百四十九話 礼としては豪華すぎる

(この世界に転生して、色んな街や建造物に対して大きいという感想を持ったけど、今日オークションが開催されるこの会場も大きいな)


到着した会場は外装だけではなく、内装も豪華な仕上がりとなっている。

アラッド個人としては何故ここまで金をかけるのか意味不明だが、貴族の一員という立場からすれば、何故建物の豪華さや煌びやかな装飾に拘るのか分かる。


(リバーシやチェスの件でパーシブル家の懐も暖かくなってるから、こういった場所にも金を使えるんだろうな……にしても、やっぱりこういった空気には慣れないな)


受付を済ませ、顔を隠し、外見を変えた状態でメインの場所へと入場。

すると、中には既に多数の貴族や商人達が椅子に座り、談笑していた。


(……はぁ~~~~。俺みたいな子供はそうそう、こういった場所にいないよな)


ただでさえ、権力者が多く集まる場所は好きじゃない。

それに加えて、自分と同じ年頃の子供は殆どいない。


(子供は基本的に参加出来ないだろうし、まだ何が面白いのか分からないだろうから……普通は来ないよな)


適当な席に座り、一つ大きなあくびを出した。


「ふふ、もう少ししたら始まるから、それまでの辛抱だよ」


「……始まるまで、目を閉じていても良いですか」


「あぁ、構わないよ。でも、熟睡するのはお勧めしないかな」


「大丈夫です。目を閉じるだけなので」


毎日十分に睡眠を取っているので、寝不足でうっかり寝てしまうことはない。

加えて、まだ権力者たちがガヤガヤと喋っているのであまり寝れる状況でもない。


(パッと見た感じ、当たり前だけど金持ってそうな人がたくさんいたよな~~)


その感想は間違っていない。

今回のオークションには大金を持ち、自分が欲しいと望んだ商品は絶対に手に入る!!! といった自信を持つ者が多数参加している。


だが、そんな権力者たちと比べてもアラッドが今回のオークションの為に引き出した金貨の数は尋常ではない。

一度に引き出すと商人ギルドが困ってしまうので、リグラット経由で何回かに分けて大量の金貨をフールから借りているアイテムバッグの中に入れている。


(鉱石を扱う者として、今は性能を存分に発揮できないだろうが、オリハルコンが出品されるなら是非とも競り落としたいな)


神の金属とも言われる最上級の鉱石、オリハルコン。

自然の鉱石から採掘されることは殆どなく、現在フールが治める領地でオーアルドラゴンが居座っている鉱山であっても、発見出来る可能性は限りなくゼロに近い。


ダンジョンの宝箱から手に入り、オークションに出品されることもあるが……今のアラッドの所持金であれば、競り落とすことは決して不可能ではない。


ただ、競り落とした場合……オリハルコン以降に登場する商品を十分に競り落とせなくなる。

そして…………まだ外見的に十を超えていない子供がオリハルコンを競り落としたとなれば、嫌でも注目を集めてしまう。


(まぁ、オリハルコンが出品されることは殆どないか。可能性としてはミスリルやヒヒイロカネ……その辺りの鉱石が手に入るのであれば、頑張って競り落とすか)


ミスリルもヒヒイロカネも十分希少な鉱石なのだが、オリハルコンと比べればランクは下がってしまう。


(後は宝石類、は……今は要らないかな)


アラッドは将来的に錬金術でマジックアイテムを造る際に、宝石も使用してみたいと思っている。

だが、宝石に関してはアラッドが自らチェスやリバーシを作ったプレミアム品を売ってもらった礼という形で、しっかりと代金を払いながらも宝石などを渡す者がいる。


なので、アラッドの部屋にはまだまだ未使用の宝石がたくさん眠っている。


「アラッド、そろそろオークションが始まるよ」


「……そう、みたいですね」


アラッドが目を開けると、既に席は全て埋まっていた。

後方に目を向けると、立って参加する者までいた。


(あの人たちの雰囲気……もしかして冒険者か? 一応稼げる職業ではあるし、オークションに参加しててもおかしくはないか)


意識を舞台に向けると、司会者が早速オークション開催の挨拶を始めた。

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