四百二十二話 面白いから止めない
「お前ら! なんてことやってんだ!!!!!」
今現在……アラッドの目の前で、非常に面白い光景が繰り広げられていた。
墓荒しの黒幕を倒し、男としての童貞を捨ててから、速攻でマジリストンから出ることはなく、依頼を受けつつ買い物したりといったごく普通の生活を送っていた。
相変わらず魔法学園の方から臨時教師の依頼が届くが、全て無視している。
学園長はアラッドの興味が向く様な鉱石まで報酬に追加したようだが、結局興味が向けられることはなかった。
全て含めればどう考えても赤字……といった額まで報酬金額が上がっているが、まだまだ学園長は諦めていない。
そんな学園長の熱意を華麗にスルーしていると、街中を散策しているアラッドの視界に、見覚えがある二人と見覚えがない数人が入った。
(あの二人は……)
そう、見覚えがある二人というのは、マジットに対してタメ口を使い、親し気な雰囲気のアラッドにリンチ(仮)を行おうとして、逆に金貨二枚を失った学生。
マジット信者である学生二人と、もう数人の学生とバッチリ目が合う。
アラッドとしては、先日のリンチ(仮)では金貨二十枚ほど楽して手に入れたため、街中でメンチ切るような因縁はない。
向こうとしても、過去にリンチ(仮)を行い……今やマジリストン内で英雄に近い扱いを受けているアラッドと、あまり関わりたくなかった。
「あ、あの!! もしかしてアラッドさんですか!!??」
「お、おぅ。アラッドであってるけど」
さりげなくお互いに無視しようとしたところで、一人の学生がダッシュで詰め寄り、声をかけてきた。
少々ダーク寄りなイケメンフェイスを持ち、クロというウルフ系の従魔を連れている。
アラッドの情報を多少なりとも知る者であれば、それらの見た目だけで本人だと気付いてもおかしくない。
「あ、握手してもらっても良いですか!!!」
「あぁ、構わないよ」
年齢は興奮状態の男子学生の方が一つ上だが、完全に敬語状態。
そこを指摘するのはやや面倒だと思い、放置。
男子学生は魔法には勿論興味を持っているが、錬金術に関しても同等の興味、関心を持っている。
そのため、彼にとってアラッドは絶対に敬語を使わなければならない、雲の上の存在。
そこでアラッドは会話の一環として、気まずそうな状態で付いてきた二人との関係についても話した。
勿論、リンチ(仮)の詳しい内容は話さず、一度模擬戦を行ったことがある。
基本的にはそれだけしか話していないが……他の冒険者たちも一緒に、という内容を追加してしまったのが良くなかった。
「お前ら、もしかして……」
男子学生にとって、確かにマジットはカッコ良さを兼ね備えた美人であり、非常に自分たちに対して親身になって色々と戦闘関連を教えてくれる……まさに理想の教師。
当然、尊敬に値する人物である。
ただ……将来は錬金術師として活動するのもありだと思っている男子学生にとって、尊敬の優先順位は……キャバリオンという新たなマジックアイテムを造り出した一種の神、アラッドの方が上だった。
そして二人が自分よりもマジットに敬意を持っており……やや盲信状態に近いと知っている男子学生は、二人を問い詰めた。
そこで沈黙を貫かず、適当な良い訳でもすればまだ地獄は訪れなかったのだが、そこで若さゆえの対応力不足が現れた。
二人が同じやや盲信状態に近い冒険者と何をしたのか正確に知った男子学生は、周囲に通行人がいる状態でありながら、二人に対して公開説教を始めた。
二人に対して「そこに座れ!!!!」と怒号を飛ばす背中に、起こられていないアラッドも僅かながら寒気を感じた。
「な、なぁ。もうそいつがどれだけ凄いかは分かったから……」
「アラッド様だ馬鹿野郎!!! まだ全然解ってないだろ!!!!!」
呼び方を間違えてしまい、説教内容が一周。
リンチ(仮)を行った二人は、一時間近くその場で同級生から説教を食らい続け、メンタルが塵と化した。
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