第30話 作戦会議
T.S.O.内、ギルドハウスの一階大広間。
集まったのは、総勢十二人。
僕、アリオット、職業、神官。
くーちゃん、神官。
サファイアさん、神官。
ロザリーさん、戦士。
クルーガーさん、
イズミ、
アオ、剣士。
ミライ、精霊術士。
ジャスティス、魔術士。
ギルティ、
ザフィーア、狩人。
ぴーの、盗賊。
全員が広間の大テーブルを囲むように立っている。
ギルド【ワンダラーズ・オブ・ゼファー】の全員が一同に会していた。
一パーティの上限は十二人だが、T.S.O.をはじめて間もないザフィーアと、ぴーの、二人を除いた十人で挑むことになる。
今回、複数のパーティで連合してダンジョンに挑むので、T.S.O.の仕様上、パーティがフルメンバーである必要はない。むしろ、一パーティしか参加できないという仕様制限がある一部のボス戦闘が例外で、通常は
もともと、新加入組の二人については危険でもあるし、安全なギルドハウス内でキャラクターを保護するだけのつもりだったのだ。しかし、僕が週末不在にしていた間、追いつかない範囲ではあるが、他のギルドが主催していたレベル上げイベントに参加し、二人なりに現状に甘んじることはしないという姿勢をみせていたのだ。
「できる範囲で最善は尽くそうと思って」
はじめて会話したアオに「ムチャするなー」と言われて、思わず視線をそらすザフィーア。
僕の隣でアオに握手を求められて、戸惑いながらぎこちなく応えていた。
ここ一連の事件に関して、積極的に動こうとしていたのは僕たちだけではない。
情報収集、武器や防具、アイテムなどの製作、後発プレイヤーの育成支援。
ザフィーアとぴーのが参加した週末のプレイヤーイベントも、そういった活動の一環で、各プレイヤーから善意で寄せられた経験値ブーストアイテムを使いつつ、比較的安全なエリアでモンスターと戦い、成長させていくという主旨の内容だった。ベテランキャラクターがフォローするものの、やはり安全第一が優先されるため効率は決して良くない。それでも、イベントが終わった段階で二人とも駆け出しの初心者から中級冒険者と呼べる程度まで、一気に成長していた。
「とはいっても闇王の墓所には到底参加できるレベルじゃないからね、足を引っ張るだけだし」
そう言うと、ぴーのは大テーブルから一歩退き、ザフィーアも悔しそうな表情で彼に続く。
「引きこもっていてとは言わないけど、絶対に無理はしないでね」
僕が声をかけると、二人はそれぞれの表情で了解と返してきた。それに応えてから、あらためて大テーブルへと向き直る。
中央に大きな光の球が浮かび上がり、現在判明しているダンジョンのマップが表示される。
とは言っても、第一階層部分が少し判明しているだけで、それ以下の層は少し大きめの部屋が階層ごとに一つずつ表示されているだけのものだ。
「今のところ判明している最下層は十三層です」
サファイアさんが事務的な口調で説明をはじめる。
「運営側からの情報提供は?」
ロザリーさんが短く問いかけるが、サファイアさんは頭を振った。
「カメラの行動も制限されていて階層の移動はできるものの、動ける範囲はいわゆるセーフティゾーンだけということです。なので、実際にたどり着いて確認してみないことには」
「まあ、どっちにしろ、ボスキャラを倒すって目的は変わらないってことだな」
アオが鼻の頭を掻きながら、いつもと変わらない脳天気な声を上げる。
結局、アオと双子の妹も今回の攻略に参加することになっていた。
詳しくは聞いていないが、緑おばさんを説得するために、相当な激論が交わされたらしい。それでも、僕と翔の兄弟が参加するということと、なにより、今まで見たことがない双子の真剣な態度に折れてくれたとのことだ。
「……大丈夫、ぼくがフォローする」
アオたちのことを伝えてもらった時、ギルティもまた、いつにないしっかりとした口調で僕に決意を語った。
ミライとジャスティス、ギルティ、そこに護衛役としてイズミとくーちゃんを加えた年少組が後方支援役となり、前衛をアオ、ロザリー、クルーガーが務め、中軸を僕とサファイアさんが担うという役割分担がすでに決まっている。
僕は精霊剣士と神官、狩人のレベルを最高まで上げているが、今回は神官で参加することに決めていた。
パーティメンバーの人数に比して、回復役である神官の数が多い編成になっているが、一人も死なせるわけにいかないため、安全策を採るということでメンバー内でも意見が一致している。
一概に神官といっても僕が味方の能力を高める
話を戻す。
「とりあえずは第一層だね、このパーティでの戦いに慣れること、何が起こるかわからないから、攻略速度よりも安全重視で」
僕の言葉にギルドメンバー全員が頷く。
正直、気持ちが昂ぶってくるのを抑えられない。事件への想いとは別に、未知の領域へのチャレンジに興奮してしまうのはゲーマーとしての
サファイアさんが手を挙げる。
「他のギルドなんですけど【
「ああ、三月ウサギには知り合いがいるから、ちょこっと話は聞いたよ」
ロザリーさんがサファイアさんの言葉に乗っかる形で提案してきた。
「ウサギの旦那から協力して当たらないか、って話があったよ」
「それもアリだと思います」
サファイアさんが少し難しそうな表情を浮かべながらも頷き返す。
「梁山泊の方からも似たような話がありましたよ」
僕は少し考え込む。
この三つのギルドは、ダンジョンや強敵に挑む攻略系における三巨頭で、構成員の数も活動規模の大きさも、うちのギルドとは比較にならない大きな存在である。
また、過去には三月ウサギと梁山泊、この二ギルドとは協力というか、仲間に加えてもらうというカンジで、何回か高難度クエストなどで一緒に行動したこともあり、関係も悪くはない。さらには、安全策といった面では心強いことも確かだ。
しかし。
「……うん、それもイイと思う。けど、最初は……しばらくは僕たちだけでやってみない?」
僕は言葉を選びつつ、でも視線を落とさずにみんなの顔を見ながら口を開く。
「他のギルドとの連携は必要だけど、共闘するのは時期尚早だと思う。うちの規模だとどうしても主導権を取られちゃうことになるし、だったら、身軽に動けるようにしとくべきかなと」
「それは、プレイヤーとしてのプライドってヤツも入ってるのかな」
ロザリーさんが皮肉めいた笑みを浮かべる。
「否定はしません」
僕はチラリとサファイアさんに視線を向けた。
「でも、僕たちには他のギルドとは少し違う立場にあります。なので、自分たちの手綱は自分たちで握りつつ、中立、というと大げさですけど、視野を広く持った状態である必要があるかなと」
「てかさ、あまり難しく考える必要はないんじゃね?」
珍しくアオが口を挟んできた。
「目的はダンジョンの攻略だし、まずは自分たちのペースでできるところまでやってみる。で、障害にぶち当たったら、また解決方法を皆で考えてみればイイ、どうなるか全くわからないんだから、先のことをあーだこーだ言っててもしょうがないぜ」
「その通りだね」
肩をすくめながらロザリーさんが苦笑いする。
「アオは脳筋キャラ一直線だと思ってた。わかりづらいけど少しずつは成長してたんだね、お姉さんは嬉しいよ」
「俺と同い年の子供がいるクセにオネーサンとか……ぶごぉっ!?」
鋭いフックがアオの頬に炸裂した。
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