9.5.『見通す者』
「やはり、倒れたか」
ミナスが立ち上がり、現状を確認する。倒れたユウヤにユウヤに駆け寄るメリナ。
そしてミナスはこのことを見越して、魔力を王都に帰れるくらいには残しておいた。ユウヤは魔力を残すことなんて考えないだろうと。そして保有魔力量が多いミナスは魔力を残すなんて簡単過ぎるほどであった。
「あ! ミナスさん! ユウヤさんは大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だ。魔力が切れて眠っただけだよ」
それを聞き、メリナは安心の息を漏らした。
「私はユウヤをおぶるから、メリナちゃんは荷物を持っててくれないか?」
「わかりました」
メリナがトテトテと歩き、ミナスの荷物を背負う。それと同時に王都への歩みを進める。
ミノタウロスなんてモンスターがなぜ、こんな辺鄙な森にいたんだ。アイツはダンジョンの奥地で潜んでいるボスモンスターだ。安易なことでは表に出てくることはない。
この近くにまで魔王軍の幹部が来ているということか……? それなら、早くラートルの奴に伝えた方がいいな。いっそのこと、ライドに行かせるか? アイツならやれるかもしれない。だが、この辺の土地を消されるのは困るな。
「あの、ミナスさん」
「ん、なんだ? メリナちゃん」
考え事の最中にメリナに話しかけられた。何かを伝えたそうにしている。
「ユウヤさんの師匠になったのは何故なんですか?」
「気になるか? 普通にコイツが無属性しか魔法が使えないから宮廷魔術師である私が直々に指導することになっただけだよ」
メリナは何か嬉しそうに顔を緩める。
「……メリナちゃん。君、ユウヤのことが好きなのか?」
「え!? いや、その…………はい」
メリナが頬を赤らめて答える。
「なんでわかったんですか?」
「私より先にユウヤに駆け寄ったからかな。まぁ、ハッキリとはわかってなかったよ。まさか、自分から自白してくるとは思わなかったけどね」
「……恥ずかしい」
メリナが手で顔面を覆い、その赤らめた顔を見せないようにする。
「まぁ、ユウヤには黙っておくよ」
多分だが、ユウヤもメリナちゃんのことが好きな気がする。両片思いの状態だな。それにメリナちゃんがお前を好いてるぞなんて言って、コイツがどんな反応とるかわからないしな。最悪、すぐ様襲うかもしれない。それに、この恋の行く末がどうなるのか見届けたい気もする。
「まぁ、この恋を叶える前に多くの困難に直面するだろうがな」
いずれはアイツとも戦うことになるんだろうな。その為にも私は私なりにコイツに教えられることは教えておかないとな。
ミナスは何かを見通すかのように夕暮れの空を見上げる。それは赤々と覆い尽くしており、この先に起こるであろう、激闘を表しているようであった。
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