第4話 異世界生活2
異世界に到着し、何となくだが、こちらの世界の魔力やシステムを、アルテナから教えて貰った説明等を元に試してみた後、まず俺はこの世界の人や街を探し山道を進む──だが、山を進むと言っても、登山みたいに普通に歩いて進んでたら、日も暮れてしまう。
俺は〝元いた世界〟でも、車より走った方が速かった位には足は早い方だ。それにこちらの世界では〝魔力〟もあるし、身体能力も向こうより向上している。
なので、俺は木から木へと飛び移り、崖を降り、大河を渡りながら異世界の山の中を移動して行く。
(つーか、本当に異世界なんだな……進めば進むほど見た事の無い植物や岩とか様々な物が色々ある。それに景色も凄く良い。もしこの場所が〝元の世界〟にあれば〝世界遺産〟とかを狙えるぐらいには絶景だ──)
その途中、異世界っぽい生き物? というか……どうみても魔物みたいなのを何度か見たが今は後回しだ。
(金はあるのだが、食料も水も無いし、まずは人のいる街を目指す事を優先しよう……)
そう言えば〝異世界〟に来て、他に驚く事が多くて普通に流していたが、普通に〝太陽〟もあるんだな?
〝異世界〟の空に浮かぶ
まあ〝太陽〟と呼び方は違うかもしれないが……
少なくとも役割にそんなに代わりは無いだろうな。
(月もあるのだろうか?)
そんな事と考えていると……
「お……?」
俺の前に羽のある小さなドラゴンみたいなの5匹が立ち塞がる──〝元いた世界〟でも見た事ないし魔物で間違いないだろう……てか、口から火とか出てるし。
あれ、熱くないのか?
そう言えばスキルに〝見聞〟とかいうのがあったのを思い出す──少し意識を集中し〝スキル〟を使うようなイメージで見よう見まねでやってみる。
すると……
【魔物】 ──ワイバーン──
シンプルに〝ステータス画面〟みたいなのが出る。
うん、まあ、見た感じ何となく分かってたが。
(──まあいい。異世界の初戦闘だ!)
進む方向にいるし、俺は少し戦ってみる事にする。アルテナの言っていた〝ドロップアイテム〟ってのも気になるしな?
それに、どうやら向こうもやる気のようで……
「──ギュガァァ!!」
と、向かってくるので──
俺はアルテナに貰った剣に、ボワッっと〝魔力〟を纏わせて力を込めるイメージで〝魔力〟を使い、向かってくるワイバーンに応戦する。
(それにしても……遅いな……)
異世界の初戦闘として、少し引き締めて身構えていたのだが……体感的にかなり遅いと感じてしまう。
突進しながら噛みつこうと向かってきたワイバーンを、俺はそのまま剣で頭からザクリと叩き斬る。
そして斬られたワイバーンは真っ二つになる。
だが、次の瞬間……
バリバリッ! バーン!!
「は……?」
ワイバーンの全身をラグなような物が走り、ワイバーンが、まるでゲームのモンスターみたいに消える。
なんだ、これは? 消えた?
──いや、死んだのか……?
そして消えた後をよく見てると、消えたワイバーンがいた筈の所に黒い翼(?)みたいなのが落ちている。
(あれが〝ドロップアイテム〟か? ホントにゲームみたいな世界だな……分かりやすくていいけどさ?)
続いて、残りのワイバーン達が攻撃をしかけて来る。
まず噛みつくような動作で最初のやつと同じく、突っ込んでくる2匹を──
シュッと、最低限の動作で斬り捨てる。
(──お、次はお待ちかねの
残りの2匹は最初いた場所から動かず、口から〝火の球〟ようなものを撃ってこようとする。
次に俺は〝魔力銃〟を取り出し、これも見よう見まねで〝魔力〟を込めて各1発ずつワイバーンに〝魔力弾〟を打ち込む。
──ビュンッ!!
放たれた〝魔力弾〟はワイバーン達の眉間に命中し……さっきのワイバーンと同様に──バリバリッ、バーン! と音を立てて全身にラグが走り消えていく。
(これで全部倒せたか?)
ワイバーンは全てラグが走り消えたが、俺は念の為、警戒を解かずに消えた後のワイバーンと周囲を確認する。
それにしてもこの〝魔力銃〟使いやすいな?
弾の速度も早く、銃自体もたいして重くない。威力や速さも魔力で調整できるので、応用も聞くだろう。
そして何より弾の入れ換えが必要無い──
いわゆる〝リロード〟の手間が省けるし、
〝魔力〟が続く限り撃ち続けられる。
それに今のぐらいの戦闘では、特に魔力的な疲労も感じない。
使い方によっては、これは本当にかなり優秀な武器になるぞ。
──次に俺は〝ドロップアイテム〟を見てみる。
・ワイバーンの牙×1
・ワイバーンの翼×2
・魔力結晶(+1)×1
5匹倒したはずだがドロップ品は4つだった。
倒せば確実にドロップする訳でもないのだろう。
それと、気になるのが……これだ……
・魔力結晶(+1)
黒色の
これも何か使い道があるのだろうが……?
街についたらギルドもあるらしいしな。
これもそこで色々聞いてみるか……
ドロップアイテムを、全て〝アイテムストレージ〟に
*
先程のワイバーンを倒してからも、ちょくちょく魔物に出くわすので、俺は〝魔力銃〟の練習がてら、魔物を倒しては〝ドロップアイテム〟を拾いながら進んで行く。
(何となく〝魔力銃〟のコツが掴めてきたな……)
──そのまま山を越え、さらに次の山を進む。
しばらく進んでいくと、岩と岩の間から小さな滝のように湧く、綺麗な湧き水の出てる場所を見つける。
(そーいや、喉乾いたな? 少し休むか……)
と、俺はその場所で、湧き水を飲みながら少し休憩する事にする。
異世界の湧き水──これが飲める水なのかは知らないが、この透明度の湧き水ならまず飲めるだろう。
それに毒や細菌みたいなのは俺は基本的に効かない体質だしな。ちなみに俺は風邪も引いたことも無い。
昔、婆ちゃんには『健康が一番よ』と誉められた。
それに異世界に来て身体能力も上がってるし、スキルに〝状態異常耐性(極)〟とかもあったからな。
まあ、最悪
そう考え、俺は手で水を
──あー、美味いな!
喉が乾いていた事もあるが、やはり湧き水は美味い! 湧き水は一年中、温度が変わらないので氷水のようにキンキンに冷えてるし、軟水特有の喉ごしの良さもある。
(──そう言えば、理沙に何も言わずに〝異世界〟に来ちまったな……)
水を飲みながら一休みすると……
今頃になって黙って異世界に来た事を思い出す。
まあ『ちょっと異世界に行ってくる』とか言って、異世界に行くのも、それはそれな気がするけどさ。
怒ってるかな……?
あー、うん、怒ってるだろうな。
『また、なんかやらかしたの!』
みたいな感じで、怒ってる理沙の顔が目に浮かぶ。
まあ、俺がいなくても向こうでの生活だとか、孤児院の事とかは牧野がいるし、問題無いだろけど。
……それと水を飲んだら急に腹が減ってきた。
(理沙の朝飯を食べてくればよかったな……)
多分いつも通りの和食で、炊きたてのごはんと味噌汁、それと適当に何品か用意してくれてたろうし。
いや、そんな状況じゃなかったけどさ?
まさか異世界初日で和食が恋しくなるとはな。
「にしても腹へ……」
(──ッ……誰だ?)
俺が休んでいた、湧き水の岩影近くの背後の森の中から〝魔力〟の気配を感じる。
これは、魔物じゃないな。人か?
てか、急に現れたな。
人数は1人……いや、2人か?
空気的には敵意と言うよりは、辺りに警戒心を持って近づいてくる様子だ。戦力的には決して弱い感じではないが、今の俺ならまず負けることは無いだろう。
だが、注意は怠らないようにし様子を見る。
それに、どちらかいうと……
急に現れた事の方を警戒した方が良さそうだな。
魔法か何かなのは確かだ──
恐らくは〝空間移動〟とかだろうか?
(てか、異世界の人間は日常的に〝空間移動〟を使うとか無いよな? いや、流石に無いか……)
まあ、近くの〝冒険者〟とかが、俺のように休憩がてら、水を飲みに来たのだとしても不思議では無い。
そう考えると街も近いのか?
そんな事を考えながら、俺は即座に〝アイテムストレージ〟からアルテナに貰った〝黒っぽいフード付きのマント〟に一瞬で着替えて
「腹……減ったな……」
ホント理沙の作ってくれた朝食を食べてから来るんだったな。それにせっかく作ってくれた理沙にも、何だか悪い事をした気もするしな。
すると、ガサッと出てきた人物に声をかけられる。
「──そこの貴方! 〝冒険者〟……あ、いえ、それとも旅の方ですか? それに貴方は此処で一体何をしてるんですか! 私はギルド直属の〝第8騎士隊〟所属──クレハ・アートハイムです。現在ここら一帯は〝魔獣ヒュドラ〟が潜伏してる可能性が高く避難勧告が出てますので、すぐ街へ引き返してください!」
現れた少女の言葉を簡単に纏めると〝ここは危ないから下がれ〟と、親切に教えてくれている。
見た目は黒髪のセミロングで、顔立ちの整った美少女だ。その後ろには水色のロング
こっちの水色の少女は黒髪の少女の後ろに隠れて、何も喋ろうとはしないが──俺だけでは無く、辺りの森や空までもしっかりと観察していて……いつでも〝魔法〟を撃てるような臨戦体制でいる。
(てか……騎士なのか? ギルド直属? それに〝空間移動〟の魔法を使ったのはこの黒髪の子か?)
取り敢えず向こうも敵意は無い様子なので、
俺は当たり障り無いように返事を返す。
「ああ、悪いな。少し道に迷っちまってな? すまないが、近くの街のギルドにはどういけばいい?」
これは嘘じゃない。俺はちゃんと迷子だ。
「街へはそこをまっすぐ行くと街道に出ますので、そこを左に行ってください。徒歩でも日暮れまでには街に着くと思います──ギルドは、街に着けば直ぐに分かると思いますよ? 後、右へは今は危ないので来てはダメですからね!」
徒歩でも夕暮れまでには着くのか──
なら俺が走っていけば1時間もかからないだろう。
「そうか、ありがとう。助かるよ」
適当に走っていたが、街に近づいてはいたんだな。
「はい。では、お気をつけてください」
それと〝魔獣ヒュドラ〟だったか? 今の会話に出てきた、少し気になるワードについて聞いてみる。
「2人はそのヒュドラを探しに行くのか?」
「はい、騎士ですから。魔獣が出たら戦わなくては行けませんので! 場所もある程度は特定できています。今回は街の近くという事もあり、ギルドから私達〝第8騎士隊〟が討伐に派遣されています──この後はシスティア隊長や騎士隊の方、それとギルドから依頼を受けた〝冒険者〟の方達とも合流し、討伐に当たる予定です!」
まあ、騎士隊と言ってたしな?
ある程度の人数で挑むのだろう。
(この世界のヒュドラかどんなもんかは知らないが……〝元いた世界〟の漫画やゲームの感じだと、ヒュドラと言えば、首が沢山ある四足歩行の〝赤い龍〟みたいな感じだったか?)
「そうか、気を付けてな。道案内助かったよ」
そう言い、俺は立ち去ろうとすると──
「あ、ちょっと待ってください! これ、私が作ったお弁当の残りなんですけど良ければ食べませんか? 何かお腹空いたって言ってたの聞こえたので……」
最後は聞いちゃいけなかったかな? みたいな感じの表情で、少し申し訳なさそうに黒髪の少女は包みを渡してくる。
俺はそれを受け取り開けてみると……
──何と、おにぎりが2つ入っていた!
まじか! 和食……というか、米が食べたかった俺は、このおにぎりの登場にテンションが上がる!
「いいのか? 確かにこっちに来てから何も食べてないから空腹なんだが……?」
「はい、気にしないでください」
「ありがとう。じゃあ、ありがたく頂くよ」
俺はお言葉に甘え、おにぎりを貰う。
「どういたしまして。では、もう私達は行きますね」
「ああ、ご馳走さま。ヒュドラだったか? 気を付けてな。陰ながら武運を祈ってるよ──」
「はい、ありがとうございます!」
そして、2人はお辞儀をして戻っていった。
──で、俺はというと……
「いただきます」
早速、先程貰ったおにぎりを食べ始める、
──あぁ……美味い!!
(それにしても〝異世界〟に来て、初の食事が〝おにぎり〟になるとは……夢にも思わなかったな!)
腹が減っていた事もあり、
俺はおにぎりを2つともペロリと平らげる。
「ご馳走さまでした」
手を合わせ、俺はおにぎりを食い終わる。
食事も済んだ俺は、教えて貰った通りに道を進んでくと、言われた通り街道へと出る。
「──ん……!?」
すると、真っ正面の雑木林から博物館とかにあるマンモスみたいなサイズの、大きい猪(?)みたいなのが飛び出してくる。
(何だこいつは? でも、
だが、少なくとも俺の知る猪ではないだろう。
「ブオオォォ!!」
そんな事を考えてると、このデカ猪が突進して来たので、俺はそれをサラリと避けつつ──
猪が方向転換し、再び突進を試みるため振り向いてきた所を──俺は〝魔力銃〟にも少し慣れてきていたので、最低限の動作で〝西部劇〟みたく、デカ猪の眉間を狙い
ドシュ!! と狙い通り眉間に命中し猪は倒れる。
だが、俺は違和感を覚える。
ん……?
完全に死んだと思ったがこいつは消えないな?
まだ生きてるのか?
と、死んだフリに気をつけながら猪を見るが……
……うん。死んでる。
じゃあ、なぜ消えない?
てか、早くも異世界のシステムに慣れてきたな。
──スキル〝見聞〟を使い調べてみると……
【動物】
【状態】 死
とある、うん。死んでるな。
てか、こいつ動物だったのか? 魔物みたいなゴッツイ顔をしてたから、普通に魔物だと思ったぞ…?
もしかして動物は消えないのか……?
そういや魔力の気配も感じないな?
(……ん? ということはコイツ食えるんじゃないか?)
と思い、俺は猪を解体してみる事にする。
そして次に、元いた世界でも使えた〝治癒能力〟と同じ要領で──手に水魔法をイメージし……
魔力を込めて〝こんな感じか?〟と──
見よう見まねで〝魔法〟を試してみる。
すると、ザーッとイメージ通りに〝水魔法〟が発動する。
(向こうの世界では魔法は〝治癒能力〟しか使えなかったが、こっちだと色々使えそうだな? 後は〝魔力〟の込め方とかで威力を調整する感じか?)
そして、俺は威力を更に調整し〝水魔法〟を使い、一気に
次に、肉をブロック状に切り、最後に殺菌ついでに〝治癒魔法〟を使う──俺の〝治癒魔法〟は殺菌や解毒効果もあるので、こういう使い方もできる。
これ〝アイテムストレージ〟に入るよな?
──と、思いながら恐る恐るしまうが……
あ、よかった普通に入ったよ。
取り敢えず、食料確保ってことでいいのか?
残った内蔵や骨は、もつ煮とか、他にも何か料理に使えるかと思い少し悩んだが、流石に足も早そうなので〝魔法〟の練習がてら〝火の魔法〟を使い、跡形も無く消して置く。街道らしいし、それこそ腐って、後でこの辺りに異臭が漂ったりしても悪いしな。
──それと、もう一つ、気になった事がある。この大猪はまるで、何かから逃げるように走ってきたな?
(噂のヒュドラか?)
俺はさっき聞いた話を思いだす。
と、その時──
「──
猪が来た方向から猛々しい雄叫びが聞こえる。
やっぱりこの〝
さっきの黒髪の子には──『
(……少し様子を見に行ってみるか?)
と、俺は少し考え込んだ後、雄叫びのする方角へと走り出すのだった──。
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