第40話 アオの想い、僕の気持ち
「こんの、いい加減にしろよな!」
「アオ、そこまでにしておきな」
「コイツ、一回キチンと言って聞かせないとダメだ!」
ギルドハウスに戻るなり、アオは僕の
「なにか? オマエ、なんか特別なキャラにでもなったつもりなのかよ」
「な!? なんだよ、それ」
予想だにしなかった言葉に瞬間的に頭に血が上ったのか、僕は思わずアオの手を力一杯振り払ってしまっていた。
「英雄だか主人公だかになったつもりかって言ってるんだよ、誰も彼も皆助けられるとか勘違いしてるんじゃないのか? 特別な力でも持ってるとか妄想してんじゃねーよ!」
「妄想だって!?」
そう言われた瞬間、僕の脳裏に
そのことを振り払うように、僕は大きく頭を振りながら目の前のアオの胸を突いた。
「さっきの状況は全部僕のミスだった、それは認める。でも、それはリーダーとしての……」
「だから、ふざけんなって言ってんだろ!!」
瞬間、視界が大きく揺れて自分がアオに殴られたことに気づいた。
非戦闘区域のギルドハウスの中、しかも、友好キャラクターからのアクションなのでダメージは一切無い。でも、殴られたということが衝撃だった。
「ちっくしょ、ちょっと頭冷やせっつーの!」
そう言い捨てたあと、アオの顔から表情が消え、その場に立ちすくんだ状態になる。
「……バカ兄、もしかして、ログアウトしちゃった?」
ジャスティスがアオの顔の前でヒラヒラと手を振って確認する。
それを見たミライが小さくため息をつき、座り込んだままの僕に小さく頭を下げる。
「ゴメンナサイ、頭を冷やさないといけないのは、こちらのバカ兄の方ですよね。私もログアウトしてリアルで水でもぶっかけておきます」
「あ、それ面白そう、あたしもやる!」
ジャスティスがハイハイっと手を挙げてから、ミライと共用の自室へと向かう。二人ともそこでログアウトするのだろう。
部屋に入るときにミライがちょこんと人差し指を立てて言い残す。
「そこに放置していったバカ兄、せっかくなので皆さんで顔に落書きでもしてやってください」
「そう言われてもね……」
毒気を抜かれた格好で、ロザリーさんが苦笑する。
「大丈夫ですか? ビックリしたでしょう」
鎧を脱いだクルーガーさんが僕の手を取って引き起こしてくれた。
サファイアさんがため息をついた。
「まあ、今回はさすがに危なかったですからね。アオさんも気が
「あ、はい……」
とりあえず、びっくりしただけです、と笑ってみせたが、内心ではやり場の無い怒りがわき始めていた。
確かに今回の件、僕の判断ミスで取り返しのつかない状況に陥りかけたのは事実だけど、アオにあんな責められ方をされるのは理不尽だと思う。他の仲間たちの対応からしても、次から気をつければ大丈夫といった雰囲気だし。
「……次」
無意識のうちに僕は小さく呟いていた。
次、そうだ、今日のこれで終わりというわけではない。明日以降も探索を続けていかないといけないんだ。
僕は自分の両手に視線を落とす。ミスは絶対に許されない、今日みたいなことを繰り返すわけにはいけない。
顔を上げると仲間たちの姿が目に入る。
武装を解除したサファイアさんとクルーガーさん、イズミが明日の予定について話している。
その横で、耳に手を当てて一人何かを話しているロザリーさん、通信中のアイコンが出ているので誰か知り合いから遠隔チャットが入ったのだろうか。少し離れた場所でくーちゃんから説明を受けているような格好のザフィーアとぴーの。
ギルティは棒立ちになったアオの横で何かを考え込んでいるようだ。
皆を守らないと、ギルドリーダーとして、かけがえのない仲間として。もう、二度と彼女を喪った時のような思いをしたくない。
アオとはあとでもう一回話をしよう。
「いつもこんなカンジだな」
僕は小さくため息をついた。
子供の頃からの長い付き合いだ、ケンカをしたことは一度や二度では無い。しかも、たいてい青葉の方が感情を爆発させてしまうのが
「リーフがいればな……」
一度深呼吸をしてから、操作メニューから装備ウィンドウを開き、ボロボロになった装備を外して状態を確認する。直して使えるようなら修理スキルを使って整備する必要があるし、ダメそうなら予備の装備を引っ張り出してこないといけない。学園の授業もあり、ログインのタイミングが遅くなることが多いので、明日の準備もできれば今日のうちに済ませておきたい。個人チャットを続けているサファイアさん以外の人たちがそれぞれの部屋に戻ってログアウトしていくのを見送りつつ、装備の修繕を続けながら意識を切り替えていった。
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