ぼくらのかたち
ミヤノ
第1話
「お・そ・い」
不機嫌を隠そうともしない声で言った目の前の少年に
「
「ダメ」
「えー! なんで!」
「毎回待ち合わせの度に遅刻される俺の身にもなれよ。いい加減学習しろ」
「ううう……」
めちゃくちゃ正論すぎて反論出来ない。
確かにそうだけども。
せっかくのデートなのにこんな街中で説教モード全開にしなくてもいいと思う。
住んでいる家は隣同士だけれど、洸が高校を卒業して大学に進学してしまい、寮生活をしているから今までみたいに頻繁に会えなくなってしまった。
だから一生懸命おしゃれしたのに。
顔をくしゃりと歪ませて
こつん、と吹雪の頭を軽く叩く。
「ほら、行くぞ。映画はもういいから、先に
吹雪はぱっと顔を上げた。
「うん!」
本当は、分かっている。
まだ、吹雪と洸の関係は『幼なじみ』のままであることも。
洸から妹同然に思われていて1度も「好き」と言われたことがないのも。
知ってて気付かないふりをしている自分がいることも。
吹雪が来年高校を卒業するまでにもし、洸に好きな人が出来たら?
今こうやって付き合ってくれているのも幼なじみだからであって『恋人』じゃないから、もう一緒に歩けなくなる?
嫌だ、そんなの。
こんなことを考えたくないのにぐるぐる考えてしまう。
「吹雪?」
名前を呼ばれてはっとする。
「なんだよ、まだ
「なんでもない」
やめよう。今考えたって仕方ないんだから。
洸がちょっと
と、ぐいっと手を引かれて引っ張られる。
「あっ」
「ぶつかるぞ」
「ご、ごめんなさい」
握られた洸の手の力強さにびっくりする。
「気をつけろよ。おまえ、はぐれやすいんだから」
「う、ん……」
なんだろう。
なにか、いつもと違う?
ちらりと洸を見上げる。
いつもと同じ、いつもと変わらない横顔。
でも。
「……ね、洸ちゃん」
「ん?」
まだ繋がれたままの手はわざとなのか気付いてないのか。
洸と目が合った瞬間、自分の顔が真っ赤になるのが分かった。
「うや、な、なんでも、ない……」
「? なんだよ?」
「なんでもないの! 行こ!」
このまま、気付かれませんように。
恥ずかしくて顔が見れないとか、
手をもっと繋いでいたいとか、
洸を見ていつもよりどきどきが止まらないとか。
どうか、バレませんように。
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