恋色流星群

橘伊織

episode1

第1話


重い、頭が重い・・・。

飲みすぎたなぁぁ・・・。

キツく瞼を瞑ったまま、ベッドの中で思いっきり伸びをする。



今何時だろう?


すっかり明るくなった部屋の中で、枕元の携帯電話を探した。



着信履歴、20件。

LINE、50件。


うお・・・たまってる。

さすがに15:00だもんね。みんな今夜の準備を始めてるよね。




LINEのトーク画面をざっとスクロールして、一瞬止まる。



「本日帰国」


タップしてトークを開けば、それだけたった4文字。

「りょーかい」呟いて、返事はせずに画面を落とした。
















「理沙さん、8番ご指名です」

「理沙さん、5番お帰りです」

「理沙さん、お電話入ってます」



六本木の、“たぶん”高級クラブ。

“たぶん”というのは、私自身が経営層に近づいてるからこその謙遜で。



暗くて、キラキラで、綺麗な嘘に塗り込められた世界。

私は毎晩ここで、現実と架空の間を上手に泳いでいく。



それにしても、今日は忙しいな。

私的にブレイクタイムな火曜日なのに。期待と反して、私の名前は呼ばれ続ける。





ボーイ「理沙さん、お願いします・・・」


『ごめんね、東ちゃん。。ちょっとだけ、挨拶してきてもいい?』


「いいよいいよ、俺待ってるよ。

けど、まだ理沙ちゃんここに5分も座ってないからね。大丈夫よね?」



そう言って、ギロリとボーイの葵ちゃんを睨む。


「大丈夫です、すぐお戻しします。

理沙さん、カウンターお願いします」




葵ちゃん、余裕の笑顔で返すけど。



「こえーこえー、あの顔まじだわ。理沙、すぐ席戻ってね!」


『いやこれは仕方ないよね。笑

さくっと終わらせるぜ、誰が来てるの?』



カウンターに向かいながら、小さく伸びをする。

うぉー、もう23:00か。ラストまで、今日ももう一踏ん張り。





「わんちゃんが来てんの。長話禁止よ」

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