12.『事態の急変』
メリナとアロエとの話を終わらせて、城へ帰った。無事、漢方薬も手に入り、メリナとも楽しく話ができた。
城へ帰ると、王の間で集会があると言われ、早々に駆けつけた。
どうやら、俺以外の勇者が街へ出かけて手に入った情報を共有しようとのことだ。
「それで、みんなどんな情報が手に入ったのかな?」
「S級犯罪者の情報はなかったけど、魔王軍の幹部の動きが怪しいだの、ますうきょう? ってのが城内に潜伏してるから国は動けないだの、そんなのが私たちの集めた情報」
「ますうきょうってのが新しく聴く単語なんですが、国王は何か知ってますか?」
いつもと同じく、俺等の考えをまとめてくれるのが大体アカリとリツだ。わかり易くまとめてくれ、代表的な立場だ。それにその方が俺等的にも楽でいい。
「
「その、ますうきょうってのはどういう組織なんですか?」
「魔崇教ってのは略称でフルネームは魔王軍崇拝教団。頭文字を取って魔崇教ってね」
国王が魔崇教について語り出した。
魔崇教、フルネームは魔王軍崇拝教団。
その実態は未だ不明で、どうして魔王軍に加担するのか不明。組織図は不明。創設者も不明。不明だらけの不気味な集団らしい。
以前、魔崇教の教徒らしき人物を何名か捕らえることに成功したが、全員不審死していたらしい。
そのため、何も情報を得られなかったのさとのことだ。
「そんな怪しさいっぱいの奇妙な奴らなんだ。アイツ等がこの戦況に加担している可能性は捨てきれない。有益な情報ありがとう」
国王がいつもの国王らしからぬ発言で調子が狂う。
「ところで、ユウヤくんはしっかりと漢方薬を貰ってきたかい?」
「ああ。あれホントすごいな。すぐに身体の痛みが消えたよ」
「そりゃ、あそこの店主、アロエは国でも一番の薬剤師だからね」
「アロエが国一番の薬剤師!? あれでか!?」
あのニート臭漂う髪型に露出度の高い服装をしたあのアロエが国でも重宝されるほどの人物だったとは驚くほかない。
「そう、あれでだよ」
「あ、国王もわかってんのね」
なにかと新しい情報が頭に入り込み過ぎて、インプットが遅れている。少し休憩したいものだ。
「さて、とりあえずはこの辺にしとこうか。みんな、しばらくは自由にしてていいよ」
そう言われ、俺は街中を散歩することにした。
※ ※ ※
三日後、自由にしてていいとは言われたが、王都の地図はまだ把握できていない。そのため、ふらふらと彷徨いていても何もすることがない。
魔法を覚えたのだから、師匠に見てもらいたいが、師匠は昏睡中。メリナも今は昼時で一層、忙しそうにしていた。
他の勇者たちも城に残ったり、魔法練習をしたり、街中を散歩したりしている。
なんだか、平和過ぎないか? 先日までの俺の戦闘が嘘のように平和なんだが? 平和過ぎて暇だよ。俺等の召喚された理由は魔王を倒すことだろ? なのに、こんな暇してていいのか? 幹部が近づいてんのにこんな悠長にしてていいのか? 幹部さん、早く来い。当初の頃のような活気を取り戻してくれ。
そんな勇者あるまじき考えをしていると、王都内の都市庁舎から緊急放送が流れた。
『緊急! 緊急! 魔王軍幹部が王都の壁付近まで接近! 至急、王都内の兵士、魔術師、騎士は収集に応じよ!』
女性の焦り声が王都内に響き渡り、周囲の人々もざわめき始めた。
「……フラグ回収、早過ぎね?」
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