五百五十八話 まだまだホットな話題
(これはまた……内装にも金が掛かっているな)
クランのトップであるハリスはあまり好みではないが、Aランク冒険者がトップのクランという事もあり、侯爵家出身のアラッドから見ても内装はかなり凝ってあると感じた。
「おい、誰だあの二人」
「新しい加入者かしら?」
「あの二人……この前、Cランクの奴らから一緒に依頼を受けないかって誘われて、真正面から断った二人じゃないか?」
「Cランク冒険者からの誘いを真正面から断るってことは、同じランクかもしくは一つ上……いや、Cランクはよっぽどな理由がない限り、Bランクの冒険者を誘おうなんてしないか」
「あ、あの二人って、もしかして……」
ロビーで好きな様に過ごしていた冒険者たちの中に、二人の外見だけで誰なのか察したルーキーが一人。
「ん? お前あいつらの事知ってるのか?」
「た、多分ですけど……あの二人は、アラッドとスティームです」
「アラッドとスティームって言うと……ッ!!!??? あのアラッドとスティームかっ!!!!」
アラッドはアラッドと単体としてそれなりに有名なエピソードを持っているが、最近ではアラッドとスティームのセットで冒険者界隈では有名。
特に、二人と二体で雷獣を倒したエピソードは、未だ冒険者たちの中で熱い話題である。
「アラッドとスティームって、雷獣を倒したっていうあの?」
「噂じゃ、もっと体格がゴツイって聞いてたけど……まぁ、雷獣を倒せるぐらいのレベルになると、そういうのは関係無ぇからな」
ルーキーたちはそれらの噂に対して半信半疑であるものの、ある程度雰囲気や身に纏う空気だけで実力を察する事が出来るベテラン達は……何かの間違いであの二人が緑焔に入ってくれたらな~~と考えていた。
「失礼します。アラッドさんとスティームさんをお連れしました」
「ありがとう。さぁ、二人ともソファーに座ってくれ」
言われた通り、超高級品のソファーに腰を下ろすと、秘書係であり女性が紅茶を淹れ始めた。
「話と言うのは、やはり木竜に関わることかな」
「おそらく、関わっているかと。実は、サンディラの樹海を探索している時に、クロが……従魔のデルドウルフが、不自然に匂いが消えている場所を発見したんです」
「それは興味深い話だね」
過去に自身が関わった一件にも同じ様なケースがあると伝えられ、まだサンディラの樹海に木竜に絡んだ輩がいるのでは、という信憑性がハリスの中で高まる。
「そんな事があったんだね……もし、木竜の一件が関わっている連中がまだサンディラの樹海に居るのであれば、木竜が住処にしていた場所、もしくはサンディラの樹海で何かしら大胆な行動を起こそうとしている者たちを殺すつもりということかな」
「匂いを消して移動しているぐらいですから、行動時は姿を消してるかもしれませんね」
「全く……そんなに私たちやここの領主に嫌がらせをしたいみたいだね」
木竜が逆鱗状態となれば、ジルバが壊滅することは目に見えているため、アルバース王国に敵意を持っている者たちが行動しているのであれば……そこまで本気になるのは、至極当然と言えるかもしれない。
「……まぁ、俺たちがいるのでジルバや他の街が潰れることはないと思いますが、嫌がらせをしてる連中が最悪のタイミングで出てきたとしても、何とかしてみせます」
「ふふ、本当の頼もしい自信だね。探る様になってしまうけど、それ程までに自信満々な奥の手を持っている、ということで良いのかな」
「そうですね……緊急時には、その手で何とか出来る自信はあります」
その奥の手はアラッドの力……だけではなく、従魔のクロとの力あってこその奥の手。
自信満々な奥の手ではあるものの、アラッドとしては使わなくて済むのであれば使いたくない手ではある。
「そうか。では、頼りにさせてもらうよ。とはいえ、この街を拠点にするクランとしては、君たちばかりに頼ってはいられないけどね」
そこから紅茶とお菓子を飲みながら会話を楽しみ、解散。
この後、ハリスは木竜の住処付近で活動しているメンバーたちにアラッドたちから教えられた一件を伝え、奇襲には気を付けるようにと強く伝えた。
「なぁ、スティーム……連中が、木竜の住処に近づく以外の冒険者を殺す場合、どういう行動を取ってる冒険者を殺すと思う」
「……真面目な質問だよね」
「あぁ、真面目な質問だ」
偶にバカな話もするため、一応確認を取ったスティーム。
十秒ほど考え、一つの可能性が浮かぶ。
「木竜が本当に戻ってきた場合、好き勝手暴れてた筈の高ランクモンスターがいなかったら、そもそも木竜の怒り……もしくは逆鱗に触れないんじゃないかな」
「怒りの生まれようがない、か……まぁ、そいつらが木竜の住処を荒らさず、今のところそれ以外の場所だけで暴れてるのであれば、無駄な争いをせずに済みそうだな」
スティームの考えに、自分たち以外にもハリスなどの強者がいるのであれば、実現は不可能ではないという結論に至った。
(とはいえ、それはそれで同業者たちに後々迷惑を掛けそうな気がするが……うん? なんだあいつらは)
妨害される可能性があれど、悪くない対処法だと思っていると、二人の進路を塞ぐように数人の冒険者たちが立っていた。
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