ダンジョンで拾った少女は運命の女神でした。

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第1話 ダンジョンで拾った女の子

 冒険者が集う、クリスティアの街。

 その中でも一番の安宿で、僕は途方に暮れていた。


「どうしよう、ダンジョンで女の子を拾ってしまった……」


 ダンジョンというのは、この世界を創造した神が人々に与えた試練だ。そして試練を乗り越えるため、祝福という特殊な能力を授けている。

 ダンジョンの攻略は容易く人の命を奪うほど過酷なんだけれど、代わりにありとあらゆる資源を生み出し、国や人を富ませてきた。


「だけどまさか、ダンジョンで女の子を拾うことになるとは……」


 それも僕みたいな弱小冒険者が、である。


 神様から貰った祝福も冒険向きじゃないし、一緒にダンジョンへ行ってくれる仲間も居ない。毎日をぎりぎりの生活で凌いでいるぐらいなのだ。


 とてもじゃないけど今の僕には、他人を世話できる余裕なんか無かった。


「かといって、今さらダンジョンに戻してくるなんて真似はできないしなぁ」


 簡素なベッドの上には白いワンピースを着た、僕と同じ十六歳ぐらいの女の子がスヤスヤと眠っている。


 彼女はダンジョン内にある小部屋の床に倒れていたのを、偶然通り掛かった僕が発見したのだ。

 どうしてそんなところで寝ていたのかは分からないけれど、モンスターがあちこちに跋扈ばっこするような場所に置いてけぼりなんて出来なかった。

 

「仕方ない、衛兵に頼るのは嫌だったんだけど。人の命がかかっているしね」


 特に怪我もしていないみたいだけど僕は医者じゃないし、何かあったら大変だ。

 街の衛兵だったら面倒をみてくれるし、診療所にも連れていくだろう。


 「でもこの子、服装こそみすぼらしいけど中々美人だな……うわあっ!?」


 僕が不躾にジロジロと彼女の顔を眺めていたら、突然女の子が起き上がった。

 マズい、これじゃ僕が彼女に何か変なことをしようとしたみたいじゃないか!


「す、すまない。僕はただ、キミの様子を見ていただけで……」


 見苦しい言い訳にしか聞こえないだろうけど、弁明しないわけにもいかない。

 顔色を窺いながら話し掛けてみる。……でも、彼女は視線を彷徨わせるばかり。


「……ここはどこ?」

「えっ?」


 起きたはずなのに、彼女は目を開けずに僕へそう尋ねた。


「……す、すみません。貴方はどちらさまですか?」


 あれ?

 僕の事が見えて、いない……?

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