第72話 剣と魔法と銃!
「敵が動いたわよ」
ザフィーアの短い警告に、僕の思考が引き戻される。
どうやら敵もなりふり構う余裕が無くなったらしい、術士や弓兵隊の
「力押しの総力戦ってことか」
僕は無意識のうちに唾を飲み込んでいた。
「ジャスティスにギルティ、魔法の射程内に入ったら、ありったけの魔法撃ち続けて!」
[[了解!]]
チャット内で双子の返事が見事にハモった。
「ザフィーアは可能なら敵の指揮官らしい人を探して攻撃してほしい」
「わかったわ、やってみる」
そう言うとスコープ越しに敵軍の様子を窺いつつ、冷静に引き金を引く。
──フシュウウン!
青白い光線が一直線に敵陣へと突き刺さった。
ザフィーアの銃は魔法や弓より、あきらかに射程が長い。その利点を活かして、まずは狙いを定めるより、相手の反応を見る目的で撃ち込んでいくとスコープから目を離さずに説明してくれた。
「今っ!」
僕が声を上げると同時に、双子の魔法が発動する。
だが、同時に、騎兵隊の後方から複数の
「弓兵隊か!」
声を上げる僕の視界の先で、宙を奔る魔法の光に大量の矢が群れとなって襲いかかる。
──シュバァァッ!!
空中に大きな火の花が咲く。
[そうきましたか!]
[なんのっ! 負けないっ!!]
双子は炎系だけではなく、氷系、雷系などさまざまな魔法を連続して繰り出していく。
だが、敵の弓兵隊も引けを取らず、その
「しまった! このままだと、また門に取り付かれる!」
僕が焦りの声を上げると同時に、激しい音が響き渡った。
突撃の陣を組んだ騎兵たちが、門へと攻撃を加えてきたのだ。
それは僕の位置からもハッキリ見えていた。
──ドゥウウウン!!
重い音と共に門の耐久力が削られるが、その反動で騎兵たちの陣が崩れる。
そこを狙ってアオたち前衛組が飛び出そうとするが──
「アオ、ダメ! 止まって!!」
僕の必死の制止にその足を止める。
瞬間。
──ズゴォォンンッ!!
激しい炎の
「
騎兵隊の後方に、鎧とは違う、中国風のローブみたいな服を纏った一団がいた。騎兵隊の突撃にあわせて、魔法の詠唱をはじめると、各人の足下から、他の術士の足下へと光が奔り、地面に青く光る陣が描き出される。そして、放たれる強力な炎。
[今回はちょっとシャレにならないよ]
門の耐久力がみるみるうちに削られていくと、ぴーのが報告してくる。
せめて、術の発動を遅らせられないかとザフィーアが術士を狙って狙撃を試みるが、敵も魔法防御陣みたいなフィールドを展開しているのか、思うように効果を出せない。
[あ、次の攻撃で門が壊れる]
この状況でも変わることのないぴーのの口調。だが、その報告の内容はシャレにならないモノだった。
──ドゴォーーン、シャリィィーーーン!
激しい爆発の後、澄んだ音を立てて、門のあたりから七色の光が散った。
[門が壊れたよ]
ぴーのが冷静に事実だけを指摘してくる。
[うおりゃぁぁぁっ!]
アオが吠えた。
門を駆け抜けてきた騎兵に斬りかかって、はじき飛ばす。
[やっぱりだ! コイツら、門を抜けるときは陣を組めない]
[そういうことなら……おりゃあっ!]
アオに続いて、ロザリーさんも斧を構えて突撃していく。
さらに盾を構えたクルーガーさんも飛び込んでくる敵へぶつかっていき、その陰から横に飛び出した神藤、じゃなくて、リィンが敵の攻撃を宙返りで
「ヤバイ、
思わず口に出してしまったのか、下でザフィーアが小さく吹き出したようだった。
そんなこんなで、戦況が変化していく。
躍動する前衛を援護するためにギルティが陣を張り、イズミがくーちゃんやサファイアさんを庇いつつ、ギルドハウス建物の入口前まで後退していく。
戦場が、ギルドハウスの前庭内へと移った。
「こうなったら、門を抜けてきた騎兵たちを各個撃破しながら、時間を稼ぐしか……ジャスティスとミライ! 魔法の照準を門の内側に──」
僕はバルコニーから身を乗り出して、階下の双子へと指示を飛ばす。
だが、返ってきたのはミライの悲痛な声だった。
[ダメ! それどころじゃない!]
一瞬の間をおいて、僕も理解した。
今は遠距離戦も攻守逆転していたのだ。
外から弓兵隊の矢攻撃がこちらへ向かって降り注いできているのだ。それを双子が必死に魔法で迎撃している状態だ。
「サファイアさん、二階のバルコニーへ! 双子のフォローを頼みます!」
[わかったわ!]
それと同時に、僕自身も
障壁にぶつかる澄んだ音が響き、敵の矢がここまで飛んできたことを知らせてきた。
こうなると、僕も指示を出すどころか防戦に参加しなければならない。
とりあえず、指揮はぴーのに頼もうと声を上げようとした瞬間。
──ドゴォォッッン!!
門の内側に激しい爆発が起きた。
[敵が味方ごと攻撃魔法を門へ撃ち込んできたみたいだよ]
この状況でも他人事の様な口調で報告してくるぴーのに、さすがに苛立ちに似た感情がわき起こる。
だが、それは八つ当たりでしかない、僕は全力で気持ちを抑え込んだ。
視線だけを門へと向けると、敵の数騎とともにアオとロザリーさんの姿が見えなくなっている。
クルーガさんは健在なようだ、リィンを庇いつつ後退している。
この攻城戦ではやられても捕虜になるだけだ、まだ大丈夫と、わき上がる焦りを必死に抑える。
だが、冷静に考えれば考えるほど、この状態は詰みに近い。いや、ほぼ詰んでいる。
次、敵の残り騎兵で突入されたら、クルーガーさんとリィンだけでは戦線を維持できない。
「くそっ、どうすれば……」
僕が
ザフィーアが冷静な声を上げた。
「ちょっと待って、外の様子がおかしいわ」
「外?」
「ええ、門の向こう、丘の上……あれは新手──!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます