百八十八話 成長している
翌日、アラッドたちは変わらず街の外に出て手頃のモンスターを探し、全て仕留めていた。
(……分かってはいたけど、やっぱり身体能力が凄いな)
現在、アラッドの目の前ではレイ嬢がゴブリンを相手に素手で戦っていた。
先日アラッドにメインの武器以外に、どんな武器を扱えるようになれば良いかと問い、自分を求めているのか、それが重要だと言われた。
そして自分が何を求めているのか……今はまだしっかりと分からなかった。
だが、とりあえず武器が手元から飛んでいってしまった時に、戦える方法があった方が良いという発想に至った。
貴族の血統なので、レイ嬢もそれなりに魔法は使える。
ただ、アラッドの様に詠唱なしでバンバン放てるほど、まだ腕は高くない。
というわけで、一先ず素手で戦える様になろうと思い、現在手頃なモンスターであるゴブリン達を素手でボコボコにしている。
(同じ歳の男子でも……あそこまで軽くボコボコに出来るか?)
背丈は大して変わらないが、それでもモンスターということに変わりはない。
しかしレイ嬢は複数で襲って来るゴブリンに臆することなく、冷静に拳と蹴りを叩きこむ。
その一撃一撃がゴブリンにとって必殺となり、ほぼ一撃で沈んでいく。
攻撃を放てば即座にその場から移動し、死角から襲って来ようとするゴブリンの攻撃を全て躱し、シーリアの手助けは一切必要ない状態。
「ふぅーーーー……ゴブリンでは自分が上手く戦えたか、いまひとつ分からないな」
「そんなことありませんよ。先日よりも複数の敵と上手く戦えてたかと」
「そうか? アラッドにそう言ってもらえると嬉しいが……だが、中々体術で戦うのは慣れないな」
元々体術の訓練は行っておらず、見様見真似で蹴りやパンチを放っていた。
(今までロングソードばかり訓練を行ってたって考えると、十分に上出来だと思うんだが……まっ、向上心があるのは良いことだよな)
「そこら辺は積み重ねですからね……次は、俺が戦いましょう」
ゴブリンの血の匂いに釣られ、一体のモンスターが現れた。
現れたモンスターはフォレストモンキー。
Dランクのモンスターであり、基本的には引っ掻きや咬みつき、偶に尾を使って攻撃するが、木魔法による遠距離攻撃も行える厄介者。
(フォレストモンキーが一体は珍しいな。本来は複数で行動するモンスターなんだが……まっ、こっちとしては好都合で有難い)
既にフォレストモンキーは一歩前に出てきたアラッドを敵と認定し、ウッドアローの詠唱を始めていたが、高速詠唱でもない限り……発動することは不可能。
「よっと」
「ウギっ!?」
そこら辺に落ちていた石ころを投げ、放たれた石ころはフォレストモンキーの腹に命中。
投擲によって詠唱は中断され、それがフォレストモンキーの怒りに触れ……一目で怒っていると解る表情でアラッドに襲い掛かった。
「よっ、ほっ」
「っ!?」
降りかかる右手を左手で払い、正拳を腹にぶち込む。
強化系のスキルは一切使っていないが、それでもきっちり腰を捻り、脚も移動して重さが乗った正拳を放った。
中々思い一撃だったこともあり、確実に骨に罅は入っていた。
(やべっ、結構良いのが入った気が……あっ、まだ大丈夫そうだな。良かった)
レイ嬢に手本を見せようと思い、フォレストモンキーは人型なので丁度良い相手。
適度に距離を詰め、木魔法を一切使わせない。
そうなれば、フォレストモンキーは必然的に接近戦を行うしかない。
手に脚、尾を使って全力で攻撃を行うが、アラッドは最初と同じくフォレストモンキーの攻撃は手か脚で弾き、打撃を与える。
(フォレストモンキーとはいえ、あそこまで綺麗に対処するか……これは、武道家としても一流の域まで登るのは確実だな)
バイアードは体術に関して細かい部分は分らず、体技のスキルは習得しているものの、今まで持った才能だけで上げてきた。
故に体術に関しては細かい指導が出来ないが……それでもアラッドの一手一手の反撃に美しさすら感じた。
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