十六話 新しい知識と技術

アラッドがフールから特別許可を得て、モンスターを狩り始めてから一か月ほどが経った。


一日はいつも通り訓練や勉強に時間を使い、二日目は兵士二人とメイジ一人の組み合わせで森の中に入り、モンスターとバチバチ戦っている。


初日以降に新しく遭遇したモンスターはコボルト、グリーンキャタピラー、大ネズミ、ブラウンウルフ。

どのモンスターもランクDを超えておらず、本来であれば冒険者のルーキーたちがパーティーを組んで挑む相手だが、アラッドは全て一人で倒してしまった。


初めてアラッドと一緒に行動する者たちは実力の高さに驚き、中には拍手する者もいた。


二日に一回はモンスターとの戦闘を行えてるので、満足はしている。

だが、一応満足しているだけであって、少々不満に思っているところもある。


それは……遭遇するモンスターとの戦いがあっさり終わってしまうこと。


そもそもエクストラスキルである糸を使用すれば、低ランクモンスターの動きを捕縛、そしてスレッドサークルで首を切ってしまえば戦闘はそこで終了。


それならば接近戦で戦おうとしても、モンスター相手にロングソードを振るのにも慣れ、相変わらず斬る時だけ刃に魔力を纏うのも上手い。

一対一の戦いであれば剣技と体技だけで首をバッサリ斬る、もしくは頭蓋骨と脳を蹴りか拳でボコっと潰してしまう。


複数体が相手となれば、初級攻撃魔法を使いながら攻撃。

そしてスキル技、スレッドチェンジで糸の性質を変化させて粘着質にすれば、足に糸を付けて転ばせてからキルすることもできる。


アラッド的にはブラウンウルフとの戦闘だけは少々恐怖を感じたが、二体目との戦闘ともなればその恐怖も薄れる。

順調にレベルを上げて身体能力や魔力の総量も上がっているので、低ランクのモンスターでは糸を使わずとも少々相手にならなくなってきている。


最近の心情はそんなところだが、アラッドの戦いっぷりを見たパーシブル家の者たちは「もしかして自分たち……必要無いんじゃないのか?」と思っている者は少なくなかった。


エクストラスキルである糸を完全に使いこなしている。

剣技と体技の腕前は五歳児と思えない。

的確なタイミングで攻撃魔法を放ち、発動する速度が速い。


万が一のことを考えると自分たちの力が必要なのは解かる……解るが、いずれ必要なくなる日はそう遠くないなと感じていた。


そんな感じで最近少々モンスター狩りに少々不満を持っているアラッドは錬金術に興味を持ち始めていた。


(冒険者として活動していくなら、自分でポーションやマナポーションを造れた方が得だよな)


なんてことを考えながら家にあった錬金術の本を一人で読み進めていた。

既に文字はマスターしているので、五歳児が読めないであろう本も楽々と読める。


(ゴーレム……そういった物も錬金術で造れるんだな。これはちょっと興味あるな)


最初は怪我を負ったときや、魔力の残量が少なくなったとき用にポーションやマナポーションを自作できたら良いなと考えていただけ。


だが、最近になって錬金術で造れる他の物にも興味が湧いてきた。


ゴーレムやマジックアイテムと呼ばれる効果が付与されたアクセサリー等々……それらを自分で造ってみたいなと思い始めた。


それをメイドや兵士にチラッと話すと、流れで騎士長であるグラストに伝わり、流れ流れて最終的にはフールの元に

話が届く。


「ふむ、錬金術か……確かに一般的な知識は既に頭に入っていて、文字の読み書きは完璧にマスターしている。それに計算の速さに関しては……今更だけど本当に五歳児なのか疑う程に速い。礼儀作法も覚えるのが早い……新しい知識と技術を覚えても大丈夫そうだね」


アラッドの頭なら覚えることが増えても問題無いだろうと判断し、フールは街の錬金術師を数日雇った。

臨時教師である錬金術師はアラッドとフールが色々と話し合った二日後にやって来た。

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