄ちゃんは今まで全然動かないで、前を見てたんだけど。タマ先生が肩に乗ったらハッとして、慌てて聖也と僕とタマ先生をまとめて抱きしめました。優也お兄ちゃんはタマ先生を見て、またまたビックリしてたよ。
「何だ? ここ何処だよ」
ボソッと言います。と、誰かが大きな声で叫びました。
「静まれぇ!!」
さっき優也お兄ちゃんが見てた方から聞こえて、僕達みんなそっちを見ます。周りに人も動物もいっぱいだったけど、僕達が見た方には、何かキラキラのごわごわ?の洋服を着てるお爺さんが。そのお爺さんの周りは、あんまり人が居なくて。あっ、あれって剣かな? 絵本で見た事のある、確かえっと、騎士さんっていう人達が持ってるやつ。その騎士さん達が何人かと。それから普通の洋服?を着てる人が、何人か立ってました。
そう言えばあのお爺さん。あのお爺さんも見た事あるよ。騎士さんと同じ絵本に書いてあった、確か1番偉い人間ってタマ先生の教えてもらった、王様っていう人。その人にそっくりです。
今の静まれって、あの中の誰かが言ったのかな?
「皆の者、大切な客人の前だ。騒ぐでない!!」
あっ、やっぱりそうだった。あの王様そっくりなお爺さんがお話してました。お爺さんは周りの人達が静かになったのを確認した後、隣に立ってたおじさんに頷いて、今度はそのおじさんがまたまた隣に立ってた男の人に頷いて。その男の人が静かに僕達の方に近づいてきました。
僕もタマ先生も一緒に、その人に向って唸ります。だって知らない場所に、知らない人に、知らない動物。もしかしたら聖也や優也お兄ちゃん、僕達に意地悪するかもしれないでしょう? そしたら聖也がまた泣いちゃうよ。そんなの絶対ダメだもん。
僕とタマ先生が唸ったら、近づいて来た男の人が、ピタッてその場で止まりました。それからピリピリしてた顔が、ふって緩んで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます