ひんやりした おひめさま
ねなしぐさ はな娘
第1話 ヴィオレッタ、アイラブユー
幼なじみ
一般人と女優
ヴィオレッタは椿姫でしょ?
私はバイオレットよ。
スミレは匂いも大きさも華やかさも、椿には勝てないの。と、
それでも僕はオペラの登場人物なんか知識がないので、道に可愛らしく咲いてるスミレ、嫌いじゃないです。
だから僕のヴィオレッタ。
結婚してくれないかい?
ぼたりと。
何度目かのプロポーズは溶けたアイスと一緒に
コンクリートに落ちた。
あんた何回目よ。
私はあんたに似合わないわよ、諦めなさいな。
僕はしがない大学生、君はなんて云ったって女優だろ?
ねぇ、ヴィオレッタ、いや、ヴァイオレット。
また次の金曜日もここに来るよ。
すみれの花をもってね。
ねぇ、なぜ私なのかしら。
あなたは普通に生きれるの。
普通に幼少期をすごし、学生を経て、恋愛をし、
仕事をこなして結婚し、良い家庭を作り上げることが許される。
私の家にはお金がなかった。
でも私には美貌があった。
あなたと私は住む世界が違うの。
あなたはだから違う女性と幸せにおなりなさいな。
あなたを見ると自分が惨めに思えてくる。
貴方の手を取れば、
自分にも幸せになれる権利があるなんて
夢を抱いてしまうのよ。
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