六百九十八話 必須な条件
「アラッドさんやフローレンスさんみたいな学生はそうそういないから、単純に学生枠の戦いは五分五分だと向こうは考えているのかもしれないね」
「五分五分かぁ……そうだな。そう思うのが普通だろうな」
アラッドからすれば、五分五分と考えているのもおかしいと思える。
何故なら……アッシュというイレギュラーの前に、学生枠にはレイというぶっ飛んだ肉体の強度、高い身体能力を持つ令嬢戦士がいる。
(一年生ながら、トーナメントで二年生や三年生を蹴散らして上に上がったんだが……その時の情報すら得てないのか? それとも、力をどうにか出来る技術力の高い学生を選んでるのか? ぶっちゃけた話、それだけでレイ嬢の力は同行できるものじゃないと思うんだがな)
久しぶりに母校に戻った時、アラッドは当然……レイとも模擬戦を行った。
何度も行った模擬戦は全てアラッドが勝利したものの、身体能力だけではなく技術力、魔力操作など全ての面で向上していた。
(それに……何か、隠してる気がするんだよな。俺の直感が当たってたら、アッシュじゃなくてもレイ嬢が代表として参加しても良かったと思うが……まっ、何か考えがあるんだろうな)
そもそもアラッドの直感が当たってるかどうか解らないところなのだが、アラッドはレイが何かを隠していると確信していた。
「ねぇねぇ、それじゃあアラッドに対しては、どんな人をぶつけるつもりなんだろうね!!!」
「「「………………」」」
ガルーレの言葉に、スティームとフローレンス、アッシュは真剣に考え込むも……直ぐにこれだという予想が思い浮かばない。
(本当に、ナルターク王国でも飛び抜けた若手冒険者が選ばれる……それは間違いない。でも、飛び抜けた人であってもアラッドに勝てる人ってなると…………もしかして、アラッドとの戦いを捨ててる?)
(ウィリスがクロは確実に自分よりも強いと言っていた。アラッドが自分の力だけで戦うことを好むのは知っていますが、総合的な実力はクロを含めた戦闘力……それを考えると、やはりアラッドやスティームさんのような従魔を持つ方でしょうか?)
(アラッド兄さんに勝てる人……贔屓目でも同年代、ニ十歳以下で勝てる人はいないと思うな。そう考えると、良い戦いが出来ると人になるよね。それだと……アラッド兄さんだけと考えるのを想定してる場合、通常の身体強化や部分強化スキルだけじゃない強化スキルを有してる人……アラッド兄さんとクロの二人に勝つ場合は、そこに従魔が必要になってくるけど………………)
考える。
考えて考えて考えるが……渡り合うための条件を上げれば上げていくほど、本当にそんな人物はアラッド以外にいるのかと疑いたくなる。
「……強力な武器を、特別な武器を持ってる人かな」
「強力な武器って言うと、アラッドが持ってる渦雷や迅罰、スティームが持ってる万雷みたいな?」
「そんなところかな。後は何かに特化した武器っていう可能性もありそうかな」
「何かって言うと…………やっぱり身体強化?」
「その可能性が高そうだね」
「ガルーレさんの言う通りですね。本気のアラッドと戦うのであれば、まずそこに差がないことが重要です」
身体能力。
アラッドのどこが危険かと問われれば、スティームやガルーレ、フローレンスたちは多数の武器を思い出せるが……一番厄介な点は同年代の者たちを置き去りにしており、更に強化系のスキルを重複発動した際に辿り着く領域。
対戦相手は、まずその領域に到達出来るかが重要である。
「……個人的な感想なんですけど、あまりそういった強力な魔剣、もしくはマジックアイテムでガチガチに固めてる人が代表に選ばれるのでしょうか」
アラッドも超高価で高性能な武器を有している。
それは間違いないのだが、アラッドは武器を有していなくても強い。
大前提としてそこがあるため、強力な武器を装備すれば、まさに鬼に金棒になる。
「強力な装備を抜きにした強さを有しているとなると、人族ではないという場合もありそうだね」
「その国で一番の若手冒険者となると、十分に可能性はあり得るでしょう」
「アラッドの身体能力に対抗するってなると、獣人族か竜人族……鬼人族とか、そこらへん?」
まずは身体能力で同レベル、もしくはそれに近いレベルでなければならないという認識は全員同じだった。
(獣人族……オルフェン君は特別というか特例? なんだろうけど、獣心の解放が出来る人であれば、身体能力面ではアラッドに追い付けるかな)
アラッド対若手冒険者十人の連戦はスティームも観ていたため、獣心の解放を行った者の強さはある程度把握していた。
「肉体的な強さは、その三種族がアラッドの身体能力に釣り合うでしょう。ですが、そこに確かな技術力が無ければ、手玉に取られるだけです」
相変わらずアラッドに対する評価は高く、褒め言葉もストレートなフローレンス。
その後もアラッドを褒める言葉と一緒に対戦相手の可能性を口にしていくが、結局これといった予想が思い浮かぶことはなかった。
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