三百三十七話 ストレス解消
「クロ、見張り頼んだ」
「ワゥ!!」
あっさりと受けた依頼を達成し、解体に移るアラッド。
(……そういえば、猿って脳ミソ食べれるんだっけ?)
前世の知識を思い出したが……さすがに無理だと思い、頭から掻き消した。
だが、この世界でも猿の脳ミソを食べる者たちはおり、珍味として一部の貴族も食している。
(さすがに食べる気が起きないけど、どうせなら顔面じゃなくて、心臓を潰せば良かったな)
今までその辺りを気にせず、主に拳を顔面にめり込ませていた。
マリオネットの練度も徐々に向上しており、短時間ではあるが、操った相手の魔力まで使用できるようになっていた。
なので、拳に纏う魔力の量を弄れば、それだけ攻撃を上げた自爆を実行させることが出来る。
「よし、終わり……あっさりと終わったな」
解ってはいたが、予想よりも早く終わってしまった。
時間的に、昼食を食べるには少々早い。
「クロ、見張りありがとな」
「ワゥ」
「ところで、腹の減り加減が大丈夫なら、俺と模擬戦しないか?」
「っ! ワゥ!!!」
「よし、やるか」
そこら辺に落ちていた木で地面に円を描き、二人は距離を取って構えた。
「いくぞ!!」
その声が開始の合図となり、二人はその場から駆け出し、互いの武器を繰り出す。
無属性の魔力と、身体強化のスキルだけは使用可。
それがアラッドとクロの、模擬戦を行う上でのルールだった。
(やっぱり、こうやって発散させてやらないとな!!!!)
現在、クロはAランクのモンスターであり、得た力の扱いにもかなり慣れている。
その力の一部を使い……アラッドと共に、とんでもない手札を生み出してしまった。
勿論、一部の能力だけが優れている訳ではなく、身体能力もその巨体に見合うものを持つ。
「良いぞ! ギア上げてくぞ!!!」
主人の声と共に、スピードを上げてくクロ。
まだまだマックスまで力を使っていないクロ……だからこそ、中々真剣勝負で満足する戦いを体験できない。
ブラックウルフの時であれば別だったが、Aランクモンスターとなった今、そこら辺の敵との戦いでは絶対に満足できない。
先日アラッドと共に戦ったフローレンス・カルロストや、光の人型精霊のウィリスとのバトルは非常に楽しめたが、あれほどの戦いはそうそう体験できないのが現実。
「っ……ふぅ~~、まいった。俺の負けだ」
「ワゥ!」
当たり前だが、使える手札が無属性の魔力と身体強化のみとなると、アラッドはクロに勝てない。
良い勝負まではいくが、今までアラッドが勝てたのはほんの数回だけ。
「もっとお前といい勝負が出来るようにならないとな」
こうしてクロのストレスを消化した後、朝食を食べ終えてから……既に仕事は終えているが、適当に歩き回り、遭遇したモンスターをボコボコにし、解体し続けた。
そして帰りはクロの背中になって帰り、ギルドへ一直線。
ギルドの中に入ったアラッドに、再び視線が集まる。
それらを気にすることなく、依頼達成を報告する為の列に並ぶ。
「バンデッドモンキーの討伐証明部位です」
「……はい、確かに」
必要な数だけ討伐証明部位を見せ、依頼達成の手続きが行われる。
この時、アラッドが亜空間の中からバンデッドモンキーの耳を取り出したことに、周囲の冒険者たちはざわめいた。
そんな冒険者たちの反応など気にせず、次は素材買取の列へと並ぶ。
「お願いします」
「か、かしこまりました!! 少々お待ちください」
「はい」
バンデッドモンキー以外の素材もカウンターの上に提出。
午前中にクロが轢いてしまったモンスターは放置していたが、午後に倒したモンスターは全て解体しているので、それなりの数になっていた。
「こちらが買取金額になります」
「ありがとうございます」
丁寧に素材を傷付けずに解体出来ていたこともあり、報酬金も含めてそれなりの額をゲット。
(あら、やっぱり絡んでくるか)
クロの元に向かおうとしていたアラッドに、一つのパーティーが立ちふさがった。
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