二百六十二話 いつになったら見れるのか?

パロスト学園への入学が決まってから約二か月後……学園から制服も届き、アラッドとシルフィー、アッシュの三人はいよいよ学園へと向かう。


ちなみに、年齢が十五歳を超えたバークたちはアラッドより一足先に冒険者として活動を始め、しばらくは何処かの街に向かわず活動を行う。


ただし……冒険者として活動し始めたので、家からは出てしっかり四人で自立していかなければならない。

とはいえ、四人の実力は既にそこら辺のルーキーよりも優れており、バランスも良い。


旅立ちに祝いとして、アラッドがリンにバークとダイア、アミットの武器制作を頼み、アラッドは自作の杖をアミットとエレナに送った。


いつか機会があれば、一緒に依頼を受けようと誓い合い、アラッドは拠点を王都に移す。


エリナたちは屋敷に残ってこれからも生活を送るが、クロだけはアラッドの従魔として学園に連れていく。

これに関してはパロスト学園の方が了承している。


過去にはワイバーンの従魔を連れている学生もいたので、アラッドが初めての特例という訳ではない。


「シルフィー、あんまり男子たちを虐めてやるなよ」


「……それは向こうの態度によります」


アラッドの言葉にシルフィーは即答できなかった。


(シルフィーが男子を虐めないなんてこと、多分ないだろうな)


シルフィーの隣でフールと一緒にリバーシを行っているアッシュは、今まで何度もシルフィーと一緒に社交界に参加している。


シルフィーは元々整った顔を持ち、基本的に誰にでも分け隔てなく接する。

異性としては、敵うならば恋人に……妻にと願ってしまう有望株。


侯爵家の娘ということもあり、令息たち以外にもその親たちまでもが自分の息子の嫁に!!! と、願う者が多い。


しかし、シルフィーは過去に何度か社交場で同じ歳の令息を、数回叩きのめしてしまっている。

勿論原因は絡んできた令息にある。


とはいえ、シルフィーもアラッドと同様に面倒な絡みに対し……一度やると決めれば、容赦はしない。


「アラッド……シルフィーの花嫁姿は見れると思いますか?」


「そうですね……いや、俺としても見たいとは思いますけど……」


学園の入学式に参加する為、今回はフールだけではなくエリアやアリサも同行している。


「はぁ~~~、強気なところまでルリナに似てしまって……娘の花嫁姿は見れないのかしら」


パーシブル家の長女であるルリナはシルフィーと違い、クールな美人というイメージを持たれることが多い。

そのイメージ自体は間違っていないが、それでもシルフィーと似て強気な部分はある。


学園に在籍している時も、自惚れ坊ちゃまたちを何人も沈めてきた。


(エリア母さんとしては、やっぱりルリナ姉さんやシルフィーの花嫁姿は見たいよな……逆に父さんはあんまり強く願ってないか?)


娘の父親あるある的に、あまりフールはルリナやシルフィーの結婚を望んでいない?


僅かにそう思ったアラッドだが、チラッと見たフールの表情……それを確認し、望んでいないかもしれないという考えは消えた。


(かなり渋い顔してたな)


フールとしても、二人には早いうちに家庭に入り、幸せになって欲しいという思いがあった。


「エリアさん、二人ともそこら辺の男より強いんだから、下手な男は寄ってこない。そこが最大のメリットだと思えば良いじゃない。ルリナとシルフィーの旦那さんなら、やっぱりへなちょこな令息なんかじゃなくて、頼もしい人の方が安心出来るでしょ」


「それはそうかもしれないけど……でも、やっぱり心配なのよ」


アリサが言いたいことは良く解る。


しかし、エリアにとってはそもそも結婚出来るのか……好きな人が見つかる云々の前に、根本的な部分が心配だった。


(そのうち良い人はどこかで見つかると思うけどな……)


エリアの気持ちを察したアラッドはそんな事を思いながらも……確信出来ないという気持ちは残っていたので、口には出さなかった。

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