第68話
「ほら、ヒガドンさんとか、シャルムさんとか、疲れて家に帰ってきてから、おかえりって言ってもらえるのがいいって。おかえりなんて他人が言う言葉じゃないよね。いきなり他人行儀な口調になっちゃったらさ、魅力が失われちゃうでしょっ」
そうなのかな?
「せっかく、こんなお嫁さんがいてくれたらなぁって思ってもらおうと思ってるのにっ」
「嫁?」
「あ、いや、何でもないっ!」
……優斗が焦った様子を見せる。いや、そんなに焦らなくても。
オタクが、推しキャラクターをうちの嫁だとかいうのは、私でも知ってますよ。そうか。嫁って呼んで推してくれるファンを獲得しようと頑張っているっていうことよね?
「んじゃぁ、やり直すけど……って、改めて優斗に言うようにって言われても、ですます口調じゃなくって……。私、いつもどういう話かたしてた?ああ、なんか難しい」
改めて優斗に言うようにって言われても……。
優斗が呆れた顔をしている。
「まぁ母さんはいつも通りの母さんのままでいいから。無理してキャラクター演じなくて……」
小さなため息を残し、優斗がキッチンを後にする。
う、ううう。そんなこと言っても。
冷凍庫にジップロックしてコロッケを入れる。潰れちゃわないかな、凍るまでに……と、ちょっと心配になったけれど、俵型ではなく小判型なのでつぶれたとしてもちょっとひらぺったくなるくらいで大丈夫かな?海苔巻きだけは俵型だけれど。
冷凍庫に収めたあとは夕飯づくり。
と言っても、コロッケ作るついでに作ったポテトサラダは完成済み。玉ねぎのみじん切りを入れるとアクセントがきいて少量でも食べ応えアップ。玉ねぎを切ったついでに、オムライス。チキンライスにも玉ねぎとミックスベジタブル入れると野菜が採れる。あとは玉ねぎとじゃがいもを取り出したついでの、クリームシチュー。
……ん。さすがに同じ材料使いすぎたかな。クリームシチューにはチキンライスでも使った鳥肉を大きめに切って入れてある。まぁいいか。時間もないし。8時から生放送が待ってるんだよね。
「優斗、夕飯」
ノックをして優斗の部屋へはいると、出来上がった冷凍前のコロッケの写真を前に、水色の髪のキャラクター……確か春とか言ったっけ?春がしゃべっていた。
……というか、私の声が再生されている。
「右から……ブロッコリーコロッケ、コロッケね」
ん?コロッケですって言って駄目だしされたやつ……。まさか他のセリフとトリミングしたの?うわー、そんなこともできるんだ。優斗すごい……。
「ん、ああ、夕飯」
優斗が時計に視線を向けた。
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