第67話

 お弁当も、一人分になったら作り続けるだろうか?山崎さんのように適当にコンビニで買ってすますようになるかもしれない。

 いや、逆にそのころは山崎さんがお弁当を……後藤君の分と二人分作るようになっていたりして?

 いや、産休を取っているかもしれない。……赤ちゃん、かわいいだろうなぁ。いいなぁ。

 ふと、横を通り過ぎる赤ちゃんを抱っこした親子が視界に入る。

 ぷにぷにの小さな手。生後10か月くらいだろうか。

「かわいい……」

 ふと漏らしたつぶやきに優斗が車に荷物を積み込みながら反応した。

「うん。僕、絶対溺愛する自信がある。いっぱい面倒見てあげるんだ」

 おや?うちの子、イクメンになりそうですよ。いろいろ自然にお手伝いしてくれるし、気遣いできるし。オタクだけど、優良物件ですよ!…って、気が早いね。孫の顔が見たいなんて言う歳じゃないよ、流石にまだ……。

「だから、安心して」

 にこにこと優斗が笑っている。

 安心?それは私に孫の顔は見せてあげるから安心してねって話?いや、だから、私をそんなに早くおばあちゃんにしないで欲しいですよ。


 家に戻ると、買ってきたものの処理。冷蔵庫に入れるもの、それから今から加工するもの、夕飯で使うもの。今日はコロッケ祭り開催なので、昼ご飯はスーパーでお好み焼きと焼きそばを買ってきたので準備は不要。

 たくさんのコロッケと唐揚げの下ごしらえをして、気が付けば夕方。

「うわー、たくさんできたね!」

 優斗が完成したコロッケにスマホを向けて撮影している。時々来ては写真を撮っていたけれど……。やっぱり、Vtuberの動画に使うんだよね?

「1種類4個ずつだから、麦チョコ、昆布豆」

「ああ、ちょっと待って!」

 優斗が録音の準備を始める。うん、いつものことだ、いつもの。だいぶ慣れてきた。写真の説明音声だよね。

「右から、麦チョココロッケ、豆昆布コロッケ、マグロの角煮コロッケ、駄菓子のかば焼きコロッケ、海苔巻きコロッケジャガイモには海苔の佃煮が混ぜてあります。次は駄菓子のラーメンコロッケ、キムチコロッケ、ブロッコリーコロッケ、最後がコロッケです」

 普通のコロッケだけ数が多いから、全部で40個!すっかりジャガイモもなくなってしまった。あんなにたくさん買ったのに!

「駄目!駄目だよ、母さん、やり直して!」

「え?何?なんで?」

「混ぜてありますとか、コロッケですとか、他人行儀過ぎる。いつも僕に話してるのとおんなじでいいんだよっ!家族と普通に会話してる感じがいいってコメント貰ってるんだから!」

 そうなの?

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