五十五話 剣技連発

フレイムバッシュを放った瞬間、アラッドはそのまま一回転して剣技、アッドスラッシュを放った。


アッドスラッシュは本人に剣技スキルのスキルレベルによって放つ斬撃の数を増やすことができる技。

現在アラッドの剣技スキルはレベル三。計五つまでの斬撃を一斉に……もしくは連続で放てる。


勿論火の魔力を纏っての斬撃なので、フレイムアッドスラッシュというべきだろう。


五つのフレイムスラッシュが連続で放たれ、徐々にメタルブレスを斬り裂き……ついにはメタルリザードの顔面に到達。


「グガッ!?」


途中でブレスから切り替えて回避することはかなわず、火の斬撃は頭に届くことはなかったが口がぱっくり斬られてしまった。


「隙あり!!!」


決定的なチャンスに飛び込み、鋼鉄の剛剣を左手に持ち替えて右の掌で顎を思いっきりかち上げた。


「クロッ!!!」


「ワゥッ!!!!!」


アラッドの作戦を瞬時に察したクロは右前足に魔力を纏い、更に硬質化のイメージを加える。

そして遂に弱点である腹を大きく引き裂いた。


(今だ!!)


この瞬間を狙っていたと言わんばかりの速さで懐に近づき、アラッドは一瞬……チラッとだけ見えたメタルリザードの魔石目掛けて貫手を放ち、肉を抉って掴んだ。


「ふんっ!!!」


見事魔石の引き抜きに成功し、圧し潰されるまでにその場から離れる。


上半身が浮いた巨体が沈み、大きな音を立てて動かなくなった。


「ふぅーーーーー。魔石を取ったんだし、俺たちの勝ちだよな」


「ワゥっ!!」


「「「……うぉ~~~~~~~~!!!!」」」


「うおっ!? ど、どうした」


アラッドとクロ対メタルリザードの戦いが終了し、その内容に感動した護衛たちが駆け足で二人の元にやって来た。


「す、凄いですアラッド様! ほんっ~~~~とうに凄かったです!!!」


「お、俺も同意見です。刃に火を纏ってからバッシュを放ち、そこから一回転してからのアッドスラッシュ……一瞬でもアラッド様とクロの心配をした自分たちがバカでした」


「クロもお疲れ様、カッコ良かったですよ!」


フレイムバッシュでメタルブレスを押し切れなかった瞬間、三人は背中から冷や汗が止まらなかった。

メタルブレスはただの魔力を消費したブレスに加えて鋭い鉄の破片が容赦なくとんでくる。


まともに喰らえば体のいたるところが斬り裂け、最悪の場合……眼に入れば失明する可能性があった。

しかしそれを剣技の連続技で見事対応。


そして一瞬で懐に潜り込み、掌底をぶち込んで弱点を晒してからクロが致命傷を与え、アラッドが第二の心臓である魔石を素手で抜き取った。


「へへ、有難う。三人が褒めてくれるのは嬉しいけど……とりあえずこいつを解体しよう」


アラッドが今まで戦ってきたモンスターの中で一・二を争う程の大きさ。

解体を終わらせるにはそれなりに時間が掛かる。


一人とクロが周囲を見張、三人が解体を行う中で兵士の一人がある疑問を口にした。


「それにしても、こんなところにメタルリザードがいるのは完全に予想外でしたね」


「やっぱり森の中には基本的にいない個体だよな」


「そうですね。通常のリザードやフォレストリザードならいてもおかしくありませんが、メタルリザードは荒野や岩石地帯……もしくは鉱山に生息するモンスターです。特別な理由がない限り、森の中には現れませんよ」


兵士の言う通り、メタルリザードは特別な事情がなければ森の中には現れない。

現在地点の近くに荒野も岩石地帯もない……ただ、かなり離れた場所に山はある。


「……そういえばさ、向こうの山って元々鉱山だったんだよな」


「そうですね。ただ、かなり前に鉱石が取りつくされてしまいましたが……もしやそこから来たということですか?」


「その可能性はあるかなと思って」


メタルリザードはリザードが生息する周辺に鉱石がなければ、属性が変化することはない。


「確かにそう、かもしれませんね……しかし、リザードは周囲に鉱石がなければメタルリザードにはなりません」


「それってさ、つまりあの山にはまだ鉱石がある。もしくは鉱山に影響を与えるようなモンスターが住み着いてるってことじゃないのか?」


アラッドの表情に三人ともまさかの情報に体が固まった。

普通に考えればあまりあり得ない考えだが、メタルリザードが現れたという事実を考えればあり得ないと断言は出来ない。

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