三百九十五話 不得意ではない
(なんだ? 二人……いや、三人か。どう考えても俺を狙ってるよな)
美味い飯をたらふく食べただけであり、今回は酒を呑んでいないこともあり、気配感知に不備はない。
アラッドが感じ取った通り、狙う人物が三人いる。
(誰だ……もしかして、マジットさんたちの信者たちか?)
自分を狙う、一番それらしい人物たちが脳裏に浮かぶ。
しかし、直ぐにそれはないだろうと思い、頭を横に振って考えを掻き消した。
前回の一件で、自身の力に自信があるルーキーや、外部の人間はアラッドに完敗を喫した。
勝ち続ければ合計で金貨二十枚以上を貰えるルールだったとはいえ、リンチ(仮)であることに変わりはない。
一応、その話に関しては、詳しい内容はマジットの耳には入っていない。
それでも彼らがアラッドと一緒に街を出たという情報に関しては手に入れてるため、内心どう思われているかは……定かではない。
(堂々と勝負を挑んでくるならまだしも、闇討ちなんてしてこない……よな?)
ギルの様な考え無しのスーパーアホ野郎ではない。
だが、やった事が中々な内容であることに変わりはないため、アラッドが多少疑ってしまうのも無理はない。
(……あいつらじゃないなら、裏の連中か)
誘拐、殺人などの仕事をこなす、裏の住人。
彼らであれば、誰かしらの依頼で自分の命を狙ってもおかしくない。
アラッドは冷静にそう判断したが、よくよく過去を振り返ってみると……最近、金や権力を持つ者から恨みを買った覚えがない。
(誰だ? ここ最近は全く身に覚えがないんだが……まぁ、襲って来ないのであれば放っておくか)
直接襲って来ないのであれば、放っておく。
そう決めた数分後、丁度アラッドの周囲に誰もいなくなった瞬間……影が動いた。
「ったく、街中で……しかも、こういう場所で襲ってくるのは止めてもらいたいな」
毒付き短剣をあっさりと躱し、仕方なくクロと共に、更に人気がない場所へ移動。
「とりあえず聞くが、誰からの命令だ?」
「……」
アラッドからの問いに応えることはなく、身体強化系のスキルを使用しながら、全力で殺しに掛かる三人。
捕らえる、という考えは一切ない。
容赦なく毒を使い、急所を狙って仕留めに掛かる。
誰かから依頼を受けたのであれば当然かもしれないが、クロという詳しい情報を知れば震え上がる存在に対しても、臆することなく果敢に攻める。
(答える気はない、か。当然と言えば当然だが答えるつもりは一切ないみたいだな)
三人の実力は奇襲、暗殺に特化したCランク冒険者レベル。
暗がりで広くない場所の戦闘に限れば、彼らの庭という事もあり、非常に厄介で対応し辛い相手。
しかし、そういった場での戦いが苦手ではないアラッドは、三分もしない内に三人を捉えることに成功した。
「ぐっ……」
「こ、これは」
「体、が」
「まだ喋れる余裕があるのか」
「「「っ!?」」」
三人程度の戦力ではアラッドを、クロを倒すのは不可能。
得意な戦場に連れ込めば勝率を上げられる、なんて簡単な話が通じる相手ではない。
加えて、奇襲や搦手が得意なのは三人だけではない。
「よし、それじゃ……誰に俺の殺害を頼まれたのか、吐いてもらおうか」
アラッドが発する圧に僅かな恐怖を感じるも、答えるわけがない。
裏の人間は表の戦闘者以上に口が堅い。
そんな事は解りきっているため、即座に尋問へ移る。
「「「がっ!!!???」」」
「お前らの立場を考えれば、依頼者の情報を漏らさないというのは、仕事の一つだ。それを忠実に実行するのは……敵ながら天晴れ、と言うべきかもな」
何が何でも口を割るつもりはない。
そんな彼らの精神を褒めるも、容赦なく尋問が行われる。
「でも、俺としては自殺も出来ないんだから、さっさと諦めてはいて欲しいところなんだ」
マリオネットによって体の自由を奪い、体内に極細の糸を侵入させているため、体内からじわじわと破壊が行われる。
その結果、アラッドが仕方なしとポーションを使う前に、三人は知っている情報について吐いた。
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