七百八十七話 一種の凶器
「ぃよっしゃ~~~~!!!!! 戦るぞ~~~~~~~っ!!!!!!」
ウィラーナに到着してから四日後、雪上での行動にある程度慣れた三人。
慣れる為の訓練期間が終わり、今日からようやく本格的に狩りを行う。
「ガルーレはいつも元気だね~~」
「アマゾネスっていう種族上、闘争心がない時はないんじゃないか?」
アラッドはアラッドて楽しみに思っている部分はあるが、ガルーレほど爆発はしてない。
「二人とも、早く行こうよ!!!」
「落ち着け、ガルーレ。獲物はそう簡単に消えないから」
丁度寒い時期と被るということもあり、雪……もしくは氷属性を持つモンスターにとっては、寧ろ狩り時。
ガルーレから仕掛けずとも、モンスターから仕掛けてくる可能性は十分にある。
「良い得物は他の冒険者たちに奪われちゃうかもしれないでしょ」
「それは…………どうだろうな。依頼を受けてる冒険者ならともかく、そもそも俺たちみたいに明確な目的を持たず、ぶらぶらと散策しながら狩りをしようとしてるパーティーは珍しいだろうかな」
「ふ~~~~ん……なんで?」
「寒さを完全に防ぐことが出来るマジックアイテムや服を持ってるなら別かもしれないが、寒さという一種の凶器が常に付きまとっている状態だからな……慣れてる人でも、必要以上に街の外には出たくない筈だ」
雪上、雪国での生活に関して経験値は低いものの、前世の記憶や感覚はまだ消えておらず、熱い真夏の日はクーラーの効いた涼しい部屋から出たくない……寒い真冬の日はまず起きたら温いベッドから出たくない。
そういった感覚は覚えている為、ある程度の事情は把握していた。
「体を動かせば、自然と暖まるじゃん」
「四六時中体を動かしてたら、さすがに目的を達成する前に体力が尽きてしまうだろ」
「それは……確かにそうね」
「そういう事だ。それに、いつ雪が降って……吹雪に変わるか分からない。俺たちにはいざとなったらクロやファルがいるからなんとかなるが、他の冒険者たちはそうはいかない」
アラッドに頼られているとなんとなく把握した二体は、得意げな表情を浮かべていた。
「強さだけじゃ、どうしようもない状況もある」
「……………アラッドってさ、そういう知識、どこで得てるの?」
何度も説明されてきたこともあり、本当に雪原を雪を……そういった環境を嘗めてはいけないということは解った。
しかし、アラッドにはただ知っているか、ということ以外にも別の説得力があった。
「どこって……適当に情報を集めただけだ」
嘘である。
前世、ある程度都会と呼べる場所に住んでいたアラッド(英二)は体験したことはない。
ただ……情報は無数にネットという場所に載っていた。
「それにしては、妙に説得力があるのよね~~~……その顔のせい?」
「顔って……ふふ、まぁそうかもしれないな」
もう自分の強面ぶりには納得しているため、特にツッコまなかった。
「ねぇ、どうやら獲物が向こうから来てくれたみたいだよ」
「だな……一応クロやファルもいるのに、随分勇敢だな」
三人の前に現れたモンスターは……雪原に適応したウサギ、スノーラビット。
ランクはDと、ウサギ系モンスターの中では高く、体の大きさも割とバカに出来ない。
「数は十体みたいね」
「なるほど。十体もいれば気も大きくなる、かっ!!!」
スノーラビットたちはバラけながらも、統率の取れた動きで迫り、アラッドたちを思いっきりかじろうとする。
(……これだけ大きいと、割と可愛くないな)
アラッドがこれまで遭遇してきたウサギ系モンスターの中では一番大きく、これまで出会ってきた個体には割とウサギ特有の可愛さがあったのだが……目の前の迫りくるスノーラビットにはあまり可愛味を感じなかった。
「ホーンラビットがこれぐらいの大きさだたらと思うと、それなりに恐ろしそうだな」
数は十体と多かったが、雪の上と言えどDランクモンスター。
今現在雪は降っておらず、敵の姿を見失ってしまうといったアクシデントもなく、雪上での初戦闘は無事に終了。
三人共ダメージを負うことなく討伐に成功したが、それでも雪上での戦いに僅かながら戦り辛さを感じていた。
「解ってはいたけど、雪の上だから相手が動く度に雪が跳ねるわね」
「そうだな……眼で見るよりも、気配を感知して戦うことを要点にして戦った方が良い場合もあるだろうな」
「立体感知ってスキルよね」
以前、アラッドから教えてもらったスキルを思い出すガルーレ。
(確かに立体感知を会得したら、視界が封じられても相手に動きを正確に把握出来る……のよね? となると、今回の冒険での私の課題は、立体感知を会得して使いこなす事、ね)
そういったスキルがある、と教えてもらっただけで会得出来るほどスキルの会得は簡単ではない。
ガルーレは冒険者全体で見ればセンスが高い方ではあるが、見ただけ聞いただけでスキルが会得出来るほど圧倒的なまでのセンスは持ち合わせていない。
だが、いざという時に視界に頼らずとも正確に相手の姿を把握出来るというのは、接近戦メインで戦うガルーレにとって是非とも会得したいスキル。
(……なんか、若干気温が上がったか?)
思わずアラッドがそう思う程、ガルーレは新スキルの会得に熱を燃やしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます